ホンダから2022年10月の生産終了が発表された

2022年4月28日、同年10月をもってCB400スーパーフォア(SF)/スーパーボルドール(SB)が生産終了になることがホンダから発表された。理由は令和2年排出ガス規制が同11月から適用されるためで、規制に対応していないCB400SF/SBは生産することができなくなるのだ。今後規制に対応した次期モデルを用意するかはアナウンスされておらず、日本の誇る400cc直4モデルの最後の血統がここで途絶えることになった。

1992年の初代CB400SFデビューからちょうど30周年を迎えたタイミングでの発表となったのは、時代の区切りを象徴した出来事と言えるだろう。今回試乗したCB400SBは2005年にバリエーション追加されたモデルで、以降は丸目ネイキッドのSFとハールカウル付きのSBの二本立てで継続されてきた。

CB400シリーズは初代SFのNC31、1999年にハイパーVTECが搭載されたNC39、燃料供給がフューエルインジェクションに変更されたNC42の3種類に大きく分けられる。NC39/NC42は後期型と呼ばれるが、その中でもスペックI~IIIおよびレボ(REVO)があり、レボにも3種類が存在するなど改良が繰り返されてきたのである。

筆者としては最新型が最良のCB400SF/SBという印象で、2000年前後にビッグバイクがもてはやされる時代になってからも業界内での評判はめっぽう良かった。販売面でも400ccクラスでベストセラーの常連で、教習車にも採用されるほどの乗りやすさは日本の誇るベーシックというに相応しい一台。ほぼ日本国内でしか販売されていないが、一部シンガポールに輸出されていることはあまり知られていない。

CB400スーパーボルドールの最終型でカラーリングはアトモスフィアブルーメタリック。2017年10月に平成28年排ガス規制に対応した仕様で、馬力規制が解除されたことから最高出力は従来の53→56PSに向上している。

身長170cmのライディングポジションは少し前傾する感じに。往復200km程度のツーリングにも使ったが、前傾姿勢で苦しむことは全くなかった。

体重65kgの足着き性は両かかとまでべったり接地。シート高は755mmとスポーツバイクとしては低い部類で、跨り部分も幅が抑えられている。

超官能的なエンジンサウンドとフィーリングは直4ならではのもの

CB400SF/SBに乗るのは今回が最後かもしれない。という訳で通勤やツーリングで一般道から高速道路までまんべんなく走ってきた。すでにCB400シリーズについては多くの記事で絶賛されており、改めて乗ってみても欠点が見つからないほど。逆に、時代の移り変わりとともに輝きを増しているように思えた。

最も特徴的なのは、唯一無二の400cc直4エンジンにある。2020年にカワサキがZX-25Rで250cc直4エンジンを復活させて話題になったが、その魅力は400ccでも同じ。中型クラスならではの甲高いエキゾーストノートはまさにスーパーカーサウンドと言えるもので、直4=並列4気筒でなければ実現できない。

加えてCB400SF/SBならではのハイパーVTECはやはり楽しい。ハイパーVTECが作動し、6375rpmを境に2→4バルブに切り替わると、排気音が甲高くなるとともにレスポンスがよりダイレクトになり、回転が勢いよく上昇していく。SP忠男さんではないが「気持ちイー!」瞬間が高回転域で待っているのだ。

もちろん4気筒エンジンの高回転パワーは圧巻で、10000rpm前後からビッグバイクに迫る加速力を発揮する。これは同じ直4でも250ccでは実現できない400ccならではのパワーで、普通免許で乗れるモデルではCB400SF/SBだけの持ち味。このエンジンがあるからこそ、CB400SF/SBは普通免許最高峰のモデルとして存在できていたのだ。

CB400SF/SBのエンジンは、元をたどると1986年のCBR400Rがルーツ。カムシャフトの駆動がカムギアトレーン式からカムチェーンになるなどの変更を受けたが、基本は熱きレプリカ時代の直4エンジン。これが35年以上も継続している。

エンジンのボア×ストロークは初代CBR400Rから一貫して55×42.0mmで変更なし。CB400SF以前、1989年にCB-1がネイキッドとしてCBR400RRのエンジンを採用したが、こちらはカムギアトレーン式だった。

2007年末に発売されたレボモデルから従来のキャブレターに変わって搭載されたPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)。これで平成19年排ガス規制と平成28年排ガス規制をクリアしたが、次の規制クリアはならなかった。

