クラス唯一のフルカウルスポーツにはGSX-Rの血統が息づく

GSX-R125は日本メーカーの125ccクラスで唯一のフルカウルスポーツ。スズキのスーパースポーツモデルが冠する「GSX-R」を襲名し、シリーズ最小モデルとして2018年にリリースされた。生産国はインドネシアで、現地ではGSX-R150が販売されている。GSX-R125は、150版のエンジンを147.3cc→124ccに排気量ダウンして日本の原付二種規格に適合させたものだ。

排気量は落としても兄貴分と同じDOHC4バルブヘッドを搭載した高性能エンジンを採用し、これもホンダCB125Rが2021年にエンジンを変更するまでは唯一のメカニズムだった。最高出力はクラストップとなる15PSを発揮し、小さくても本格派のスーパースポーツとして強い存在感を放っている。

実は、このエンジンは元々サトリアF150というアンダーボーンの実用車に採用されていたもので、2016年は「スズキ・アジアン・チャレンジ」という国際レースでも活躍。2017年には同じエンジンを積むGSX-R150にマシンをスイッチしており、GSX-Rシリーズのスローガン「Own The Racetrack(サーキットを制覇する)」を地で行く背景を持っている。

つまり、末弟のGSX-R125もサーキット直系の一台と言える。それだけではなく、GSX-Rシリーズらしく実用性も兼ね備えており、街乗りやツーリングでの使用もこなせる懐の広いモデルに仕上がっているのも特徴だ。

撮影車両は2018年型の初代モデル。レッドバロンで購入した『譲渡車検』付き中古車でスクリーン以外はほぼノーマルの車両だ。最新の2022年型は令和2年排ガス規制に対応しているが、最高出力は15PSを維持している。

身長170cmのライディングポジション。写真ではあまり前傾していないように見えるが体感は少しキツめ。ハンドルはトップブリッジ下にマウントされており、スポーツ度が高い。

体重65kgの足着き性は両足かかとまでべったり接地。シート高は785mmで決して低くはないが、車体がスリムなのが足着き性の向上に貢献している。

エンジンはリアルに高回転型! パワーバンドを使って走るのが楽しい

実際にGSX-R125で走ってみると、バイクの原点を思い出させてくれる存在だった。筆者は高校生の時にRZ50でバイクデビューしたが、その時の感覚が蘇ってきたのだ。当時の2ストローク50ccモデルはとにかくエンジンを回さないと走らない。これはGSX-R125も同様で、スタートから思いっきり回してパワーバンドをキープする走りは、普段大型バイクに乗っている身からすると久しぶりの体験だった。

エンジンのパワーバンドは8000~11000rpmあたり。タコメーターのレッドゾーンは11500rpmからで、中型や大型バイクからするとかなり高回転域をキープしないとキビキビ走ることはできない。シグナルダッシュでは、5000~6000rpmくらいでクラッチミートすればスクーターやモンキー125などと互角に走れるが、回している分扱いがシビアになり気が抜けないのだ。

だが、「昔はこうだったな~」と懐かしいエンジン特性が味わえるのが筆者のようなベテラン層には楽しい。もちろん、入門者は高性能エンジンの基本特性を学ぶ機会にもなり、「このパワーでどうやったら速く走れる!?」のかを追求することで、ステップアップに繋がるはずだ。

それでも、GSX-R125のエンジンは6000rpm以下でゆっくり流せる気軽さも兼ね備えており、実走行の燃費も46km/L程度と決して悪くない。このあたりは上級グレードのGSX-Rシリーズに通じる資質で、通勤や通学、ツーリングへの適性が高いとはなかなか言い切れないが、GSX-R125もそれらの用途でも適応可能と言える。

エンジンは、海外版GSX-R150のボア×ストロークを62.0mmx48.8mm→62mm×41.2mmに変更。カムシャフトを2本備えるDOHCに吸気×2、排気×2の計4本のバルブを備える。メッキシリンダー採用で冷却性能も高い

