新型MT-09と同時に開発されたヤマハ トレーサー9 GT。先代より約25万円アップしたが、KYBの電子制御サスペンションを筆頭に、バンク角連動型トラクションコントロール/コーナリングABS/スライド&リフトコントロール/コーナリングライトなど、電脳化を一気に促進。今回はオプションのフルパニアの状態で試乗した。

●まとめ:ヤングマシン(大屋雄一) ●写真:長谷川徹 ●取材協力:富津漁業協同組合 ●外部リンク:ヤマハ

’21 ヤマハ トレーサー9 GT 概要

【’21 YAMAHA TRACER9 GT】■全長2175 全高1430 軸距1500 シート高810/825(各mm) 車重220kg ■水冷4スト3気筒DOHC4バルブ 888cc 120ps/10000rpm 9.5kgf・m/7000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量18L ■ブレーキF=ディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:赤 銀 黒 ●価格:145万2000円

【R1由来の小型軽量IMUでライダーエイドな装備を充実】現行MT-09のCFアルミダイキャストフレームをベースに、剛性バランスをスポーツツアラーとして最適化。鍛造品に匹敵する強度と靱性をバランスさせたスピンフォージドホイールを採用し、これにBSと共同開発した専用チューニングのT32を標準装着する。バンク角連動型トラクションコントロール&ABSなど、電脳化も促進。

【ライディングポジション】シート高は40mm下がったが、足着きの印象は大きく変わらず。ハンドルは高めかつ幅広で、リラックスして操縦できる。[身長175cm/体重68kg]

[◯] ツアラー性能を底上げ。フルパニアでも自然だ

’15年に登場、’18年のマイナーチェンジを経て、今回が初のフルモデルチェンジとなるトレーサー。正式車名は都度変わっており、新型は「トレーサー9」に。日本では電子制御サスペンションなどを標準装備した上位仕様のみが販売され、車名の末尾に「GT」が付く。MT‐09をベースとするのは先代と共通で、888ccの水冷並列3気筒エンジンは、120psの最高出力をはじめ、6段ミッションの各変速比や1次/2次減速比まで同一だ。対してフレームは、スポーツツアラーとして剛性バランスを最適化するほか、シートレールは専用設計であり、さらにスイングアームは60mm(ホイールベースは70mm)長いなど、車体に関してはMT-09とはほぼ別物となった。

通称“CP3”エンジンの印象については、15%を超える急な上り坂を2000rpmで発進できるほどのスムーズさと、7000rpm付近から弾けるようなパワーの盛り上がり、4種のドライブモードごとの明瞭な違いなど、基本的にMT-09と大きく変わらない。ただ、車重が30kgも重いうえに車体のピッチングが控えめなこともあって、スロットルを開けやすいのはトレーサーの方だ。クイックシフターはアップ/ダウンとも変速ショックが少なく、クルーズコントロールも高速巡航において大いに役立った。新たに追加されたスライドコントロールやリフトコントロールは、一般的な走行においてその効果を発揮することはほとんどないが、コーナリングABSとともに大きな安心材料ではある。

ハンドリングは、フレームが刷新されたことで先代よりもバンキングのレスポンスが上がっていると感じた。KYBと共同開発したという電子制御サスペンションは、スポーツモード(A-1)コンフォートモード(A-2)という2種類のモードを用意。この2つの明確な差は感じられなかったが、ギャップ通過時の吸収性は高く、それでいて他社のスカイフックのようなフワフワとした接地感の希薄さはなし。今回は主にフルパニアの状態で試乗したのだが、それを感じさせないほどハンドリングはナチュラルだった。

ヤマハ トレーサー9GTディテール解説

エンジン:排気量アップで最高出力4ps向上。排ガス規制もパス

ストロークを3mm伸ばして845→888ccとし、最高出力は116→120psとなった水冷並列3気筒エンジン。ショートボックスマフラーは左右に排気口がある。

足まわり:接地感重視の電子制御サスペンションをKYBと共同開発

KYBと共同開発した電子制御サスペンション「KADS」を標準装備。IMUからの情報を元にSCU(サスペンションコントロールユニット)がソレノイドバルブを用いて減衰力を自動調整するもので、スポーツモードのA-1とコンフォートモードのA-2が任意で選べる。なお、4段階に切り替えられるドライブモードとは連動していない。前後ともプリロード調整が可能だ。

主要装備

先代のGTに引き続きクルーズコントロールとグリップヒーターを標準装備する。設定は10段階で、右側のホイールスイッチが操作性良好だ。

メーターはスマホのような大画面フルカラーTFTから、3.5インチTFTのダブルに。右側は4分割されており、各情報から任意に4種類を選んで拡大表示させることが可能。バーグラフ式タコメーターは回転数ごとに色が変化。

スクリーンはロックレバーを上げた状態で高さを5mmずつ10段階に調整可能だ。さらに防風効果を高めたい人のためにハイスクリーン(2万6400円)も用意される。

メーターの左横にDCジャックを装備。接続負荷24W(2A)まで対応する。なお、オプションのヒートシートは、メーター上で設定温度を10段階に調整可能。

標準のクイックシフターは、シフトアップのみから新型ではシフトダウンにも対応。操作可能条件は20km/h以上だ。

タンク容量18Lで無鉛プレミアム指定なのは先代と同じだが、WMTCモードでの燃費はわずかに改善。ライダーシートは、引き続き高さを2段階に調整可能。先代の850/865mmから810/825mmに。オプションでヒートシートも用意。

タンデムシートは、キーロックで取り外すことができ、キャップを外してロックレバーを解除するとライダーシートも外せる仕組みだ。座面の高さ調整は、工具不要だが工程はやや複雑。シート下の小物入れの荷重制限は3kgだ。

オプション:トレーサー史上初! フルパニアでの走行が解禁に

操縦安定性低下を理由に、トップ&サイドケースの同時装着走行はしないようにと、アクセサリーの説明書に明記していた旧トレーサー。新型は防振技術によって解禁に!

[△] ネガらしいネガはなく、25万円アップにも納得

先代GT比で5kg増えたが、排気量アップや電子制御サスペンション追加などを考えると想定の範囲内であり、これで25万円高なら納得だ。ちなみに、今回試乗したフルパニア仕様のオプション代は、工賃別で約23万円。BMWで同じ装備にすると、30万円を超える。

[こんな人におすすめ] 軽量ツアラーとして着実に歩みを進める

排気量が近くて電子制御サスペンション装備となると、ヴェルシス1000SEやBMWのF800XR(プレミアムライン)がライバルになりそう。気筒数はそれぞれ異なり、ヤマハはCP3エンジンの主張が強め。フルパニア化したときの費用が安いのも魅力だ。

※本記事は“ヤングマシン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。

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