最後のマジェスティシリーズが生産終了し後継機はX系に編入

ヤマハのマジェスティと言えば、2000年前後にビッグスクーターブームを巻き起こした名門シリーズ。2016年末に本家の250ccが生産終了になってもマジェスティSだけは、排ガス規制に対応しながら2022年まで継続してきたが、この10月が期限の令和2年排出ガス規制には対応せず、生産終了になることが確定している。

そして、後継機としてヤマハが用意したのがX FORCE(Xフォース)だ。ヤマハのスポーツスクーターが「MAX」シリーズでラインナップされている中で、車名に「X」のみを取り込んで編入させた形だろう。伝統的にラグジュアリーさをウリにしてきたマジェスティから、Xフォースはスポーツを指向したモデルになっている。

一方で、エキサイトメント(興奮)のXをネーミングに使うXフォースは、MAXシリーズほど性能本位ではなく、日常の使い勝手も重視している。コンセプトはマジェスティS譲りで、日本メーカーの150~160ccクラスの2輪スクーターで唯一のステップスルーボディを継承。スクリーンも最小限で街乗りでの軽快性に優れたモデルなのだ。

Xフォースは、マジェスティSの美点を受け継ぎつつ、直線基調のシャープなスタイルでスポーティさを強調。さらにフラットなパイプハンドルで乗車姿勢も攻めのポジションに変化し、マジェスティからXへの移行も明確に打ち出している。同時に前後独立式ABSを追加、令和2年排出ガス規制に対応するなど、安全性や環境性能を向上させている。

2022年6月に発売されたばかりのヤマハ・Xフォースは、ネーミングも新しい完全新作モデル。内容はマジェスティSの後継機に位置づけられる軽二輪快速スクーターで、スクーター王国の台湾で生産されている。

身長170cmのライディングポジションは上半身が直立するニュートラルな姿勢で操作性が向上。マジェスティSはアップハンドルで少し後傾していた。

体重65kgの足着き性は両足がつま先立ちに。シート高はマジェスティSの795mmから815mmに20mmアップしており、その分足着き性は厳しくなっている。

圧縮比を高めて最高出力をキープしたエンジンは街乗りで強力

Xフォースのエンジンは、新型NMAX155と同系の水冷4バルブエンジンを搭載している。日本メーカーのスクーターとしてはホンダのPCXシリーズに並ぶ最もハイスペックなエンジンで、ヤマハはこれに可変バルブ機構のVVA(Variable Valve Actuation) を搭載しており一歩リード。

また、近年はホンダの後を追う形でこれにスマートモータージェネレーターを装備しているので、エンジン始動もセルスターターの音がなく静かでスムーズになった。同系のNMAX155ではアイドリングストップ機構も追加装備しているが、Xフォースにはなぜか非装備。WMTC燃費もNMAX155の44.6km/Lに対し、40.9km/Lとわずかに差をつけられている。

それでも従来のマジェスティSの37.5km/Lよりも燃費は向上し、15PSの最高出力と1.4kg-mの最大トルクはキープ。体感では、加速が少しマイルドになったかなという印象だが、155ccならではの速さは健在。125cc勢に一歩差を付けられる優越感にニンマリしながら、さらにいざという時に高速道路に乗ることができるのはありがたい。

新しく装備されたVVAは6000rpm以降に作動し、メーターのインジケーターが点灯する。エンジンの低回転域と高回転域でカムシャフトのリフト量が切り替わり、ダッシュ力と最高速の両方を成り立たせるメカニズムで、排ガス規制に対応しても性能の維持に貢献しているのだ。

エンジンはマジェスティSと同じ水冷4バルブ155ccユニットでボア×ストロークも継承している。Xフォースでは、VVAとスマートモータージェネレーターを追加した最新仕様になっている。

こちらはNMAX(125)のVVA作動イメージ。低回転を重視するカムだと高速が伸びない、高回転を重視するカムだと下がスカスカというエンジンの特性を2つのカムを用いることでいいとこ取りしたメカニズムだ。

15kgダイエットした車体でスポーツ度アップ

XフォースはマジェスティSの街乗り快速路線を継承しつつ、ライディングポジションの変更と軽量化でスポーツ性を高めている。乗った感じでは軽量化の印象は決して大きくはなかったが、145kg→130kgのダイエットは500rpm高回転化したエンジンのレスポンス向上に貢献していると感じられた。

同様にローポジションのハンドルも、ライダーの操作に対するレスポンスが向上している。また、シート高アップによる高重心化でMAXシリーズのようなバランスに近づいており、スポーティさはマジェスティSよりもXフォースが上。リアサスは従来の変則的なモノショックからベーシックな2本ショックに改められており、より高荷重に耐えられるだろう。

13インチの前後ホイールはマジェスティSから不変。安定性と軽快性を両立するサイズで、タイヤ幅がワイドで手応えのあるハンドリングを実現している。Xフォースは、さらにホイールベースをマジェスティSの1405→1340mmへと65mmも短縮しており軽快性を高めているのだ。

全長がコンパクト化された分、シート下の容量は32→23.2Lへと減少したがヘルメット+アルファのスペースは確保している。また、前後ABSを装備しても税抜1.5万円アップに留めており、スマートフォンアプリ「Y-Connect(Y-コネクト)」への対応などの新装備も含めるとむしろ魅力は増していると言っていい。高速道路を走る機会が少ないのであれば、NMAX155よりXフォースが有力な選択肢だ。

フロントブレーキはマジェスティSと同じ267mm径のディスクを採用。マジェスティSでは左側に配置されていたが右側に移設され、ABSも新採用している。

リアブレーキは径230mmとし、マジェスティSよりも15mm小径化している。

リアフェンダーは前後に配置。マジェスティSは水平マウントの1本サスだったが、2本サスに改められた。

リアショックにはプリロード調整機構があり、車載のフックレンチで簡単に調整可能だ。

シート下にはジェットヘルメットが収納できた。グローブなどを収納できるスペースもある。シートヒンジ部分にはメットホルダー×2も装備している。

左から給油口、コンビニフック、シャッター付きキーシリンダー、500mlペットボトルを収納可能なポケット、USB電源を装備。マジェスティSでは12V電源だったのが、5V・2AのUSBタイプA電源になったのはうれしい進化だ。

右がロービームで左がハイビームの片側点灯ヘッドライト。LEDではないのが今となっては新鮮。ハザードランプも装備している。

テール&ブレーキランプは横一直線のポルシェ的なデザインを採用。ウインカーもLEDではない。

パイプハンドルの装備はマジェスティSから継続だが、高さは低く抑えられている。グリップは樽型で慣れると手に馴染んでくる。

メーターはフル液晶に進化。ブルートゥースでスマートフォンと接続し、Y-コネクトアプリを利用することができる。燃費ログやオイル交換のタイミングなど車両の情報がより詳細に把握可能だ。

ヤマハ Xフォース主要諸元

・全長×全幅×全高:1895×760×1120mm
・ホイールベース:1340mm
・車重:130kg
・エンジン:水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ155cc
・最高出力:15PS/8000rpm
・最大トルク:1.4㎏f・m/6500rpm
・燃料タンク容量:6.1L
・変速機:Vベルト無段変速
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-13、R=130/70-13
・価格:39万6000円

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