スズキのアドベンチャーバイク「Vストローム」シリーズのメーカー主催ミーティング「Vストローム ミーティング2023」の模様をお届けしている。前編ではイベント内容をお伝えしたが、後編ではVストロームシリーズの魅力について掘り下げる。なぜ、Vストロームはここまで支持されているのだろうか。

開発者トークショーの模様からその魅力を探る

▲ドイツのバイク雑誌「MOTORRAD」誌のページを開く番匠さん


ミーティングでは、ニューモデル2機種の開発者トークショーとしてVストローム800の開発責任者であるスズキ株式会社二輪営業商品部チーフエンジニアの番匠哲也(ばんじょう てつや)さん、同じくVストローム250SXの開発責任者であるチーフエンジニアの鈴木一立(すずき かずたつ)さんの2名が登壇し、開発のこだわりや苦労話などを語った。

▲Vストローム250SXについて語る鈴木さん


開発の話に先立って、Vストローム800DEが欧州二輪専門紙誌による栄誉ある賞「アルペンマスター」を受賞したことが番匠さんから報告された。クルマでいうところの日本カー・オブ・ザ・イヤーに匹敵する賞ということで開発陣も喜んでいるということが伝えられた。欧州市場でもVストロームの評価はかなり高いのだ。

Vストローム800はロードの走行性能がとても高い!

▲手前からVストローム800、Vストローム800DE、Vストローム250、Vストローム250SX


さて、ニューモデルのVストローム800は、未舗装路重視のDE(デュアル・エクスプローラーの略)に比べてホイールの軽量・小径化やフロントディスクブレーキのラジアルマウント化、スクリーン大型化による防風性能向上などオンロード走行を考慮して多くの部品が変更されている。ハンドルとステップの位置もオンロード走行時のライディングポジションを考慮した仕様となり、車重もDEより7~8kgも軽くなっている。
こうした変化について、ミーティング会場までVストローム800でやってきたというMCのノア・セレンさんは「Aモードはちょっとびっくりするぐらい飛び出していく。 本気を感じる!」と驚いた様子だった。会場のお客さんにも「まずはBモードから体感してください」と注意喚起していたほどで、それくらい800のロードスポーツ性能は高められているということだろう。

●Vストローム800チーフエンジニア・番匠さんのトーク

 

Vストローム250SXは“アスリート”性能

同じくニューモデルのVスロトーム250SX(上写真)は、Vストローム250(以降、無印)とはエンジンも車体も全く異なる開発設計となっている。SXはスポーツ・クロスオーバーの略で、特定のカテゴリーには属さないという立ち位置だ。

無印(下写真)のほうは広大な中国大陸をツーリングするという想定でアドベンチャーバイクとして開発されているが、人に例えると“旅人”だという。エンジンはロングストロークでローギヤード化され、穏やかでなめらかな出力特性を持ち、絞り気味のハンドルは高い位置にセットされ、アップライトなポジションで疲れないバイクとなっている。

一方のSXは、ベースモデルはジクサーSF250だが、インドでの日常生活の足に加えて休日のツーリングをも想定しており、舗装路と未舗装路が混在する道路環境を何も気にせず走破できる性能が与えられた。

SXの油冷単気筒エンジンは無印の水冷並列2気筒エンジンに比べてウォーターポンプがないぶん軽く、大きなボアと吸気バルブかつショートストロークの設計で、馬力があってとてもトルクフルだ。「単気筒だから非力だということは一切ない(チーフエンジニア・鈴木さん)」

ハンドル幅も広く低くすることで砂利道でも抑えの効くようなポジションになっており、無印の“旅人”に対してSXは“アスリート”的な性能が与えられている。

●Vストローム250SXチーフエンジニア・鈴木さんのトーク

 

レッドバロン座間に人気の秘密を聞いた

▲いつもお世話になっているレッドバロン座間の湯浅崇大店長


Vストローム800とVストローム250SXが加わり、5機種8バリエーションとスズキの二輪ラインナップの中でも最大シリーズとなったVストローム。もちろん人気があるだけではなく実際に売れているわけだが、その理由についてレッドバロン座間の湯浅店長に伺った。※敬称略

田中:シリーズの中でも特に人気の車種は?
湯浅:Vストローム250はとても人気でよく売れますね。高速道路をよく走るお客様だとVストローム1050などを選ばれる傾向にあります。

田中:Vストロームの人気の秘密は?
湯浅:排気量を問わずロングツーリングの快適性能です。また、Vストローム250に関してはマイルドで扱いやすいエンジン、低回転寄りのセッティングもポイントだと思います。17Lの大容量燃料タンクのほか、大量の荷物を積みやすいセンタースタンドやDCソケットなどが標準装備であることも支持されています。

また、メーカーが用意している純正パニアケースセットも人気です。トップとサイド(左・右)の3点セットで10万円もしないので装着される方が多いですね。

▲展示デモ車両ならエンジンをかけてまたがることもできるぞ


田中:購入者の客層は?
湯浅:20代のお客様が多いです。1台目に選ばれる方や免許取得後にブランクのある方にも人気です。アドベンチャーバイクに憧れている、キャンプツーリングをしてみたいなど、バイクを使ってやりたいことがある方が選ばれます。大型バイクを乗りついできたような50代の方も多いのですが、疲れずトコトコ走りたいという声をよく聞きます。

田中:ニューモデルのVストローム250SXは?
湯浅:かなり人気で多くの予約を頂いています。Vストローム250では少し重たいと感じる方、林道に行くことも考えている方、エンジン出力が高いのでピークパワーを求めている方などで、リッター40km近くの実燃費の良さも評判です。

田中:大きな排気量ではどうですか?
湯浅:Vストローム650シリーズは根強い人気です。吹け上がりのよいエンジンとリッター35kmにも迫る低燃費性能、足つきがよく疲れにくいシートはロングツーリング愛好者に評判です。

Vストローム800シリーズはエンジンを始動すると驚かれるお客様が多いですね。2軸バランサーの振動の少なさとレスポンスの良さが魅力です。Vストローム1050シリーズもそうですが、電子制御がフルで入っているのもポイントですね。

驚くほど快適で「本当に疲れないんですよ!」

最後に、ミーティングで出会ったレッドバロンユーザーを紹介しよう。インパネ上部にタブレットを設置し自作のフードまで装着していた「いーのっく」さんに聞いた。茨城県からミーティング会場である浜松のスズキ本社まで400km弱だが「まだまだ走っていたい」と思ったそうだ。ツーリングの考え方まで変わったというVストロームの魅力とは?
●いーのっくさん(茨城県・36歳)/Vストローム1050XT(ヘリテージスペシャル):購入の決め手はデザインでした。ヘッドライトが角目のバイクが好きで、どうしてもこれが欲しかったんです。コロナ禍で納車が大変な時にレッドバロン鹿嶋で探してもらって、昨年の7月に購入しました。実際に乗ったらすごく良かくて、どこまでも走っていける感じがするんです。長距離を走っていても疲れが少ないから「まだまだ行ける、まだ行ける」と思って走れちゃう。

だから考えが変わったというか、ツーリングのプランを考えるのが好きになったと感じます。ここに行きたいな、あそこに行きたいなっていう。自分がいま東日本にいるから西日本に行ってみたいなとか。これからも車体の各部に荷物をたくさん積んでツーリングを楽しみたいです。

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