絶対的な運動性能はもちろん快適性や所有感でも圧倒的な優位性を放つモデル……それが往年、各メーカーが威信をかけて開発した旗艦(フラッグシップ)と呼ばれる存在でした。しかし世知辛い諸規制がはびこる現在、重厚長大≒大きなことはいいことだ!といった価値観は過去のものとなり、旗艦もまた各々違うジャンルや姿形を模索していったのです!

●1441㏄もの排気量を持ち、最高出力は200馬力(ラムエア加圧時210馬力)を誇りつつ、ご近所プチツーリングだって楽勝でこなすフットワークと小回りの軽さも自慢……。そんなカワサキ入魂のフラッグシップ「Ninja ZX-14R」はまだまだ北米向けでは存命中〜。いや本当に適切なアップデートがなされた上で日本仕様として再降臨してくれないものでしょうかねぇ……
アナタの知らないOEMの世界【その1】は今しばらくお待ちください m(_ _)m
Contents
ラスボスがインフレーションしていった正しき(?)世界の果て……
並みいるライバルたちを凌駕する乾坤一擲な1台を作り上げれば、注文がドカスカひっきりなしに入ってきて売り上げもシェアも急上昇~!
そんなドリーミーな世界が昔はちゃんとありました。
ビッグバイクに話を絞るならホンダ「ドリームCB750フォア」や、

●量産車として世界初のインラインフォアレイアウトを持つ736㏄空冷4スト並列4気筒OHC2バルブエンジンを搭載し、1969年に販売が開始されたホンダ「Dream CB750 FOUR」。最高速度200㎞/hを標榜する当時世界一の高性能バイクでもありワールドワイドな大ヒットを記録! ホンダが二輪界王者の地歩を固め、さらに四輪業界へと進出できたのも、このナナハンが稼ぎ出したお金があってこそ……という説すらあるのです
カワサキ「900 スーパー4(型式名:Z1)」の例を挙げるまでもなく、

●「ドリームCB750フォア」ショックをまともに受けたカワサキが捲土重来をかけて開発した903㏄空冷4スト並列4気筒DOHC2バルブエンジンを積む「900 Super4」。CBの67馬力を大きく凌ぐ82馬力を発揮するハイパフォーマンスぶりは1972年の発売開始時から大きな注目を集め、これまた世界的な大ヒット作へと成り上がり! 最高速を含めた絶対的な走行性能バトルを制するものは巨大市場を制す!!とばかり、各メーカーの馬力アップ大作戦がスタートいたしました
大排気量化やハイメカニズム化が達成されるごとにエエ商売ができて、次なるフラッグシップを建造(?)する原資が開発陣へ潤沢に供給されるというウッハウハな好循環サイクルがフル回転!

●特に「ドリームCB750フォア」大ヒットのころは1ドル=360円という固定相場の時代でしたからねぇ(1973年から変動相場制に移行)。高性能バイクの開発はメーカーにとって最優先事項!
そんな自由闊達時代の頂点が1990年にデビューしたカワサキ「ZZR1100(C型)」だったのかな……と個人的には考えております。

●「900スーパー4(Z1)」から「GPz1100」まで空冷エンジンのまま性能を追求し、初代ニンジャこと「GPZ900R」で水冷エンジンとなり以降のモデルでは排気量を拡大するだけでなく、車体もタイヤもサスペンションも長足の進化……。そしてこの「ZZR1100(C型)」が到達した超高速性能と優しき乗りやすさの両立っぷりは「Ninja ZX-14R」開発時の指標にもなったとか。1993年にマイチェンを受けたD型となりましたけれど147馬力/11.2㎏mという性能には変更がありませんでした……当時はライバル不在でしたからね〜
否応なしな政治力がフラッグシップ、いや二輪全体へ重い鎖をかける
もちろん以降も1990年代末にかけてホンダ「CBR1100XX スーパーブラックバード」、