200kg級の車重は決して軽くないが、安定感は抜群

CB400SBの車重は206kg。初代CB400SBよりも11kg重くなったのは、ABSやグリップヒーター、ETCなどの装備が加えられたことも影響しているだろう。キャラクターはツアラーという感じで、通勤でのすり抜けなどは幅のあるミラーも含めるとスクーターに軍配が上がる。また、街中で多用する6000rpm以下は扱いやすさ重視なので決して速くはない。

それでもビッグバイクに比べれば住宅街などの路地も軽快に走り抜けられるので、400ccクラスの恩恵は十分感じられる。街乗り重視なら5kg軽量なネイキッドのSFを選んだ方がいいだろう。一方、CB400SBはやはりツーリングで本領を発揮し、高速道路の快適性が段違い。100km/hプラスαの巡行でも体に風圧のストレスがほとんど感じられなかった。

そして、郊外の一般道は本当に楽しい。ビッグバイクのように持て余すこともなく、それでいて軽すぎず思うままに走れる。ベース車のSFが教習車に選ばれるだけあって、クセもなくニュートラルなハンドリングに加え、サスペンションが一般道レベルの荷重でもよく動くので乗り心地がいい。減衰もしっかり効いていてフワフワすることもなく素晴らしいセッティングだ。

ただし、久しぶりに400cc直4に乗って感じたのは、現代の2気筒モデルに慣れてしまうと「意外と重い」こと。車重だけでなくクランクシャフトが長い分ハンドリングも安定指向なので、そこでも手応えを感じる。いい意味で安定しているが、ニンジャ400のような軽快感は薄いと言える。

それでも、エンジンのところで書いた「400cc直4」の価値はその重さを補って余りあるもの。今後CB400SF/SBは新車で購入できなくなるので、『譲渡車検』付きの車両をレッドバロンで購入することをおススメしたい。

フロントは4ポットキャリパーのダブルディスクで十分な制動力を発揮する。ABSは標準装備だ。

リアは1ポットキャリパーのシングルディスクブレーキ。2007年からABS仕様も用意されたブレーキは当初前後連動タイプだったが、現行モデルは非連動としている。

ホイールは2014年型から前後とも10本スポークを採用している。スイングアームはアルミ製でネイキッドらしい2本サスを初代CB400SFから継続している。

丸筒タイプの集合マフラー。異形デザインのマフラーが全盛の今となっては希少なデザインだ。

シート下には小物入れスペースを確保。現行モデルはここにETC2.0を標準装備している。それでもグローブ程度は収納可能だ。

SBはハーフカウルの内側左右に小物入れを備える。左側はキー付きなので貴重品の収納に便利。その昔は高速チケット入れに重宝したスペースだ。

ヘッドライトは2014年型からLEDを採用。ウインカーはポジション灯としても機能し、明るさを抑えて左右が常時点灯する。カウルは街乗りでも気にならない大きさだ。

テールランプもLEDを採用。この跳ね上がったテールカウルは2003年末に発売されたスペックIIIからの伝統になる。

アップタイプのパイプハンドルにフレームマウントのハーフカウルを装備。ミラーやメーターはカウルマウントされているので、ハンドル操作はSFよりも軽いはず。

タンク容量は18Lを確保。WMTC燃費は21.2km/Lなので、航続距離は381.6kmになる。テスト中の実燃費は23km/Lだった。

シートは前後一体型で、グラブバーも標準装備。オプションのトップケースが装着できるようにシートレールも強化されている。

H.I.S.S.はキーに内蔵されたICチップ連動型のセキュリティシステム。メーターはアナログ×2と液晶の組み合わせで時計、燃料計、ギアポジション表示もあり便利。ETCのインジケーターでカードの入れ忘れも防いでくれる。

2022年型CB400スーパーボルドール主要諸元

・全長×全幅×全高:2080×745×1160mm
・ホイールベース:1410mm
・シート高:755mm
・車重:206kg
・エンジン:水冷4ストローク並列4気筒DOHC2バルブ 399cc
・最高出力:56PS/11000rpm
・最大トルク:4.0kgf-m/9500rpm
・燃料タンク容量:18L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/60ZR17、R=160/60ZR17
・価格:104万600円~108万4600円

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