125ccのエンジンはシャーシ勝ち!? 限界は全く見えず

GSX-R125のシャーシは、19PSを発揮するGSX-R150と同じなので、かなり余裕がある感じだ。また、リアサスペンションはスポーツモデルで一般的なリンク付きなので、限界性能は高く公道レベルの旋回スピードでは全く不足が感じられなかった。さらに前後17インチホイールで安定感も抜群だ。

ハンドリングは落ち着いている感じで、同じ17インチで比較するとホンダCB125Rの方が軽快な印象。CBのようなネイキッドタイプの方がフロントに荷重が乗らない分、自然にヒラヒラ走れるのだろう。対してGSX-R125は体重移動などで上手くセルフステアを発生させないと曲がらないのだが、これこそスーパースポーツの醍醐味。精進してテクニックを身に付けたくなる。

ブレーキは前後ディスク式で制動力は必要十分。さらに前後にABSも備えており、これが非常にありがたかった。雨天走行中、前車が急ブレーキをかけるケースに遭遇し、フロントを思い切り握ったところでABSが作動。事なきを得たのだ。また、125ccクラスではフロントだけにABSを装着するモデルも多く見られるが、リアはドライ路面でもABSが作動する事が多々あり、その恩恵を知ることになったのだ。

他にもシャッター付きキーシリンダーやスズキイージースタートシステム、ツイントリップメーターにはツイン燃費計が用意されるなど、スーパースポーツらしからぬ充実した装備が実用性を高めている。スポーツバイク入門としてオススメしたい一台だ。

フレームはスチールパイプ製のダイヤモンド型式を採用。ホイールベースは1300mmでCB125Rの1345mmよりも短いが印象はその逆だった。

フロントブレーキは2ポットキャリパーに径290mmシングルディスクでABSを標準装備。タイヤは90/80-17とかなり細めだ。

リアブレーキは1ポットキャリパーに径187mmシングルディスクでABSも標準装備。フロントと同様にペタルタイプのディスクを採用する。

前後ホイールは17インチで、リアタイヤは130/70-17サイズ。前後ともダンロップのバイアスタイヤで現地生産のもの。雨天時は滑りやすい印象だった。

サイレンサーは径の異なる2つ排気口を持つデュアルテールエンドマフラーを採用。現行モデルは令和2年排ガス規制に対応している。

スーパースポーツらしくラバーレスのステップを採用。表面にローレット状の加工を施すが、鋭くはないので濡れていると滑りやすい。

タンク容量は11Lあるのでかなり余力がある。著者の実燃費は46km/Lだったので実際の航続距離も500kmに達する計算だ。

シートはスーパースポーツらしく前後セパレートタイプ。薄いのでツーリングには向いていないようだが、フロントに体重が分散されるので耐えられるレベルだ。

ヘッドライトはLEDで縦型と横にポジション灯を配置するスズキらしいデザイン。

テールランプやウインカーは電球だが、ナンバープレートランプはLEDを採用する。

ハンドルはセパレートでトップブリッジ下にマウントされている。それでもハンドルがシートから近いので、見た目よりはポジションはきつくない。撮影車にはデイトナ製クランプバーを装着している。

イグニッションキーには、いたずら防止のためにシャッターが備わっている。右の穴に付属のマグネットを押し込むと解除される仕組みだ。

メーターはフル液晶タイプで、バーグラフ式タコメーターやギアポジションインジケーター、時計、燃料計の他、ツイントリップメーター&ツイン燃費計も装備している。

2018年型GSX-R125主要諸元

・全長×全幅×全高:2000×1070×700mm
・ホイールベース:1300mm
・シート高:785mm
・車重:134kg
・エンジン:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ 124cc
・最高出力:15PS/10000rpm
・最大トルク:1.1kgf-m/8000rpm
・燃料タンク容量:11L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=90/80-17、R=130/70-17
・価格:35万8000万円(当時価格、税抜)

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