●1996年、ホンダが打倒「ZZR1100」に燃えて登場させた「CBR1100XX Super Blackbird」! 1137㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは164馬力/12.7㎏mのパフォーマンス。実測290㎞/hオーバーも記録して「ZZR1100」は凌駕したものの……!? そのあたりを含め、2020年代まで網羅しつつヤングマシンさんがまとめた最高速バトルの興味深い記事はコチラ!
カワサキ「Ninja ZX-12R」、スズキ「GSX1300R ハヤブサ」などが最高速を至上の価値基準とした絶対性能バトルを繰り広げてまいります。

●押しも押されもしない市販車最速マシンとして記録にも記憶にも残る初代ハヤブサこと1999年型「GSX1300R HAYABUSA」。トルクフルな1298㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンは175馬力/14.1㎏mを発揮してライバルを圧倒! ただし無双が過ぎたのか(?)最高速バトルがさらに過熱することを懸念したEUのお偉いさんが299㎞/h以上出せなくすることを提唱。そのため当初は350㎞/hまで刻まれていたスピードメーターも2001年型では300㎞/hに変更……嗚呼。なお2023年、ハヤブサ25周年を記念して用意されたサイトはコチラ!
駄菓子菓子!
騒音規制に排ガス規制に最高速(299㎞/hリミッター!(^^ゞ)規制に各種車体安定化装置の義務化に車体状態把握用電子機器装着のバージョンアップ要請などなどなどなど……「オマエら過保護なオカンか!」と叫びたくなるような謎ルール(?)ばかりが増えていき、速さこそ正義!だったフラッグシップジャンルは停滞方向へ……。

●いやモチロン理解はできるんですよ。地球を走るモビリティとして環境に優しく、ライダーの安全も優先し、故障したら原因がすぐ分かるように……などなどが正義だということは。しかしそのおかげで車重は増えがちとなり価格はべらぼうに高騰……
それぞれのジャンルで小ぶりな旗艦(巡洋艦!?)が生まれて人気に!?
結果、世界の主要メーカーは自らの規模を考えながら得意分野を伸ばしていくという戦略を取り始めます。
ホンダは絢爛豪華なツアラーを孤高の領域へと押し上げ、

●ホンダ「Gold Wing Tour 50th ANNIVERSARY」385万円(消費税10%込みの価格。以下同 ※なお、このGW50周年記念車の受注期間は終了)1833㏄水冷4スト水平対向6気筒OHC(ユニカム)4バルブエンジンは126馬力/17.3㎏mという圧倒的な極太トルクが自慢! それに組み合わされるは電子式7段変速(DCT=デュアル・クラッチ・トランスミッション)……。大切な人とどこまでも走っていける、まさにツアラージャンルの旗艦と言える存在……。まぁ、業界の盟主であるホンダはスーパースポーツやアドベンチャーほか、あらゆるジャンルでフラッグシップ的なモデルを用意しておりますね。こりゃマジで凄いこ
ヤマハはミドルクラスのプラットフォーム戦略を販売拡大につなげ、

●カワサキ・ホンダ・スズキの爆速メガスポーツ・フラッグシップバトルから身を退いていたヤマハはミドルクラスで3気筒と2気筒のエンジンとフレームを(ほぼ)流用しつつ、ネイキッド、ネオクラシック、アドベンチャー、スーパースポーツへそれぞれ幅広く展開するという戦略で金脈を掘り起こしました。写真は2025年型「MT-09 Y-AMT ABS」136万4000円。クラッチ操作なしでスポーツライディングが堪能できるという新たな世界を切り拓いております。面白かった〜(筆者はレンタルバイクで体験)
カワサキは汎用性の高いスーパーチャージドエンジンをバイクだけでなくオフロード四輪車へも積極展開。

