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GS250FWで初めて4気筒を発売したスズキはライバルの迎撃で苦しむことに
ZX-25Rの登場で、2020年代に入り再び脚光を浴びている250cc4気筒モデル。その中でネイキッドの人気モデルとして1990年代に勢力を誇っていたのがバンディット250シリーズだ。
バンディットは、GSX-R系の水冷並列4気筒エンジンをトラス風のダイヤモンドフレームに搭載し、250と400で1989年にデビューした。高性能な走りと美しいスタイルが両立しており、登場から30年以上を経た今でも古びた印象を受けないのは、優れたデザインのおかげだろう。
スズキは、いち早く250ccに並列4気筒モデルをラインナップさせたメーカーで、1983年のGS250FWは世界初の水冷DOHC4気筒を採用。しかし、メカニズムはより高性能な4バルブや4連キャブレターではなくバルブは1気筒に対して2本、キャブは2気筒に対して1つという仕様で、最高出力は36PSに留まっていた。
それでも当時としては十分だったが、1985年にヤマハのFZ250フェーザーが4バルブに4連キャブで45PSを叩き出し、翌1986年はホンダがCBR250FOURで対抗するなど怒涛のレプリカ競争に発展。スズキはこれに遅れをとり、1989年のGSX-R250Rでようやくライバルに追い付いたのだった。
ほぼ時を同じくして、レプリカブームの終焉とネイキッドブームの勃興が重なり、GSX-R250Rの最強パワーユニットを搭載したネイキッドモデルとしてバンディット250がデビュー。デザイン性の高い新しいスタイルは、ファッション性を重視する若者に支持されるものだった。
最後まで250cc4気筒エンジンを改良し続け、唯一無二の可変バルブを獲得
バンディット250は1995年にフルモデルチェンジし後期型へ移行。よりスタイリッシュなデザインに改めるとともにエンジンを大幅に改良した。後期で特筆すべきは、バイクで世界初採用となる可変バルブの「VCエンジン(VC=Variable valve Control)」。400では1991年型から採用されていたものが、1995年型からバンディット250Vでも採用されたのだ。
バイクで可変バルブというと、古くはホンダCBR400F(1985年)のREV、今ではCB400SFのハイパーVTEC(1999年)が有名だが、これは2バルブと4バルブを切り替えるだけのメカとなる。対してVCエンジンは、バルブリフトとバルブタイミングを可変できるもの。これを250ccで搭載したのは唯一バンディット250Vだけなのだ。
バンディット250のVCエンジンは吸気側のバルブに低速用と高速用のカムシャフトを備え、エンジン回転数に応じて切り替えるもので、ホンダ4輪のVTECとほぼ同じメカニズム。これをバイクで、しかも排気量の小さい250cc4気筒モデルに搭載できたのは、スズキの優れた技術力の証だろう。
VCの効果はかなり有用で、低中回転域の力強さと高回転パワーの良いとこ取りが可能。超高回転型で低速域のパワーが不足しがちな250cc4気筒モデルにこそ必要なメカニズムと言えるもので、実際、バンディット250Vは試乗すると400ccクラスのフィーリングに近く、ひとクラス上の感覚で走れるものだった。
1997年型バンディット250V主要諸元
・全長×全幅×全高:2050×730×1055mm
・ホイールベース:1415mm
・シート高:745mm
・車重:146kg(乾燥)
・エンジン:水冷4ストローク並列4筒DOHC4バルブ 248cc
・最高出力:40PS/14000rpm
・最大トルク:2.5㎏f・m/10000rpm
・燃料タンク容量:15L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/70R17、R=150/60R17
・価格:53万8000円(税抜当時価格)