昨年1300cc化したBMWのアドベンチャーツアラーR1300GSに上級仕様のR1300GS“アドベンチャー”が登場した。航続距離500kmを実現する30ℓの大容量燃料タンクを装備するのは“アドベンチャー”としてのいつもの要素だが、今回のR1300GSアドベンチャーには、ACCやBSDのための前後レーダー設備や、自動で車高を調整する電子制御サスペンション・アダプティブライドハイトなど、ハイレベルな先進技術を多数搭載。
その中でも一際注目を集めているのが、オプション装備である“オートメイテッド・シフト・アシスタント(AUTOMATED SHIFT ASSISTANT/以下:ASA)”。このASAモデルでは発進から停止までクラッチレバー操作が必要なく、AT限定の大型自動二輪免許でも運転することが可能となっている。
……となると、気になるのは以前このコーナーで紹介したヤマハのMT-09シリーズに搭載された『Y-AMT(ヤマハ-オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)』との類似点や相違点だろう。11月1日には、試乗体験はできなかったもののこのR1300GSアドベンチャーについての発表&技術説明会がBMWジャパンの主催で開かれたので、このASAについて詳しくみていくことにしよう。
ASAもシフトチェンジとクラッチのユニットが独立しているのはY-AMT一緒
2024年は“ギヤ付きエンジンの電子制御シフト”元年だ。従来からのオートマチック技術『DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)』に加え、クラッチ操作を電子制御化して“クラッチレバー操作のみを簡略化する”『E-Clutch』をホンダが発表。続いてヤマハがシフトチェンジとクラッチの両方を電子制御化した『Y-AMT』を搭載したMT-09Y-AMTが登場 。
続いてBMWが、このR1300GSアドベンチャーでASAを発表し、KTMとカワサキもBOSCHが開発したシフトチェンジとクラッチを電子制御化する『AMT』を次期ハイエンドモデルに搭載しそうだ。ちなみにBOSCHはABSの開発を含めBMWとの関係が深いのも周知の事実。ASAにBOSCHが関与しているのかを技術説明担当者に何度もしつこく尋ねてみたが、「ASAの製造メーカーについては発表されていません」の一点張りだった(笑)。
筆者にはヤマハの『Y-AMT』の試乗経験があり、今回のBMWのASAを取材してみて思ったのは、“作り手は違うものの、シフトチェンジとクラッチを別々に電子制御化してオートマチック化するという発想や大まかな仕組みは非常に似通っている”ということだ。
BMWのASAと、ヤマハの『Y-AMT』の大きな違いは、『Y-AMT』がアクチュエーターをエンジンの外付けするような構成であるのに対し、BMWのASAはエンジン内蔵しているというところだ。このため汎用性という意味では外付けできるヤマハの『Y-AMT』の方が色々なエンジンに転用しやすそうだ。
ついでにヤマハの『Y-AMT』との類似点や違いを言えば、シフトスケジュールの決定にブレーキによる加速度の変化を積極的に利用しているところが非常によく似ている。『Y-AMT』は速度やブレーキの掛け方によって“いい感じにシフトダウン”を入れてきたが、BMWのASAもどうやら同じように走行条件によってシフトスケジュールを変えてくるようだ。ちなみに『Y-AMT』は6軸IMUの情報を使っていないのに対し、BMWのASAは6軸IMUを使ってバンク角も考慮したシフトスケジュールを入れてくるとのことだ。
またエンジンブレーキによるバックトルクを逃すためのアシストスリッパークラッチはBMWのASAもヤマハの『Y-AMT』も非搭載。大きなバックトルクでリヤタイヤロックしたり、ホッピングしそうになるような場合には電子制御のMSR(モータースリップレギュレーション)で逃すようにしているところも非常によく似ている。
操作系も非常に似ているBMWのASAとヤマハのY-AMT
細部にはそれぞれの機構特徴が出ているものの、大まかな仕組みは似ているBMWのASAとヤマハの『Y-AMT』。BMWのASAの取扱説明書を見る限り、発進までの手順や操作方法などの“操作の仕組み”も『Y-AMT』ととても似通っているようだ。
操作系で一番の違いとなるのは、BMWのASAにはMT変速のためのシフトレバー(チェンジペダル)があることだろう。ただ、その仕組みは一般的なバイクのようにギヤボックスへ直接機械的なものではなくスイッチ。これはヤマハの『Y-AMT』も一緒で、MT変速のためのスイッチがスイッチボックスにあるか? チェンジペダルにあるか? の違いとなっている。
ギヤのレイアウトも、一般的な「1→N→2→3→4→5→6」ではなく、「N→1→2→3→4→5→6」のボトムニュートラルなのも一緒。こうなると気になるのは各モードでのシフトスケジュールの具合や減速時のシフトダウンの制御具合。この辺りのさじ加減には各メーカーの思想がはっきりと現れてくるに違いない。そのあたりは実際に試乗した際にまたレポートさせていただこう。
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