いつの世も全銀河のライダー魂を熱く滾らせてきた漢カワサキ謹製ビッグバイク! Z1以降の空冷時代はもちろん、1984年デビューした初代ニンジャこと「GPZ900R」から連綿と続く水冷フラッグシップモデルたちは世界最速を実現しつつ扱いやすさまで標準装備してきた珠玉のオールラウンドプレイヤーだと言えるでしょう。その進化をザッと振り返ってみましょうかね〜!

2025年型ZX-14R

●カワサキ逆輸入車を取り扱ってきたブライトによる日本での販売は2020年モデルをもって終了したものの、排ガス規制が緩い北米では2025年モデルとして現役バリバリ! スーパーチャージドエンジンを搭載する「Ninja H2 SX」とはまた違うフィーリングを誇る大排気量NA(自然吸気)メガスポーツとして日本仕様での復活を待ち望んでいるファンは少なくないはずなのですが……

 

 

VMAXという孤高の“魔神”【その10】はコチラ!

 

Ninja ZX-14Rという万能旗艦【その2】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

♪ああ〜 世界最速でなければ〜 カワサキ旗艦じゃないのさ〜

 

旗艦……Flagship(フラッグシップ)とはよく使われていますが、語源としては船団全体を指揮する司令官の乗船した軍艦を指す言葉で、転じて企業の製品やブランドにおける最上級や最高級のものを差す言葉。

旗艦(戦艦)のイラスト

●威風堂々&重厚長大かつ圧倒的な戦闘力さえ兼ね備えた頂点たる象徴……。羨望と憧憬を一身に集める存在でもありますね!

 

 

諸説はありますし異論も認めますが、1972年に登場したZ1こと「900 Super4」が、登場するや押しも押されもしないカワサキラインアップの頂点に相応しい存在へ駆け上ったことは間違いないところ。

カワサキZ1

「打倒ホンダドリームCB750 Four!」を目指し、カワサキが持てる力を全集中して開発した「900 Super4(愛称:Z1)」。詳細を克明に記したヤングマシン×ForRの記事はコチラ。最高速度は209㎞/h以上となっており、200㎞/hを標榜していた「CB750 Four」を打ち負かして世界最速の座へ! 200㎞/hそこそこだったバイクの最高速は技術の進歩と相まって、ここから二次曲線的に向上してまいります

 

 

以降、世界を驚かせた川崎重工製DOHC空冷インライン4エンジンは排気量を拡大しつつ、トップパフォーマーの称号を欲しいままにしていきました。

GPZ1100

●1983年に登場した「GPz1100」は空冷Zシリーズの集大成的モデルで翌年リリースされた初代Ninjaこと「GPZ900R」を上回る120馬力を発揮! 燃料供給も先進のインジェクションシステムDFIを採用しており、1985年まで「GPZ900R」と併売されました。いやもう当欄で何回も書いてますが、このハーフカウルから流れるようなスタイリングは不肖オガワの大好物。写真を眺めているだけでゴハン何十杯だってお代わりできます!?

 

 

時代が変わり1984年の「GPZ900R」から水冷エンジンへの大革新を遂げた際にも世界最速の座は堅持(この初代ニンジャから「ZZR1100」への移り変わりについては以前筆者が書いた記事であるコチラをご覧ください)。

GPZ900R透視図

●1980年代前半といえば秒針分歩でバイクテクノロジーが進化していたころ……。カワサキのマジックナンバー900を引っさげ115馬力の水冷エンジンを搭載して生まれた初代Ninjaこと「GPZ900R」は、まさに世界最先端技術の集合体でした。風洞実験を繰り返して磨き込まれたフルカウルデザインは空冷「GPz1100」の最高速度240㎞/h超を凌駕する250㎞/h超を目標に開発され、その甲斐あってか「GPz1100」より5馬力少ない最高出力ながら、「GPZ900R」は実測データでも246.8㎞/hを記録しました!

 

 

そして1990年、時代の象徴かつ金字塔でもあるZZR1100が出た!

