250ccスーパースポーツ新時代を象徴するホンダが本気を出した一台

2008年に発売されたカワサキのニンジャ250に対抗するためにホンダは2011年にCBR250Rを発売した。しかし、CBRというネーミングに対してエンジンが単気筒だったことや当時のVFR1200Fを模したスタイルにファンがギャップを感じたことで、追撃が及ばず出直しを迫られた。

そして、2017年に発売されたCBR250RRは、クラストップとなる38PSの最高出力や初の電子制御スロットル&ライディングモードなどの装備で瞬く間にライバルを圧倒した。2014年にはヤマハからYZF-R25も発売されていたが、2018年には250ccスーパースポーツでトップセールスを記録したのだ。

一方のカワサキは、2020年に並列4気筒エンジンのZX-25Rを発売してCBR250RRに対抗。さすがにホンダも4気筒化までしなかったものの、2020年型で38→41PSにパワーアップしたエンジンを搭載した他、オプションにクイックシフターを用意するなど、装備をアップデートしている。

これらの10年に渡る250ccスーパースポーツの熱い戦いは、ちょうど私の「ヤングマシン」編集長時代と重なっており、スクープや新車テストに全力投球した思い出のジャンル。2017年にインドネシアから日本に並行輸入されたばかりのCBR250RR上陸一号機を、スタッフが初日に転倒させてしまったのはほろ苦い思い出だ。

2022年1月に発売されたCBR250RRの現行モデル。1990年の並列4気筒MC22と同名だが、名前負けしないレベルの最新装備が徹底的に投入された。その分価格も上昇したが好セールスを記録している。

身長170cmのライディングポジション。250ccスポーツはセパハンでもアップライトなポジションを採用する例が多いが、CBR250RRはガチ志向なのでかなり低めにセットされている。

体重65kgの足着き性は両足がかかとまで接地する。シート高は790mmで腰高ではあるが2気筒は比較的スリムなので、足着き性は悪くないと言えるだろう。

41PSのエンジンはもはや街中では持て余すレベル

CBR250RRは2020年のモデルチェンジでエンジン性能を強化している。新形状ピストンで圧縮比を11.5→12.1に高めつつ、バルブスプリング荷重やポンピングロス低減で最高出力の発生回転数が12500→13000rpmに上昇。これにより最高出力だけでなく最大トルクも2.3→2.5kg-mに高めている。

吸気系パーツやマフラー内部の変更もあって、エキゾーストノートは初代2017年型よりもワイルドに感じられ、かなりレーシーだなというのが第一印象。街乗りでは5~6000rpmくらいで十分に走れるが、メーターを見るとエンジン回転数はその先にまだ8000rpmほど余力があり、とても回し切れるものではない。

高速道路で10000rpm以上に入れてみたがギアは3速で十分。体感でのパワー感は400ccレベルはありそうで、若いライダーに支持されている理由が分かる気がした。筆者はたまに家族のバリオスに乗る機会があり繊細な並列4気筒の出力特性も気持ちいいと感じるが、ハイパワーな2気筒はより暴力的だ。

と言っても250ccなので大型モデルのように回し切れないほどではない。このちょうどいいエキサイティングさは、大型二輪免許を持つベテランでも十分楽しめるだろう。このエンジンを使ったスーパースポーツ以外のモデルがないのが不思議でもある。

写真は初代モデル。クラス初の電子制御スロットルを採用し、ダウンドラフト吸気レイアウトでカワサキやヤマハに差をつけた。2020年型はバランサーシャフト軸も小径化されており、フリクションロスを低減。

マフラーは2穴タイプで上下から排気する。2020年型で内部構造が変更されている。

分かりやすい電子制御が楽しい

シャーシは2017年当時に倒立フォークの投入で大いに話題になったが、2022年型もこれを継承している。さらに前後にラジアルタイヤを履いてライバルに差をつけていた。サスペンションはスーパースポーツだけあってハード寄りの設定で、同じ倒立フォークのCB250Rよりも高荷重設定と感じたが慣れれば街乗りやツーリングも許容範囲だ。

そしてCBR250RRで何より特徴的なのは、当時はクラス唯一だったライディングモードだろう。電子制御スロットルを装備している利点を生かして、以下の3種類から出力特性を選ぶことができる。

Sport+:より力強い加速が楽しめる、レスポンスを強調したモード
Sport: オールラウンドにリニアな加速を楽しめる標準モード
Comfort:タンデム時や、よりリラックスした走行が楽しめる、快適性を重視したモード

250ccにモード切り替えは必要? と思ったが、それぞれのモードにはっきりと分かるくらいの違いがあり、実際の走行時にはそれぞれのモードの目的通りに役に立つはずだ。

さらに、テスト車にはオプションのクイックシフター(2万5300円)が装着されており、これは本当にお勧めしたい。クラッチを握らず、アクセルはそのままでシフトアップ&ダウンがスパスパ決まるのが気持ちいい。ワイルドな排気音とシフターだけで楽しさが倍増するのだ。

CBR250RRは本格的なスーパースポーツ入門として、または大人の趣味のスーパースポーツとしても楽しめる秀作だ。

径37mmフロントフォークは片側がスプリングとダンパー機能にセパレートしたショーワ製を採用。ブレーキディスクは大径310mmディスクに2ポットキャリパーを装備する。

リアブレーキは径240mmディスクに1ポットキャリパーを採用。ブレーキは前後独立式でABSを標準装備している。

リアサスペンションはリンク付きで左右非対称デザインのアルミ製スイングアームを採用。ホイールはCBR250RR専用設計の7本スポークで後方を解放した断面形状で軽量化を図っている。

リアサスペンションは5段階のプリロード調整が可能。ちなみにフロントには調整機構がない。

スポーティなソリッドタイプのステップを採用。ロッド部分にはオプションのクイックシフターのスイッチが組み込まれている。

燃料タンクは14Lを確保。両脇の盛り上がった部分はカバーだが、タンク自体がボディ表面になっている。

シートは前後セパレートタイプでタンデムシートは緊急用と割り切りたい。後席下にはETC車載器が入る程度の収納スペースがある。

ラムエアダクトに見える部分がヘッドライト、目に見える部分をポジション灯とする大胆なデザイン。インドネシア仕様はポジション灯部分がウインカーを兼ねている。

テールランプは上段がポジション灯で下段がブレーキ。ウインカーは前後ともLEDを採用する。

ハンドルはトップブリッジ下にマウントされており、かなり前傾したポジションを実現している。

メーターは液晶式でラップタイマー機能も装備している。スピードの隣にライディングモードの表示がある。

2022年型CBR250RR主要諸元

・全長×全幅×全高:2065×725×1095mm
・ホイールベース:1390mm
・シート高:790mm
・車重:168kg
・エンジン:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ 249cc
・最高出力:41PS/13000rpm
・最大トルク:2.5kgf-m/11000rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/70R17、R=140/70R17
・価格:82万1700円/85万4700円(トリコロール)

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