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スズキが、イタリアのサルディーニャ島で開催した「Vストローム800DE WORLDWIDE PRESS TEST RIDE」に参加してきた模様を何回かに分けてお伝えしていますが、今回は第2回目。いよいよVストローム800DEの試乗がスタート!

Vストローム800DEの日本国内への価格・導入時期は3月上旬時点で未定。試乗車は海外仕様であり反射板の有無など、国内導入モデルとは一部仕様が異なっている。

<主要諸元(海外仕様)> ■全長2345 全幅975 全高1310 軸距1570 シート高855(各㎜) 車重230㎏(装備)■水冷4ストDOHC並列2気筒 776cc 84ps/8500rpm 7.9kg-m/6800rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量20ℓ(ハイオク) ブレーキF=ダブルディスク R=ディスク タイヤサイズF=90/90-21 R=150/70R17

Vストローム800DEってどんなバイク?

855㎜とシート高に関しては高めに設定されているが、跨り部分がしっかり絞り込まれているため、足着き性に関しては数値ほど悪くない印象。

筆者は172cm/75㎏で両足をつこうとすると両足の母指球が接地する。オプションにはプラス30㎜のハイシートと、マイナス20㎜のローシートも用意される。

 

新しく発表されたVストローム800DEは、スズキのVストロームシリーズとしてはちょっと特殊な存在だ。というのもVストロームシリーズはこれまでアドベンチャーバイクの中でもロードスポーツ性能の高さをウリにしてきた。主戦力である1050シリーズ、650シリーズは、フロントタイヤこそアドベンチャーバイクの定番の19インチサイズだが、フレームはアルミツインスパーフレームというロードスポーツバイクのような車体構成を採用していたりする。

実際に走ってみても、1050/650シリーズはこのアルミツインスパーフレームのおかげで剛性が高めに感じ、ワインディングなどではコーナーごとの切り返しも軽快でしっかり攻め込めるようなキャラクターになっている。逆に滑りやすい未舗装路などでは、ちょっと剛性が高すぎる車体のおかげで踏ん張りに欠けると感じることもあるくらい。1050/650シリーズはあくまで舗装路での走行性能や荷物を積んでの旅を重視したキャラクターで、ダート路面に関してはそこそこで“走れなくはない”といった雰囲気なのだ。

SUZUKI_Vstorm800DE_WORLDWIDE PRESS TEST RIDE

試乗会ではスズキが頼んだオフィシャルカメラマンが走行シーンのスチールと動画を撮影して速攻で編集、帰国時に渡してくれる。……のだがとにかくライダーの人数が多いためウエアとヘルメットでライダーを識別して写真を振り分ける。ヘルメットとウエアと名前を一致させる写真撮りも毎度のこと。

 

フロント21インチサイズを取り入れたVストローム

ところが今回試乗するVストローム800DEは、フロント21インチの大径ホイールを採用。これはダート路面での走破性を意識しての採用であることは間違いないが、そうなると“Vストロームシリーズのアイデンティティとも言えるロードスポーツ性能の方はどうなっちゃうのさ?”と天邪鬼な僕は思ってしまう。


だが、走り出してみればそんな心配も見事に霧散。この手の海外試乗会では、先導ライダーについて走るのが一般的。今回の場合も6~7人のグループを作り、オンロード&ダートロードを繋いて撮影ポイントを巡りながらテストライドするのだが、これが結構なハイペースなのだ。

SUZUKI_Vstorm800DE_WORLDWIDE PRESS TEST RIDE

ライダーブリーフィングで、追い越し禁止、車間を取る……などの基本的な説明を受けるが基本的にハイペース。「ナニこのスゲー景色!」なんて感じでよそ見しているとスッと置いていかれる(笑)。

 

まぁ、「Vストローム800DEのロードスポーツ性能をとくと味わえっ!」ってことなのだろうけど、「スミマセン、速すぎるのでペース落としてください」なんてことは口が裂けても言えない(笑)。右も左もわからない土地で置いていかれるのはゴメンだし、そもそもとしてこの場は国際試乗会だからだ。

