スポーツスターは2003年までと2004年以降で大きく違う

レッドバロン主催のメディア向け試乗会では現行・絶版問わず、さまざまなモデルを試乗することができた。

なかでも僕が気になったのが先日の記事でも紹介したスズキ・250ccモデルとヤマハ・トリッカー……そして、もう1台がハーレーダビッドソン・スポーツスター883R(XL883R)である。

2002年式 XL883R

2002年式 XL883R。2021年夏に開催されたメディア向け試乗会で、僕が最も気になったモデルだ。


「スポーツスター」といえば、先日、長年の空冷OHV Vツインエンジンから水冷DOHC Vツインエンジンを搭載するSPORTSTER Sにバトンタッチされたばかり。その影響もあってか、今、空冷最終モデルのスポーツスターシリーズは軒並み価格が上昇しているという。

だけど、僕が今回おすすめしたいのは、それよりもさらに古い、2003年までのスポーツスター。エンジンは同じ空冷OHVなのに何が違うのか? 

それはエンジンのマウント方式だ。

2002年式 XL883R

ステーを介して、エンジンが直接フレームにマウントされている。これによってダイレクトな鼓動感を味わうことができるのだ。反面、ラバーマウントモデルに比べて不快な振動やライダーに与える疲労感も大きいと言われている。


2004年から2021年までのスポーツスターはエンジンをラバーマウント方式で搭載。対して2003年まではソリッドマウント方式を採用していたのだ。

つまり、2003年以前はエンジンを直接フレームにボルト留めしていたのに対し(ステーはあるが)、2004年以降ではエンジンとフレームの間にラバー(ゴム)パーツを介している。これによって、エンジンの振動がラバーによって低減され、ライダーに不快な振動がいきにくくなった。特にエンジンを高回転まで回した時の微振動はかなり少なくなり、高速域での快適性が大きくアップしているのだ。

それでいてVツインの“鼓動感”はしっかり伝わり、ハーレーらしさが損なわれることはないため、今に至るまで「ラバーマウントのスポーツスター」は変わらない人気を獲得し続けてきた。

コンパクトで荒々しい……だから良いのだ!

2002年式 XL883R

試乗モデルのXL883Rは、鮮やかなオレンジとチェッカーのグラフィックによって、レーシーなイメージが高められている。


それでは2003年以前のスポーツスター(以下、ソリッドマウントモデル)はどうなのかといえば、やっぱりコレはコレで面白い! いや、むしろ僕はこの頃のスポーツスターが大好きなのだ。

先日公開した記事で、僕は「バイクオーナーにとって愛車のデメリットはアバタもエクボ」と書いた。
>タフなスマホ「TORQUE 5G」で新潟日帰りツーリング……その実力にビビった!!

これってスポーツスターにも通じることで、たしかにエンジンの振動はデメリットではあるのだが、逆に「これぞハーレー!」と思わせてくれるメリットでもあると、僕は思う。

2002年式 XL883R

そもそもフレームがラバーマウントモデルとは異なり、パイプが細くて全体的にコンパクト。外装の隙間から見える細いフレームは、わかる人にはわかってもらえる「萌えポイント」なのだ。


前述のとおり、ラバーマウントモデルでもエンジンの鼓動はしっかり伝わるのだが、かなり上品なもの。それはそれで長時間・長距離を走っても疲れにくく、十分に魅力だ。

しかし、ソリッドマウントモデルの荒々しさ、硬質な振動もまた、やっぱりハーレーらしい魅力に溢れているのである。

これはどっちが優れているかという問題ではなく、あくまでも好みの問題だ。

2002年式 XL883R

フレームとエンジンの隙間が少なく、ラバーマウントモデルより一回りほどコンパクト。この小ささ(といっても十分に大きいが)こそがスポーツスターだ! というファンは多い。


そしてもう1点、僕が魅力を感じているのがコンパクトさである。

スポーツスターはハーレーダビッドソンのなかでも小排気量モデルであり、車体は(ハーレーのなかでは)小さい方だ。しかし、ラバーマウントモデルはエンジンとフレームの間に専用のラバーパーツを介するため、ソリッドマウントモデルに比べて車格が大きくなっている。

ハーレーのなかでも小排気量モデルとはいいつつ、ビッグバイクなのだから「大きい方が迫力も出て好きだ」と言う人も多いだろう。だけど逆に、大きなモデルがたくさんあるハーレーのなかで、「スポーツスターくらいはなるべく小さい方がいい」と考えているライダーも少なからず存在する……そう、僕がその1人だ(笑)。

メディア試乗会で見つけた2002年式スポーツスター883Rに惚れ直す

2002年式 XL883R

エンジンの鼓動をダイレクトに感じながら、独特のコーナリングを堪能。荒馬を手なづけるようにして曲がるのが、なんとも楽しい。


さて、そんなわけでメディア試乗会にあった2002年式XL883Rである。

ハーレーダビッドソンのレーシングカラーであるオレンジをまとい、フロントにはダブルディスクブレーキを装備したスポーティ仕様。もちろん、試乗モデルはレッドバロン独自の8項目の検査『譲渡車検』をクリアした安心の車両だ。

スポーティ仕様とはいいつつも、やはり一般的なロードスポーツモデルとはかなり勝手が違う。コーナリングでは十分に速度を落として、お尻に体重を乗せきり、十分にリアへ荷重しながら曲がっていく。幅広のハンドルと高めのステップからなるライディングポジションは独特だが、この曲がり方には合っているようで、コースを何周かするうちにどんどん楽しくなってくる。

日本車やヨーロッパ車とはまったく異なる「スポーツ走行」だが、このクセが面白いのだ。

そして、走っている間に容赦なくお尻や腕を震わせる振動も「あぁ、僕はいまハーレーダビッドソンに乗っている」という気にさせてくれて、やっぱり不快な気分にはならない。

そう、独特のライディングポジションやコーナリング、エンジンの振動に、コンパクトと言いつつもやっぱり大柄な車体など、そのすべてがスポーツスターの魅力。

SPORTSTER Sの登場によって新時代へ突入したが、空冷スポーツスターが欲しいと考えている人はまだまだ多いはず。実際に購入を検討する際は、ぜひラバーマウント(2004年以降)とソリッドマウント(2003年以前)を比較してみてほしい。

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