●まさしくこの2025年8月1日にカワサキ初のスーパーチャージドエンジン搭載オフロード四輪車として「TERYX4 H2」と「TERYX5 H2」が発表されました(写真は最上級モデルの「TERYX 5 H2 DELUXE eS」4万3699ドル……発表時レートの単純計算で約657万円)。二輪車H2シリーズのものをベースに改良が施された999㏄エンジンは253馬力/20.2㎏mという圧倒的パフォーマンスが自慢(米国サイトはコチラ)! カワサキ自ら「フラッグシップモデル」と公言しているゴギゲンなモビリティ……日本でも乗ってみたいのう
日本の得意にしてきたジャンルが次々に奪われていく悲しさよ……
BMWとドゥカティは、かつて日本メーカーのお家芸だったスーパースポーツジャンルへ鋭く切り込みつつ、アドベンチャージャンルを席巻していくという状況へ。

●クルマの世界でたとえるならSUVになるのかな……。ともあれ今やバイク界で大人気を呈しているアドベンチャージャンル。その絶対王者と言えばBMW GSシリーズですよね。かくいう頂点に君臨するフラッグシップモデルが「R1300GS Adventure」333万5000円〜。キャッチコピーは「大地に轟く伝説。」ですからもはやひれ伏すしかありません(^^ゞ。そんなBMW、「M1000RR」を筆頭にスーパースポーツも元気バクハツ!

●気がつけばスーパースポーツからパワークルーザー、アドベンチャー、ツアラー、ネイキッド、スクランブラー、スーパースポーツ、モタードなどなど多種多様なジャンルへ魅力的なモデルを続々投入しているドゥカティ。中でもアドベンチャーツアラー系の旗艦とも呼べるのが「Multistrada V4 S Grand Tour」372万2500円。う〜ん、かつてホンダの独擅場だったスポーツV4エンジン……もうすっかりドゥカティ(ちょいとアプリリア)のものというイメージでゲスなぁ(涙)
まぁ、2000年以降は「メーカーの威信をかけた絶対性能バトルなんぞ、もう厳しくなるばかりの規制でゼニになりまへん、ナンバーワンよりオンリーワン路線でいきまひょ(謎の関西弁)」という、よく言えば手堅い、悪く言えば夢のない方向へシュリンプ、いやシュリンクしていった時代だったとも言えるでしょう。

●シュリンプとは小エビのこと……美味しいですね。ちなみにシュリンクとは「縮小する」「減少する」という意味ですね。ギャグの説明、筆者は大好きです(苦笑)
嗚呼、カワサキ大排気量フラッグシップの血脈を伝えてきた「Ninja ZX-14R」も2020年モデルをもって日本&欧州ほかの市場からフェードアウト……。

●排ガス規制の関係からファイナルモデルとなった2020年型「Ninja ZX-14R ABS High Grade」。当時価格は192万5000円(黒/緑は190万3000円)。結局、「GPZ1000RX」、「ZX-10」、「ZZR1100」、「Ninja ZX-12R」、「ZZR1400」、「Ninja ZX-14R」と続いてきた大排気量NAエンジンのカワサキ旗艦は(今のところ)1台も国内仕様を出すことなく終焉しております
しかし、KY(空気読めない)なメーカーがひとつ残っていました。
そう、スズキです。
大排気量メガスポーツの好敵手は厳しいEURO規制を堂々クリア!
なんと2021年、まさかの3代目「ハヤブサ」が全世界デビュー!

●2021年型「HAYABUSA」当時価格は215万6000円。従来型より9馬力減った最高出力188馬力を9700rpmで発生し、最大トルクは0.6㎏m減って15.2kgm/7000rpm。シート高も5㎜減って800㎜、車両重量も2㎏減って264㎏、燃料タンク容量も1ℓ減って20ℓ。……なんだかモロモロ減りっぱなしですが(笑)、圧倒的な動力性能は不変どころか数値に表れない低中速域のトルク&パワーは大幅に増しているくらい。登場以降、厳しさを増すことが確実な環境諸規制を見越した開発が徹底的に行われたそうです
もちろん日本仕様も堂々登場いたしました。
アルミ製のツインスパーフレームとスイングアームは基本的に従来型を受け継ぎ、エンジンも1339㏄水冷4スト並列4気筒DOHC4バルブエンジンというスペックこそ不変ながら全面的な見直しが行われて無駄なコストアップを抑制しつつ、さらなる乗りやすさや耐久性などを確保。

