'23年にデビューしたスズキの最新ネイキッド「GSX-8S」に試乗するチャンスを得た。那須モータースポーツランド(MSL)を周回して、その走りのよさに感心! コイツはまさに万能ミドルと言える出来映えだった。
車体は超スリム&コンパクト、足着きも良好だ
那須MSLで行われたステップアップ試乗会の取材に訪れた筆者。ForRの中の人から「ヌマオさん、新しめのモデルのインプレもしてみませんか?」とのありがたい申し出が! そこでGSX-8S(スズキ)、Vストローム800DE(スズキ)、XSR900(ヤマハ)の3車を試乗させてもらった。
まず乗ったのは'23年3月にデビューしたGSX-8S。エンジン、車体とも完全新設計で「Infinite Potential. Limitless Fun. 無限の可能性、無限の楽しみ」をテーマに開発された注目モデルだ。
目の前のGSX-8Sは775ccのアッパーミドルクラスにしては非常にコンパクト。跨ってみると、車体がスリムで驚いた。
これを実現しているのが完全新設計の270度パラレルツインエンジン。量産バイク初となる2軸1次の「スズキクロスバランサー」で振動を抑え込むことで、心臓部の小型化に貢献している。
中低速トルクが分厚く、スムーズに回る秀逸なエンジン
走行モードは3パターンがあり、まずは最もパワフルなAモードから。
ステップアップ試乗会の昼休みなどを利用して特別に那須MSLのコースを使わせてもらい、自分なりにハイペースで走行してみた。
エンジンの回り方がとにかくスムーズで軽い。中低速トルクは分厚く、4000rpm程度からもう十分にパワフル。低回転域では適度なパルス感で味わいがありながら、5000rpm程度から振動が収まり、1万rpm付近までギャーンと吹け上がる。中高回転域からの回り方は4気筒を思わせるフィーリングさえある。
大胆にスロットルを捻ると過激なダッシュを見せるが、少し開けたなら進みたい分だけ進む。つまりスポーティにもゆったりした走りも可能で、自分の意のままに加速できるのだ。
270度クランクのパラツインは今や一大勢力になっており、Vツイン的なパンチの利いた特性が特徴だが、GSX-8Sのエンジンは一味違うと言えるだろう。
ノンビリもスポーツもイケる絶妙なハンドリング
ハンドリングはネイキッドらしいナチュラルな特性。剛性の高い足まわりと相まって、スッと寝て不安感がない。ブレーキも扱いやすい設定だ。
その一方で、那須MSLの第1コーナーのようにストレートからブレーキングしてFフォークを縮め、速度を殺さずに駆け抜ける中高速コーナーでの旋回力が抜群。スパッと立ち上がることができ、実に気持ちよくコーナーを切り取れる。
そしてストレートでは直進安定性が高い。前後サスはしなやかに動き、衝撃吸収性もよく、乗り心地が良好。高速道路を淡々と走るシチュエーションも得意だろう。
BモードはAほど過激ではないものの十分スポーティで、自分なら標準モードとして使いたい。そしてCモードは唐突さが抑えられ、のんびりツーリングするのに向いている。大型ビギナーにも安心感があり、慣れるまでCモードで走るのもいいだろう。
ストレートでは存分に全開でき、フロントに荷重できる状況では豪快に、そして低中速コーナーでは自由自在に駆け回れる。GSX-8Sはサーキットでも十分楽しめる1台だと実感できた。特にテクニカルで低中速コーナーが多い那須MSLでは楽しかった!
もちろん、街乗りも得意だろう。駐車場でUターンを試したところ、スリムな車体とコントロールしやすい特性のため、楽々。加えて、発進時に自動でエンジン回転数の落ち込みを抑制し、クラッチを繋ぐだけでスルスルっと発進できてしまうローRPMアシストが採用されているため、Uターンや、渋滞時など極低速のノロノロ運転でもイージーだろう。
ライバルのMT-07(ヤマハ)と比べてみると、スポーツ性能ではGSX-8Sに軍配。ライディングモードとトラコン、クイックシフターといったMTにはない装備を持つ面も大きい。ただし、その分、価格は8Sの方が約25万円高い。取り回しや小回りは、車重が18kg軽いMTのよさが光るものの、扱いやすさはいい勝負だ。
[まとめ]現代的に洗練された万能ネイキッドだ
GSX-8Sのエンジンと車体は実にフレキシブル。現代的で洗練されたマシンだなぁと感心する。とにかく乗りやすいのに、スポーティさも兼備。万能スポーツという言葉がまさに似合う。1台で普段使いもスポーツランも楽しみたいライダーにとって幸せな選択肢となるだろう。
2023年型 GSX-8S 主要諸元
・全長×全幅×全高:2115×775×1105mm
・ホイールベース:1465mm
・シート高:810mm
・車重:202kg
・エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 775cc
・内径×行程:84.0×70.0mm
・最高出力:80ps/8500rpm
・最大トルク:7.7kg-m/6800rpm
・燃料タンク容量:14L
・キャスター/トレール:25°00′/104mm
・ブレーキ:F=Wディスク R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17 R=180/55ZR17