今回、我々チームジャパンは地元イタリアの媒体関係者と一緒に走ることになったのだが、「スズキ本社のある日本からやって来たライダーってのはどれ程なのよ?」という目で見られているのは間違いない。喋っちゃいないし、言葉もほとんどわからないが、撮影を見守る姿や後ろを走るライダーからそんな無言のプレッシャーを感じるのだ。

SUZUKI_Vstorm800DE_WORLDWIDE PRESS TEST RIDE

Vストローム800DEはワインディングをかなり攻め込めることに驚いた。オフロード性能重視のフロント21インチホイールのアドベンチャーにありがちな不安定感が少なく、ワインディングでは腰を落として曲がるようなスポーティなコーナリングも可能なのだ。

 

思いのほか高かったロードスポーツ性能

そんな程よい緊張感を味わいながら、海沿いのワインディングを走っていて感じたのは、21インチホイールモデルらしからぬVストローム800DEのロードスポーツ性能だ。通常、21インチホイールを採用しダート性能を高めたモデルは、少なからずロードスポーツ性能がスポイルされるものだ。

細いフロントタイヤにストロークの長い足、またダートセクションをメインで設計すればそれだけ滑りやすい路面で踏ん張れるよう、サスペンションの設定やフレームの剛性も柔らかめに設定する必要がある。そんなしなやかな車体でグリップのいい舗装路を攻めようとすると、フレーム負けとは言わないまでも心許なく感じたり攻める気にならなかったりするものなのだ。

ところがどうだろう? このVストローム800DEは結構ワインディングも楽しめるのだ。もちろん前後17インチホイールの純然たるロードスポーツバイクのような走りはできないが、それでも腰を落としてリーンインでスポーティに駆け抜けることくらいはできる。

フロント21インチホイールのオフロード性能が高いアドベンチャーツアラーが流行っているが、このVストローム800DEのロードスポーツ性能の高さはライバルに対しての大きなアドバンテージになるだろう。Vストローム800DEはとにかく峠道が楽しいのだ。

アドベンチャーバイクは、オフロード性能とオンロード性能のバランスでそのキャラクターが決まる。Vストローム800DEは、21インチホイールを採用しながらもしっかりオンロード性能を確保している印象を受けた。

 

このロードスポーツ性について開発陣に話をうかがってみれば、このVストローム800DEのロードスポーツ性能の高さは、リヤのホイールサイズやタイヤのパターンにあるという。通常、ダート性能重視のアドベンチャーバイクのリヤホイールは18インチサイズが採用されるがVストローム800DEのリヤホイールは17インチ。これは軽快な切り返しなど、ロードスポーツ性能を重視してのチョイスなんだとか。

またタイヤに関しては市販のダンロップ・トレイルマックス ミクスツアーとは仕様が違い、専用チューニングが施されている。フロント、リヤとも斜め方向に入っている溝は幅を広くしてダート性能をアップする一方で、リヤタイヤの縦方向の溝はむしろ幅を狭くしたことで舗装路での安定性をアップしたのだとか。

Vストローム800DEの“DE”とは、デュアル・エクスプローラーの略であり、舗装路も未舗装路も両方(Dual)探索できる冒険者(Explorer)という意味。試乗では、オフロード性能だけでなく舗装路での性能もしっかり作り込まれていることがわかった。

 

フロントホイールに21インチサイズを採用したスズキの新型アドベンチャーモデル・Vストローム800DE。完全にオフロード性能のことしか考えてないかと思ったがそうではなかったのだ。あくまでVストロームシリーズとしてのロード性能を確保したうえでのフロント21インチ化だったのである。

こうなると気になるのはオフロード性能だが? ダート路面でのインプレッションは次回にお伝えしたい。 


つづく

 

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