’80年代を通じて過熱し続けたレーサーレプリカブーム。このスペック至上主義の時代には、わずか1馬力の差がマシンの命運を分けることもままあった。本記事では、カワサキが重い腰を上げてついに開発したリアルレプリカ ZXR400/250について取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。

●文:ヤングマシン編集部

最後に出てきたスゴイやつ〈カワサキ ZXR400/250〉

ʼ88年、GPZ400Rでストリート路線を進んでいたカワサキが、スポーツ性能を追求したZX-4を投入する。E-BOXフレームの採用など、実力こそ確かだったものの、ツアラー然としたスタイルのため、リアルレプリカを求めるライダーから高い支持は得られなかった。

この反省から、頑としてレプリカ路線を拒否してきた同社が本腰を入れる。ついに初の本格レプリカ、ZXR400/250の登場である。

今までの遅れを帳消しにすべく、装備は先進的かつ過激だった。同社自慢のサイドカムチェーン式水冷直4は超高回転型で、250のレブリミットはCBR250RRに並んで市販車最高の2万1000回転。市販車初の倒立フォークや新気導入システムのK-CAS、ラムエア(250のみ)などF3ワークスレーサーZXR-4譲りのハイテクを満載した。フレームは当然アルミで、エンジンを包み込むE-BOXと呼ばれる高剛性シャーシを採用した。

実力の高さは折り紙付きで、400がデビュー年に早くも鈴鹿4耐を制覇。翌’90年、国際A級TT-F3で鶴田竜二が、カワサキに同クラスの年間タイトルを初めてもたらした。

最強4ストレプリカの呼び声も高く、本物の速さを求める走り屋に愛されたZXR。ライバルが消えゆく中、’90年代後半までレプリカの代表格として君臨するまでに至った。

カワサキ ZXR400:新設計のE-BOXフレーム

【’89 KAWASAKI ZXR400】ZX-4をベースに大改良。K-CASや倒立フォークを獲得した。■水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブ 398cc 59ps/12000rpm 4.0kg-m/10000rpm ■車重162kg ■タイヤサイズF=120/60R17 R=160/60R17 ●当時価格:68万6000円

卵のようにエンジンを包むE-BOXフレーム。強烈なエアダクトホースは、タンクを貫通しヘッドを冷却する。

レーサーでは当たり前の倒立フォークを市販車で世界初採用。伸/圧の減衰力調整も可能。

画像: ZXR400 LIMITED EDITION(1993)【8耐優勝記念カラー】’93年、カワサキが悲願の8耐初制覇。これを記念した「伊藤ハム」カラーだ。

 

カワサキ ZXR250:兄弟同時デビュー

【’89 KAWASAKI ZXR250】250で同社初の水冷直4を搭載。倒立フォークは国産でクラス唯一。■水冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 249cc 45ps/15000rpm 2.6kg-m/11500rpm ■車重144kg ■タイヤサイズF=110/70-17 R=140/60R18 ●当時価格:59万9000円

レブリミットは1万9000rpmと超高回転型。パネルのない分離式メーターがストイックだ。

カワサキ ZXR400の系譜

’90 カワサキ ZXR400

【’90 KAWASAKI ZXR400】エンジン特性を熟成。KIS-ARMやスリッパークラッチも装備。

‘91 カワサキ ZXR400

【’91 KAWASAKI ZXR400】フレームやフロントカウルを変更し、2kg軽量に。顔も刷新した。

’93 カワサキ ZXR400

【’93 KAWASAKI ZXR400】53ps化で中低速域を充実。以後は色変更のみで’99まで販売された。

カワサキ ZXR250の系譜

’90 カワサキ ZXR250

【’90 KAWASAKI ZXR250】400同様に軽量リアアームのKIS-ARMを採用。出力特性も変更。

‘91 カワサキ ZXR250

【’91 KAWASAKI ZXR250】400と共通デザインのスラントカウル採用。ホイールがX型に。

’93 カワサキ ZXR250

【’93 KAWASAKI ZXR250】45→40psに。STDは’99年型まで、Rは’01年型まで存在する。

カワサキ ZXR400/250の後継〈カワサキ ザンザス〉

’92年には、ZXRをベースに中低速トルクを煮詰めた公道ファイター ザンザスが登場した。GPZ900R以上とさえ言われた強烈なダッシュ力で、4スト版マッハの異名も。

【’92 KAWASAKI XANTHUS】■水冷4スト並列4気筒 399cc 53ps/11500rpm 3.7kg-m/9500rpm 168kg 62万9000円

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