どうも、レッド・バロ子、こと、きのせひかるです!レッドバロンで初の大型バイクを購入した私が、レッドバロンの会員特典を骨の髄までしゃぶり尽くそうというこちらのコラム。
みなさま、今年のツーリングシーズンはいかがお過ごしですか?え?真のバイク好きにシーズンなんて関係ない?全天候型であってこそライダー、24時間365日がオンシーズンだって?
いやいや…どう考えても朗らかな春や秋が気持ちいいやろ…というのが、へたれライダーきのせの自論でありました。ある雨の日を走るまでは。
梅雨真っ盛りの某日、フリーマガジン『R★B』の撮影に参加させていただいた私は、静岡県の先っちょ・伊豆半島に来ておりました。この『R★B』とは、レッドバロンが発行する季刊誌で、全国のレッドバロン店舗や、道の駅などのツーリングスポットに置かれている無料の紙媒体の冊子。毎号、レッドバロンでバイクを購入したライダーが愛車とともに登場しています。この表紙を飾ることは、私のバイクタレントとしての長年の夢であり、レッドバロン会員となったらやりたかった事のひとつだったのです。
こうして訪れた初めての伊豆半島は、雄大な山々と劇的な海の景色が望める情緒いっぱいの町。途中で立ち寄った城ヶ崎海岸は、吊り橋や展望台もある屈指の観光地です。…にも関わらず、どこか哀愁を感じずにいられないのは、ここが数多くのサスペンスドラマのロケ地、それもクライマックスの犯人を突き止めるシーンに使われている海岸だからでしょうか。
また、橋のたもとには『城ヶ崎ブルース』の歌碑が置かれており、より一層感傷的な気分を煽ってきます。
「愛してくれた小指の爪を そっとかたみに つつんでいれた ハンカチ白い 城ヶ崎 あなたが帰る 遠笠山が 涙にかすむ 夜のはて」
…これぞブルース!!!城ヶ崎ブルース!!!
この詞を読んでから、私は今回の旅をブルースツーリングと名付ける事にしました。世の儚さを憂えたい皆様には大変オススメなルートです。
そうこう言いながら、海に、山に、伊豆の大自然を駆け抜けると、カイザーベルク城ヶ崎に到着です。カイザーベルクとはレッドバロンが運営する会員専用のツーリング施設。広大な敷地には小鳥たちのさえずりが響き渡り、四季折々の花が咲き誇ります。そんな自然に囲まれながら、私はソファーでくつろいだり、足湯で旅の疲れを癒したり、はたまたセルフのソフトクリームマシンではしゃいだりと、気ままな時間を過ごしました。
日帰りツーリングって、こういうのんびりできる寄港地をひとつ入れることで、身も心も回復し、時間の調整にもなるからいいんですよね。そんなこんなで楽しい撮影となりました。
…と、ここまでは、『R★B』本誌にも掲載されている表向きのお話。そしてここからは、その後いかにして私とスタッフが帰路についたか、取材後記として書かせていただきます。というのも、冒頭で申し上げた通り、この日は梅雨の真っ只中。しかし撮影チームの祈りがお天道様に通じたのか、ロケ中はなんとか持ちこたえ、美しい木漏れ日カットなども撮る事ができました。
が、ここからが大変。撮影が終わると同時に、これまでの我慢が堰を切ったかのような土砂降りの大雨に見舞われたのです。とりあえず近くの定食屋さんに駆け込み、食事がてら雨宿りを試みる私とスタッフ。ここでみなさん、ある疑問が思い浮かびませんか?
あくまで取材ですよ?スタッフは機材もあるし、「普通は車で来ているんじゃないの?」って。それが、車ではないのです。「えっ?ツーリング記事を作っているんだから、バイクに乗って取材するのは当たり前でしょう」と、スタッフも全員バイクで取材に参加しているのです…!
現に『R★B』の目次ページにはスタッフクレジットの横にカッコして所有している車種名が。けれど一体誰が想像するでしょう、カメラから照明、すべての機材をバイクに積み上げやって来ているだなんて…!これは取材に参加して初めて知った衝撃の事実でした。さすがはレッドバロン、バイクにかける想いがひと味もふた味も違います。
雨宿りをすること一時間。一向に止む気配はありません。仕方がないので、ほんの少し雨足が弱くなった隙を狙って出発することにしました。手馴れた様子でレインスーツに身を包み、荷物にはビニールをかけていくスタッフのみなさん。きっと幾度となく、過酷な現場を経験してきたのでしょう。普通だったら怯んでもおかしくない天気と荷物の量にも関わらず、その段取りと手際の良さには脱帽です。一方で、雨天走行に免疫のない私は、レインスーツの装着に手こずって、いきなりインナーをびしょ濡れにしたり、水溜まりにグローブを落としたりしながら、荷物の積み上げはスタッフのみなさんに手を貸していただいて、なんとか準備完了です。この時点で半泣きだったのは、ここだけの秘密。
撮影時、素晴らしいロケーションに一役買ってくれていたワインディングロードは、雨だと形相を変え迫ってきます。雨粒に遮られる視界の中、スリップに細心の注意を払って、とにかく、ひたすら、前だけを向いて走りました。「一体全体、どうして私はこんな中バイクに乗っているんだろう」頭の中に沸き上がる疑問を何度も何度もかき消しながら。
そうして豪雨の中 走ること1時間。突然目の前が明るくなり、陽が差し込んできました。分厚い雨雲の下を抜けたのでしょう。これには思わず感動。雨で冷えた体は太陽に照らされみるみる乾いていき、心地よい風が頬をなでてくれます。
ここまでよく走ってきたね、がんばったね。…そうすべてのライダーを労ってくれるように。その時、この人達(スタッフの皆様)が、なぜ車でもできる取材を、あえてバイクでおこなっているのか、少しわかった気がしました。この世界には、バイクでしか感じられない〝瞬間〟がたくさんあります。こうした雲の終わりだったり、木漏れ日のあたたかさだったり、風の音だったり、そよいでくる匂いだったり。そういった刹那のひとつひとつを、写真と言葉を駆使して魅せるのが、バイク誌の仕事だから。
熱帯びたリアルな感覚を常に載せていけるよう、彼らはバイクで走り続けているのかもしれません。そしてその道が過酷であればあるほど、一緒に走ったマシンやチームとの絆が深まり、仕事の関係を超えた〝仲間〟になれるのかもしれません。
今は初心者ライダーなので見る物すべてが新鮮な私ですが、10年20年と乗り続け、いつか〝ベテランライダー〟の域に入ったとしても、小さな事に心を動かすこの感覚だけは絶対に忘れまい、そして、自分に後輩ができた時はそのトキメキに寄り添ってあげられるライダーでありたいと、決意したのでした。みんなで走った雨の伊豆半島を、私はこの先一生忘れることはないでしょう。ビバ!城ヶ崎ブルース!!!