 

いやもう本当の話、1990年デビューの「ZZR1100(C型)」が獲得していた完成度の高さは特筆モノでしたね~。

ZZR1100赤

●1990年型カワサキ「ZZR1100(C型)」。ご覧のとおり初代からしばらく車名はロゴも含め「ZZ-R」だったのですけれど、途中からカワサキ公式も「ZZR」と飯田市……いや、言いだしましたので今回の記事内ではすべて「ZZR」と表記しております。そんなことはともかく、まさに風洞が作ったデザインですな

 

 

スロットルをひとひねりすれば免許証が何枚あっても足りない領域へシレッとライダーを誘いつつ、せせこましい日本の峠道でもクルクル曲がって楽しめる卓越した操縦安定性まで確保……。

ZZ-R1100最高速チャレンジ

●八重洲出版モーターサイクリスト 1990年8月号記事より。GoProどころかデジタルカメラすらなかった時代。今は取り壊されて住宅街となった谷田部高速周回路で「ZZR1100」を駆りメーター読み300㎞/h超え(実測値は290.50㎞/h)状態でコースを全開走行中にライダー(宮崎敬一郎氏)は、右手でフルスロットルをかましつつタンクの上に設置したフィルムカメラのシャッターを左手で押す……。冗談抜きに命がけの取材でした

 

 

あんな巨大なクジラみたいなズングリムックリスタイルからは想像もつかない軽快なハンドリングに、モーターサイクリスト誌のアルバイト時代に身銭を切ってレンタルバイクを借り出した不肖オガワは心の底から感動いたしました。

クジラ

●「ZZR1100」のグラマラスで艶やかな巨体に一見さんは近づくだけでビックリすると思うのですけれど、いざまたがって走り出してみれば25mクラスのシロナガスクジラが5mくらいのミンククジラ(図)になるような感覚を味わえるはず(わっかるかな〜? by 松鶴屋千とせ)。バランスに優れたバイクというのは大きさや重さを忘れさせてくれるのです(もちろん物理的な体積と質量は存在しているので無理は禁物(^^ゞ)

 

 

1993年には正常進化を遂げた「ZZR1100(D型)」へモデルチェンジされ人気も上々。

ZZR1100

●写真は8年間も熟成が重ねられ最終モデルとなった2001年型「ZZR1100(D型)」。後述する「Ninja ZX-12R」が2000年デビューですので、しばらく併売されていたのですね。最高速チャレンジは「ZX」に任せてトータルバランスの高さは「ZZR」が引き継ぐ……。こりゃ、なかなかに悩ましい選択肢ですなぁ(実際に煩悶するカワサキファンが多数いたという記憶が残ってます)

 

世界最速の座をサラッと奪われた焦りが大いなる混乱を生んだ!?

 

このままカワサキZZRの覇権が続いていくのか……と思いきや、1999年にまさかのスズキから「GSX1300R ハヤブサ」が登場いたしました。

1999_GSX1300Rハヤブサ

●1999年型スズキ「GSX1300R ハヤブサ」……いやもう広報用ポジフィルムを見た瞬間に「なんじゃあ、こりゃぁ!」ですよ。しかし同時に配布された340㎞/hフルスケールのスピードメーター(目盛りは350㎞/hまであり)写真を見て「あ、こいつはマジもんの本気マシンだ」と直感。実際に欧州バイク誌のテストでは「ZZR」や「CBR」を相手にしない超高性能を披露して一気にメガスポーツ(!?)ジャンルのメインストリームへと躍り出ました

 

 

「追加チューニング不要、市販状態で夢の実測300㎞/hオーバー!」という大台超えインパクトは凄まじく、クジラどころかプレデターのようなエグいデザインもアッという間に脳内補正が掛かって正当化され大ヒットを記録

 

 

同ジャンルにカテゴライズされた「ZZR1100(D型)」並びに少し前(1996年)にデビューしていたホンダ「CBR1100XX スーパーブラックバード」も、欧州バイク誌が企画する最高速チャレンジでは「ハヤブサ」に連戦連敗を喫して面目は丸つぶれ……。

2001_CBR1100XX_JPN

●2001年型ホンダ日本仕様「CBR1100XX」。世界最高のバイクを目指して開発された「CBR1100XX スーパーブラックバード」は実際、「ZZR1100(D型)」には最高速バトルで勝ったものの「ハヤブサ」との同時対決では惜敗。以降のマイチェンではいたずらに最高速アップを狙った改良は行わず、意のままに操れるハイスピードスポーツツアラーとしての完成度を高めていきました。2001年〜2003年には写真の日本仕様も登場。乗りやすかったなぁ〜

 

 

ホンダは早々に「さ……最高速なんてバイク評価の一部に過ぎないんだからねっ!」と土俵を降り、トータル性能をさらに磨き上げる方向で超黒鳥を育種改良していき一定以上の評価と人気を獲得していきました。

ツンデレ女子

ツンデレ……(ちょっと違うか)

 

 

 

駄菓子菓子!

