中古車を購入する際、「走行距離」を大きな判断材料にする人は多いことだろう。もし走行9万km台と1万km台の同じバイクがあれば当然、後者を選ぶハズだ。しかし、それは本当に正しい選択なのか?
レッドバロンのメディア向け試乗会に用意された車両で検証してみた!
※取材協力:ヤングマシン
同じバイクだけど走行距離が全然違う! フツーなら1万kmを選ぶが……?
バイク、クルマを問わず中古車を選ぶ際、まず第一に「値段」、そして第二に「走行距離」を基準にする人は多い。走行距離がかさむほど消耗品などの各部が劣化するのは間違いなく、「程度が悪そう」なイメージがつきまとうからだ。
実際、筆者も1万km以内なら極上車、2万km前後なら程度ソコソコ、3万km以上だとかなり状態が不安……なんてイメージを持っていた。
しかし、レッドバロンがメディア向けに実施した試乗会で、そんなイメージは単なる思い込みであることに気付かされたのだ。
会場には同じ年式のヤマハMT-03が2台用意されており、1台は過走行とも言える走行距離9万km、もう1台は1万8000kmとさほど距離が進んでいない。
「この2台のどちらを買うか?」と聞かれれば、迷わず1万km台の方を選ぶだろう(筆者もそうだ)。しかし実際に乗り比べると、意外や意外9万kmの方が圧倒的に状態がよかったのだ……!
意外や意外、9万kmの方が好調だった!
走行してみると、まず9万kmの車両は快調そのもの。不満はどこにも見当たらず、新車レベルの気持ちいい走りを堪能できた。走行距離は多いものの、消耗部品をキッチリ交換するなど整備が行き届いており、完調状態を保っている。
一方、1万8000kmの車両は走行距離こそ少ないものの、走りは最悪だった。加減速がスムーズでない上に、車体を倒し込んでも素直にバンクできない。そして何よりスロットルの動きが渋く、戻りが悪いので、乗っていてキケンを感じるレベルだった。
こちらはノーメンテで、乗りっ放しにされてきた車両と言える。つまり、「走行距離の短さ」と「状態の良さ」は必ずしもイコールではない。一般論と違い、逆の場合もあるのだ。
数字や外観など「目に見える部分」だけで中古車を判断するのはキケン
9万kmの車両は、レッドバロンが整備し、同社の「譲渡車検」をクリアしている。
片や1万8000kmの車両は、実験的にネットオークションで仕入れ、未整備の状態で会場に持ち込んだという。この車両のようにドライブチェーンの劣化をはじめ、スロットルケーブルの不適切な取り回し、ホイールベアリングのガタつきといった整備不良の中古車は実際にありがちのようだ。
チェーンのサビはわかりやすい部分ながら、他の部分は外観から不具合を判断するのは困難。今回のように乗り比べをすればその差を感じ取れるが、ショップに置いてある中古車を試乗できる機会はまずない。ましてや写真と走行距離などの数字しか判断材料がない、ネットオークションやフリマアプリでの個人売買ではなおさら状態を把握できない。
こうした低走行で状態が悪いMT-03が中古車として販売されていたら……と考えると恐ろしい。パッと見の綺麗さと走行距離の短さから多くの人は、サイフのヒモを緩めて喜んで購入してしまうのではないだろうか?
さらに付け加えると、一般的なライダーは購入したバイクしか知りようがない。状態の悪いバイクをつかまされ、「バイクはつまらない」と感じ、せっかくのバイクを降りてしまう人も決して少なくないはず。だとしたらライダーとしては悲しい限り。中古車選びは実にムズカシイと実感したのだった……。
※次回、中編に続く。それじゃあ走行距離が多くて、年式も古い中古車ならどうなのか!?