400cc並みの値段と軽さを引っ提げて’14年にデビューしたヤマハMT-07が、平成32年排出ガス規制適合のためにマイナーチェンジを実施。エンジンは最高出力73psを維持しながら新規制をパスし、スタイリングを一新するとともにブレーキを強化した。3代目の実力をチェック!

●まとめ:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:ヤマハ

’21 ヤマハMT-07 ABS


【’21 YAMAHA MT-07 ABS】■全長2085 全幅780 全高1105 シート高805(各mm) 車重184kg ■水冷4スト並列2気筒DOHC4バルブ 688cc 73ps[54kW]/8750rpm 6.8kgf・m[67Nm]/6500rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量13L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:灰 青 黒 ●価格:81万4000円
【次世代MTシリーズらしい抑揚のある造型に】’14年にデビューし、’18年に2代目へ。そしてこの’21年モデルが3代目となる。新型はエアフローの動きを取り込んだサイドビューで次世代MTシリーズらしさを表現。倒立風に見せるフロントフォークのインナーチューブカバーは、2代目で省略されたが3代目で見事に復活。
【エンジンは新色。ホイールの色はそれぞれ異なる】グレー/ブルー/ブラックという3種類のカラーバリエーションは’18年モデルから変わらず、新型はグレーのみ色味が’20モデルから変更となった。エンジンは新色のクリスタルグラファイトとなり、より引き締まった印象に変化。

[◯] 全体的な印象は不変。ミシュラン ロード5は雨でも安心

排ガス規制適合によって魅力が薄らいだバイクは多い。’07年に導入されたユーロ3のときが顕著で、継続モデルについて各メーカーはFI化でこれに対応するも、まだドライバビリティにまで十分な研究が進んでおらず、キャブ時代の味わいを求める声が多く聞かれたのも事実だ。

そんな負の時代を経験しているからこそ、ユーロ5(≒平成32年排出ガス規制)に適合したMT‐07がどう変わったのか、楽しみよりも心配の方がはるかに大きかった。しかしそれは杞憂に過ぎず、傑作とも言うべきMT‐07らしさは健在だった。

まずはエンジン。270度位相クランクを採用する688ccの水冷並列2気筒“CP2”エンジンは、最高出力73psをそのままに、新ECUと吸排気系の変更程度で新排ガス規制に適合した。低回転域かつスロットル低開度からの扱いやすさと心地良い加速感、4000〜8000rpmにかけてのトルクがグングンと上乗せされていく楽しさ、そしてレッドゾーンの始まる1万rpmまで不快と感じる振動がないなど、全体的な印象は規制適合前と何ら変わらない。勾配が10%を超える峠道の上りにおいて、8000rpmから上での伸び上がりが以前ほど力強くはないかな? などと感じたが、新旧を直接比較していないので断言は避けたい。厳しい排ガス規制をパスしてなおMT‐07らしさをしっかりと残したのは、素晴らしいのひと言だ。

ハンドリングに関する変更点としては、タイヤ銘柄がミシュランのパイロットロード4からロード5になったのと、ハンドルバーの幅広化によるライディングポジションの違い程度だ。タイヤについては、土砂降りの中でウェットグリップや接地感の高さを確認することができた。スチール製のダイヤモンドフレームは’14年登場の初代から変わっていないが、前後サスペンションは’18年の2代目でリニューアルされている。旋回力の高さと、それを自由自在に操れるというMT‐07の持ち味は3代目となる新型も健在。加えてライディングポジションのアップライト化によって、積極的なコントロールがさらにしやすくなったと言えるだろう。
【73psを変えずに新規制をクリア】270度位相クランク採用の688cc水冷並列2気筒エンジンは、新型のマフラーの採用やECUの仕様変更、FIセッティングの最適化などにより、平成32年排ガス規制の適合化を達成。耐摩耗性に優れた排気側バルブシートの採用や、ミッションのドッグ角変更なども実施。
ペタル形状だったφ282mmフロントディスクは正円のφ298mmに大径化。これに伴ってφ41mm正立フォークのアウターチューブの形状を変更。リアディスクもペタルからMT-09と同型の正円へ。標準装着タイヤのミシュランはパイロットロード4からロード5Aに。
【鮮明な照射範囲と配光を備える新LEDヘッドライト】ローとハイビームを一体化したバイファンクションLEDヘッドライトを新採用。その左右にあるポジションランプとウインカーはMT-07としては初のLEDに。なお、ポジションランプは「Y」の字をモチーフとしている。ウィング状のテールカウルは形状を変更。
新採用のアルミ製テーパーハンドルは従来比で幅が32mm広く、高さは12mmアップしている。合わせてスイッチ位置を変更。LCDマルチファンクションメーターはよりコンパクトとなり、モノクロ液晶はポジティブ→ネガティブ表示となった。
タンクカバーはデザインを一新。構成パーツを9→8個へと減らしつつ、ニーグリップエリアをボリューミーに。フレームカバーはアルミダイキャストから樹脂へ。シート高805mmは変わらず。タンデムシート裏面には荷かけループや車載工具の一部が収まる。

[△] アシストはABSのみ。次なる一手に期待する

ライダーエイドなアシスト機能はABSのみ。車両価格や車重などの問題も絡むだろうが、次なる一手としてトラクションコントロールやスリッパークラッチなどの採用を期待してしまう。強化されたというブレーキは、基本的な印象としては先代と変わらない。

[こんな人におすすめ] このクラスには傑作が実に多い。ベテランもぜひ

およそ8年前、買ったばかりのホンダNC750Sから乗り換えようと思ったほど、初代MT-07の傑作ぶりは衝撃的だった。その印象は3代目となる新型も不変。顔付きはより精悍になり、初心者からベテランまで幅広くお薦めできる。


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