日本の道路の原風景のひとつ=スーパーカブ。岡崎静夏さんもお気に入りの1台だ。今回は’21年9月にリリースされた新型C125に試乗。小変更ながら大きな進化が感じられたとのことだ。

●まとめ:ヤングマシン編集部(高橋剛) ●写真:楠堂亜希 ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン

【テスター:岡崎静夏】チャーミングな笑顔でも、中身はスパルタンな”バイクフリーク”。’09~’10年のMFJレディースロードレースで2年連続王者に。全日本はGP-MONOを経て’12年からJ-GP3に参戦中。TwitterFacebookInstagramYouTube

 

【’21 HONDA SUPER CUB C125】初代スーパーカブC100は、本田宗一郎と藤澤武夫の直接指揮により開発され、’58年にデビュー。以降、長きにわたり愛され続けている。C125最新モデルは’21年9月登場。従来型に対し、エンジンをロングストローク化し出力特性を見直した。ABSも標準装備だ。■全長1915 全幅720 全高1000 軸距1245 シート高780(各mm) 車重110kg ■水冷4スト単気筒OHC2バルブ123cc 最高出力9.8ps/7500rpm 最大トルク1.0kgf・m/6250rpm 常時噛合式4段リターン 燃料タンク容量3.7L ■タイヤサイズF=70/90-17M/C R=80/90-17M/C ●色:パールニルタバブルー パールネビュラレッド ●価格:44万円

【ライディングポジション】気になるところがまったくないナチュラルさ。身長158cmでもしっくり来るが、こぢんまりとはしていないので、大柄な方でも受け入れられるはず。足着き性は良好だが、シート幅が気になる人はいるかも。

ルックスはカブらしさキープ。走りは別物にアップグレード

驚きました! こんなに印象が変わっているなんて。スーパーカブC125、新型になって激変してました。めちゃくちゃ乗りやすい。

すぐ気付いたのは、シフトアップ/ダウン時のギクシャク感がほぼないこと。スーパーカブはクラッチがない分、エンジンブレーキを調整しにくいんですが、気になるクセがなくなっていました。

そして、加速がスムーズ! 従来型は発進時の元気の良さが印象的だったんですが、新型はスルスル〜ッと加速して、さらにもうひと伸びがあるんです。これは本当にビックリ!

125ccという排気量の範囲内ではありますが、新旧モデルで明らかに違います。ファイナルをロングにしたような感じ──たとえるなら、従来型が筑波サーキット仕様だったのに対し、新型は鈴鹿サーキット仕様になったような印象なんです。分かってもらえますかね?(笑)

実際の公道では、従来型はシフトアップのタイミングが短めで、そのたびに「後ろからクルマに追いつかれてないかな」と気になります。でも新型はシフトアップの回数が減り、伸び伸び走らせられるんです。新型に乗っている時の方が心に余裕があって、周囲に気を配ることもできるから、安全性が増しているように感じました。

スムーズなエンジンの恩恵で、走りの安定性も高まっています。加減速時はもちろん、コーナリング時のフィーリングもかなり向上してますね。

コーナリング中って、微妙にスロットルを開け閉めしてスピードコントロールすると思うんですが、その際のツキが滑らかなので、車体姿勢も安定するんです。

これ、決して大げさに言うわけじゃないんですが、車体まわりやサスペンションがアップグレードしたんじゃないか、と思ったほどなんです。エンジンの改良って、こんなに効果的なんですね。今回の試乗中、何度もビックリさせられました。

そしてもっとビックリしたのは、スペックを見比べた時! なんと数値上は、従来型の最大出力9.7psに対して新型は9.8ps。そして最大トルクは同じだったんです。

でも、最大トルク発生回転数は新型の方が1250rpmも高まっているんですね。そういえばファイナルも変更されていてごくわずかですがロング気味になっていました。

こういう小さなことの積み重ねで、完成度を高めているんですね。

【やっぱり街をトコトコ行くのが似合う】エンジンがスムーズになったので、ストリートランでのストップ&ゴーがまったく苦になりません。走りが快適だから、今までよりちょっと先まで行ってみたくなるのが高ポイント!

スーパーカブC125のエンジンがすごくよくなったことは、私の中のレーシングライダー的な欲張りを刺激します。つまり、今までは「カブはそういうもの」と思っていたところが、ちょっと気になってきたんです。

それは、フロントとリアの安心感のバランスです。さぁマニアックな話になってきましたよ(笑)。

スーパーカブC125は、リアの安心感がとても高いんです。設定速度域が低めで、基本的にはハンドルを切って曲がるタイプだから、リア重視の作り込みは大正解だと思います。

でも、新型はエンジンがいいから、気持ちよくバンクさせてコーナリングしたくなってしまうんですよね。そうなると、フロントタイヤの位置がちょっと分かりにくく感じます。

フロントの接地感は確実にあるし、不安はまったくありません。でも、サーキットでもうひと攻めしようと思うと、もう少しフロントタイヤが存在感を放ってくれるといいな、と。そのためにはたぶんもう少しハンドルを下げて、ステップ位置も…って!

思わず「サーキットを攻めるなら」という前提で話をしてしまいましたが、それぐらい面白くて完成度が高いんですよ、スーパーカブC125は。だから“レーシングライダーとしての欲張り”が出てきてしまうんです。

ちなみに、皆さんとっくにお分かりだと思いますが、街乗りしている分には何も問題はありません。めちゃくちゃ優秀。ただ、デキがいいバイクに乗ったものだから、「サーキットを攻めたら…」と想像してしまっているだけ。でも、実際にカブのレースも流行ってますしね。ベースがいいんだと思います。つい「バイク」と呼んでいますが、本音を言えば“カブはカブ”って感じがします。“単車”でもなく、もちろん“スーパースポーツ”でもない。やっぱり“カブはカブ”っていうアイデンティティの強さがスゴイ!

スーパーカブのデビューは’58年。64年も前から今に至るまで“カブらしさ”を守りながら、中身をしっかりとアップグレードし続けるブレのなさが、本当にカッコいいと思います。

スーパーカブC125:SHIZUKAの評価

(1)スタイリング:誰がどこから見てもカブと分かるデザインは、さすがのひと言。それなのに現代的なエッセンスもちゃんと感じます。
(2)スポーツ性:本当によくできてるんですが、せっかくならもう一歩の高性能が欲しくなるのはレーシングライダーのワガママ!?
(3)ツーリング:高速道路に乗れないので遠出はできないけど、ご近所ツーリングには最高。快適だからいつしか距離が延びてます。
(4)街乗り:スムーズな特性で発進停止がしやすいのと、シフトアップのタイミングがまわりの交通と合ってきた印象ですね!
(5)コストパフォーマンス:仕上がりのよさ、満足度の高さからするとかなりお値打ち。超低燃費& 高耐久性で乗れば乗るほど安くなりますよ。

郵政カブみたいな色合いですが、実はキレイなラメが入っていてすごくオシャレ! ワンポイントのエンブレムも立体で、しかも歴史を感じさせるデザインです。ホント、こだわり抜いてます。

 

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