●2024年型「HAYABUSA」カタログより。新搭載された電子制御システムS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)には出力特性、トラクションコントロール、エンジンブレーキコントロールなど5つの制御を設定パターンから選択できるSDMS-α(スズキドライブモードセレクターアルファ)を採用! 各種電子制御のモード数を多く設定することで街乗りからツーリング、サーキット走行までの様々なシーンやユーザーの好み、技量へ対応できるようにしたのです。やはりこのあたり電脳系の発展は日進月歩……いや秒進分歩ですからね!
スタイリングにも特徴あるハヤブサのデザイン文法にのっとった明快さが踏襲され、バイクに詳しくないおばあちゃんにも「このハーレーはハヤブサかい?」と問われること確実な仕上がり(^0^)/。

●こちらも2024年型「HAYABUSA」カタログより。初代から続く開発コンセプト「Ultimate Sport(究極のスポーツバイク)」のもと、高い空力特性を持つ鎧兜(よろいかぶと)をモチーフにした独特のデザインや優れた走行性能をさらに進化。のっぺらとしたデカいスマホのようなメーターが大流行している昨今、中央にカラー液晶部を挟みつつゴージャスな5連メーターとしたインストルメントパネルにもポリシーを感じますね。なお、「Ninja ZX-14R」もアナログ式な速度&タコメーターがドーンと鎮座しておりナイスなのです
……正直、もはやビッグバイクがホイホイ売れるような世界情勢ではなくなり、冷徹に採算性をチェックしたら2代目で終わっていた可能性すらあった「ハヤブサ」ですが、スズキは二輪部門の象徴として進化&継続させていくことを決めたようです。

●最新の2025年型「HAYABUSA」カタログより。新色のマットスティールグリーンメタリック/グラススパークルブラックが精悍ですね〜。価格は223万3000円。内容を考えればお安い……!? 新車3年保証のあるレッドバロンでピカピカのニューバイクを購入することは超オススメです!
あわよくばカワサキも北米向けに存命中の「Ninja ZX-14R」をブラッシュアップして、998㏄スーパーチャージドエンジンを積む「Ninja H2 SX」シリーズとはひと味違う魅力の大排気量フラッグシップとして全世界的に復活させてくれないものか……と夢想してしまう今日このごろ(そのとき日本向けは「ZZR1450」とし、価格も「ハヤブサ」同等で……(^^ゞ)。

●やはりカワサキデザイン革命を起こした田中俊治さん直伝の6連ヘッドライト&センターエアスクープフェイスは、奇跡的なバランスだと感じてしまうのですよね……。「Ninja ZX-14R」復活待望論、勝手ながら言い続けさせていただきます!

●2025年型「Ninja H2 SX SE」価格は312万4000円。熟成進むスーパーチャージドエンジンは最高出力200馬力(ラムエア加圧時210馬力)を1万1000rpmで発生し、最大トルクは14.0kgm/8500rpm。シート高820㎜、車両重量267㎏、燃料タンク容量19ℓ。あらゆる快適電脳装備がそろうハイパースポーツマシン。「Ninja 1100SX」177万1000円〜とは狙っている層が明確に違っています
同じ土俵でガチに競いあうからこそ、好敵手の高い価値は維持されていくのですから……!

●う〜ん、やっぱりこの面構えはええのう(^^ゞ
あ、というわけで時代を超越するフラッグシップ群は中古車となっても(なってこそ!?)深い価値をオーナーに伝えてくれるもの。「GPZ900R」から連綿と続く大排気量カワサキ旗艦、初代~3代目となったスズキフラッグシップの代名詞「ハヤブサ」、そしてその派生車や各メーカーのジャンル別フラッグシップまでレッドバロン『5つ星品質』の中古車なら選んで安心ですよ!
アナタの知らないOEMの世界【前篇】は今しばらくお待ちください m(_ _)m