2016年にデビューしたXSR900が、2022年に初のフルモデルチェンジを実施した。最新のMT-09をベースとし、車体やエンジンだけでなく、高度なトラクション/スライド/リフト/ブレーキコントロールを制御する6軸IMUも受け継ぐ。ソノートヤマハ時代の車体色が胸熱だ!

●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:柴田直行 ●外部リンク:ヤマハ

ヤマハXSR900 概要

【YAMAHA XSR900】■全長2155 全高1155 シート高810(各mm) 車重193kg ■水冷4スト3気筒DOHC4バルブ 888cc 120ps/10000rpm 9.5kgf・m/7000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70RZR17 R=180/55ZR17 ●色:青 黒 ●価格:121万円

【ライディングポジション】MT-09よりシート高は15mm低く、やや腰を引いたライディングポジションに。ハンドルは前後2段階、ステップは上下2段階に調整可。[身長175cm/体重68kg]

[◯]官能的な直3エンジン、基本に忠実な操安性だ

’22年に初のフルモデルチェンジを実施し、現行MT‐09ベースとなったスポーツヘリテイジのXSR900。先代の845ccから888ccに拡大された水冷並列3気筒、通称CP3エンジンはMT‐09と同一仕様であり、最新の排ガス規制に適合しつつ最高出力は116psから120psに向上。6軸IMUの採用によりリフトとスライドコントロールが追加され、トラコンはバンク角を反映した高性能版へ。さらに上下対応のクイックシフターも標準装備された。

まずはエンジンから。DモードはA〜Cの3段階から1〜4の4段階と細分化され、4以外はレスポンスの強弱が変化する。スロットルを開けていくと7000rpm付近から弾けるようなパワーの盛り上がりを見せる一方で、トップ6速1500rpmからでもスナッチせずに上り坂を進んでしまうほどのフレキシブルさを併せ持つ。クロスプレーン3気筒特有の脈動感や路面の蹴り出し感、そして4気筒とは異なるスポーティなサウンドなど、このエンジンはあらためて官能的だと感じた。

続いてはハンドリング。横剛性を50%高めたという新型のCFアルミダイキャストフレームは、そこまで硬くなったという印象はなく、しなやかな雰囲気は先代の流れを汲んでいる。どの速度域でも車体の傾きに対してナチュラルに向きを変えてくれ、大型ビギナーでも取っ付きやすいだろう。スロットルやブレーキ操作など車体のピッチングを組み合わせることで、さらに高い旋回力を引き出すことが可能だ。スイングアームが先代比で55mm長いため、ベースとなったMT-09ほどクイックに向きを変えるタイプではないが、高速道路での直進安定性も含め、むしろXSR900が大型ネイキッドとしてのベーシックだと思える。

ブレンボの純ラジアルマスターによるフロントブレーキは、高い効力を自在にコントロールでき、特にリリース方向の忠実さに感心する。6軸IMUの導入により、ABSはコーナリング中にも対応する高性能版となっており、電脳化を一気に推し進めた点も新型の特徴と言える。

[△]積載性よりも外観優先。Uターンは気を付けよ

シングルシート風のリア周りからも分かるように、大きな荷物を積むには工夫が必要だ。Uターンについては、ハンドルの切れ角が少ないうえに最小回転半径が先代の3.0mから3.5mに増えており、片側1車線の道路ではだいぶ苦労する。

[こんな人におすすめ]人気のZ900RSをパワーと電脳で一歩以上リード

ヘリテイジクラスで人気なのはカワサキのZ900RSだが、XSR900の方が最高出力が9ps高く、6軸IMUにより電脳性能でもリード。さらにクイックシフターまで装備しながら20万以上安いので、こうした部分にも注目してほしい。

ヤマハXSR900ディテール写真解説

ヤマハXSR900 スタイリング

【現行MT-09をベースに大胆に生まれ変わった】’21年型でフルモデルチェンジしたMT-09をベースに、’22年に刷新された2代目XSR900。最低肉厚を3.5→1.7mmとした新CFアルミダイキャストフレーム/CP3エンジン/足周りなどはMT-09と同一仕様としつつ、先代比で約4kgの軽量化を達成。ナンバー灯を除く灯火類はLEDとなった。

ヤマハXSR900 エンジン

【排気量を拡大、116→120psへ】ストロークを3mm伸長し、排気量を845ccから888ccとした水冷並列3気筒エンジン。新フリクションプレート採用のA&Sクラッチ/レシオを最適化した6段ミッション/上下対応クイックシフターなどを採用する。

ショートボックスマフラーはMT-09と共通。1.5段膨張室や左右シンメトリーのテールパイプなどを採用。

ヤマハXSR900 足まわり

【ヤマハ独自の回転塑性加工ホイール採用】スピンフォージドホイールを新採用し、前後合計約700gの軽量化を達成。標準装着タイヤやBSのS20からS22に。フォークはφ41mm倒立式で、キャリパーはラジアルマウント式。スイングアームはトレーサー9GTと共通で、軸間距離は先代比で55mm長い。リアサスペンションはリンク式。

フロントはフル調整式、リアはプリ7段階と伸び側減衰力が調整可能。

ヤマハXSR900 主要装備

ミラーはバーエンドタイプに。APSG採用によりスロットルワイヤーが不要となった。左スイッチはMT-09SPと共通であり、クルーズコントロールも装備する。

3.5インチのフルカラーTFTメーターはMT-09と共通。純正アクセサリーのグリップヒーターやETCインジケーターの表示機能あり。

メーター下部に車名ロゴのドッグタグプレートを配置。ボルト1本に至るまでレーシングヘリテイジを追求しているのだ。

【1980年代のレーシングヘリテイジを注ぎ込む】ニーグリップ時のフィット感にも配慮した燃料タンク。水平基調のシルエットを実現するために、シートレールはXSR900専用設計となっている。

収納時はシートレールと一体化して見えるデザインの可倒式タンデムステップを採用。

 

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