ホンダから久しぶりにブランニューのスポーツツアラー、NT1100が誕生した。1082ccの水冷パラツインやセミダブルクレードルフレームはCRF1100Lアフリカツインをベースとし、販売計画台数はアフリカツインのシリーズ合計600台に対して800台としている。その実力やいかに。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:ホンダモーターサイクルジャパン
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ホンダ NT1100 概要
【HONDA NT1100】■全長2240 全高1360(スクリーン最上位置1525) 軸距1535 シート高820(各mm) 車重248kg ■水冷4スト2気筒SOHC4バルブ 1082cc 102ps/7500rpm 10.6kgf・m/6250rpm 変速機 電子式6段リターン(DCT) 燃料タンク容量20L ■ブレーキF=Wディスク R=ディスク ■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 ●色:白 灰 ●価格:168万3000円
【価格を抑えつつも高い旅性能を追求】スチール製セミダブルクレードルフレームはCRF1100Lをベースに最適化し、これに専用設計のアルミ鋳造スイングアームを組み合わせる。価格を抑えるために6軸IMUを採用しておらず、また電子制御サスの設定もなし。ウイリーおよび後輪スリップを緩和するHSTC、ブルートゥースによるヘッドセットとの接続機能などを備える。
快適性重視の肉厚なシートだが、足着き性は悪くはない。膝の曲がりも緩やかであり、疲労度の少ないライディングポジションだ。[身長175cm/体重68kg]
[◯]DCTがほぼ完成形に。防風効果は非常に高い
アドベンチャーモデルの多様化によって下火になっていたスポーツツアラーのジャンルに、ニューカマーがやってきた。CRF1100Lアフリカツインのエンジンと骨格を基に誕生したこのNT1100は、欧州市場をターゲットとした本格スポーツツアラーだ。海外では6速MTモデルも販売するが、日本ではDCT仕様のみをラインナップする。
まずは動力性能から。270度位相クランク採用の1082cc水冷並列2気筒エンジンは、アフリカツインのものをそのまま使用。吸排気系をNT専用品に変更し、FIやDCT制御の最適化を図っている。
ライディングモードは出力の高い順にツアー/アーバン/レイン(任意設定のユーザー1/2あり)となっており、DCTを標準的なDモードにすると、どのライディングモードでも一般道において3000rpmを超えることはほとんどなく、60km/h付近で早くもトップ6速に入る。とはいえ加減速から巡航に至るまで過不足は一切なし。DCTをSモードにすると変速タイミングが高回転側へ移り、最高出力102psの力強さを実感できる。今回、特に感心したのはDCTの制御で、勾配の変化にかかわらずコーナー手前のシフトダウンが適切であり、あえてMTモードを使う必要性を感じなかった。
続いてハンドリング。腰を中央に据えたまま、ハンドルの押し引きだけで旋回に移行できるイージーな操縦性が特徴で、穏やかな舵角の付き方と、速度を上げるほど路面に吸い付くように安定性が増す様は、まさに欧州で育まれたスポーツツアラーのそれだ。
特に気に入ったのは乗り心地の良さだ。一般的にツアラーはフル積載+パッセンジャーを想定して前後サスのバネレートが高めになりがちだが、このNT1100はライダー1名でもギャップをスムーズに吸収してくれる。加えてスクリーンを起こしたときの防風効果が非常に高く、スポーツツアラーとしての完成度の高さに驚いた。なお、ブレーキはフル積載を想定してか強力であり、これも安心材料の一つだ。
ホンダ NT1100 ディテール解説
270度位相クランク採用の1082cc水冷並列2気筒はCRF1100Lと共通で、専用設計の吸排気系を採用。日本仕様はDCTのみで、これも制御を最適化する。
ショーワ(日立アステモ)製のφ43mmSFF-BP倒立フォークは左側にプリロードアジャスターあり。フロントキャリパーにはニッシン製のラジアルマウント4ピストンを採用する。
リアショックのプリロード調整は油圧式で、前後ともホイールトラベル量は150mmと長めだ。ホイールは前後17インチで、スポーク部を交差形状とした新作となっている。
大型のウインドスクリーンは高さと角度を手動にて5段階に調整可能。さらにアッパー&ロアーディフレクターにより優れた防風効果を発揮する。オールLEDのヘッドライトは昼間時の被視認性を高めるDRL(デイタイムランニングライト)を採用。そのほか、オートキャンセルウインカーやエマージェンシーストップシグナルも装備している。
【アップルカープレイとも連携可能】メーターの左右にアクセサリー&USBソケットあり。クルーズコントロールやグリップヒーターを標準装備し、パーキングブレーキのレバーはハンドル右側に設置。
6.5インチ感圧式タッチパネルの液晶メーター。アップルカープレイやアンドロイドオートとも接続可能で、背景色も変更できる。
燃料タンク容量はアフリカツイン(STD)の18Lより多い20Lを公称する。
シートは高さ調整機構こそないが、前後とも厚みなどを最適化して快適性を追求。その下部には車載工具のほか、ETC2.0車載器を標準装備している。
純正アクセサリーのトップボックスやパニアケースの取り付けやすさを考慮したリアキャリア。グラブバーはパッセンジャーが握りやすい形状となっている。
[△] レブルのような艶を求めるのは身勝手か
エンジン性能はスポーツツアラーとして完璧だが、裏方に徹しているというか、気筒数すら失念するほど印象が希薄。同系エンジンを搭載するレブル1100のようなツインらしい色気があれば、それを楽しむためだけに旅に出たくなるのだが。
[こんな人におすすめ] グーグルマップが使えるのはアドバンテージ
6軸IMU+電子制御サスペンション+クイックシフター装備のトレーサー9GTが約23万円も安いので、ホンダ独自のDCTを採用しているとはいえ割高感は否めない。ただし液晶メーターは最先端であり、スマホとの連動でグーグルマップが使える点は魅力だ。
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