 

 

お家芸である最高速バトルで負けたままではいられないのがカワサキです。

 

 

ラムエア全開! 高回転高出力型エンジンでハヤブサを撃ち落とせ!!

 

翌2000年には打倒「ハヤブサ」のため、エンジンも車体も全てを一新した「Ninja ZX-12R」を市場へ投入!

ZX-12R

●2000年型「Ninja ZX-12R」……ど〜ですか、お客さん! この武骨な荒削り感あふれるスタイリングのド迫力ぶりは〜。ヘッドライト下、走行風をドカスカエアクリーナーボックスへと導入するラムエアダクトはまさに! 砲弾型バックミラーもサイドカウルに取り付けられた整流ウイングも、全ては市販状態で300㎞/hを突破するためのイクイップメント。ビッグバイクにあるまじきビュンビュン回る特性のエンジンやバックボーンタイプのアルミモノコックフレーム採用も当時、大きな話題となりました!

 

 

複数の欧州バイク誌も待ってましたとばかり最高速テストを行ったのですが、なぜか毎回「ハヤブサ」が勝ってしまいなんともスッキリしないモヤモヤが残る結果に……。

負けた……イラスト

●後発となるガチモデルが勝ってくれないと、バイク雑誌屋的にも困りました……

 

 

「ぐぬぬぬぬ、しかしデータは揃った。2001年には必ずやリベンジを果たすゼ~ット!」とカワサキ開発陣は拳を振り上げた(?)ものの大市場である欧州で最高速度の自主規制が導入されたことにより、299㎞/hをもって増速が止まるという笑えない冗談のような速度リミッターが2001年モデルから義務化(こちらは現在でも解禁されていません)され、ハヤブサの勝ち逃げが確定……。

 

 

なおかつ突貫開発したせいなのか「(最初期型の)Ninja ZX-12Rは乗りにくい」という評判が立ってしまい販売的にも苦戦を強いられることになったのです。

2002年型ZX-12R

●2002年型「Ninja ZX-12R」。たった2年での大大大改良! 変更を受けた部分は実に140カ所以上にも及んだそうで、やはり目立つのはモビルアーマーザクレロ顔になったフロントフェイス。ラムエアダクトの形状がカウルとの一体感を増していますね。エンジンはクランクマスを20%増やすとともにインジェクション特性が変更され扱いやすさマシマシに。当然ながらサスセッティングやブレーキフィーリングなどにも細かな調整が加えられました

 

 

何事もうまくいかないときというのは迷走してしまうもの。

 

 

「やはりZZR……。ZZRというブランドしか勝たん!」という一派が社内で勢いを取り戻したのか……どうかは分かりませんが(^^ゞ、2002年には出ないはずだった「ZZR1200」が登場して「Ninja ZX-12R」と併売され始めるというダブルフラッグシップ(!?)時代が到来~。

ZZR1200

●こちらはニセアカレンジャー顔と言うべきか、当時のベンツEクラスもこんな雰囲気の顔だったよなぁ……的な2002年型「ZZR1200」。こちらはまさにエンジンもフレームも「ZZR1100」譲りの正統進化バージョンで、特にエンジンは2001年に登場していた「ZRX1200R」と系列的に一緒なのでコスト面でのメリットも大きかったようです

 

 

このあたりを理解しておくと「Ninja ZX-14R」へ至る道がスッキリ理解できますので、次回は同門フラッグシップ2台は思惑どおり並び立ったのか……?、というところからお話してまいりましょう!

ZX-14R

●長きにわたりフラッグシップとして君臨した「ZZR1100(北米名:Ninja ZX-11)」が、2000年登場の「Ninja ZX-12R」と2002年デビューの「ZZR1200」に別れ、2006年に再び合体?して「ZZR1400(北米名:Ninja ZX-14)」となり、そちらが2012年にモデルチェンジしたとき欧州名の「ZZR1400」は変わらず、北米名が「Ninja ZX-14R(※写真は2025年モデル)」になった……というややこしさ。ゆっくり解説していきますネ

 

 

あ、というわけで大ヒットを記録してきたカワサキフラッグシップモデルは、今なお数多くのモデルが中古車市場を賑わしております。アフターサービスも万全なレッドバロン『5つ星品質』の車両で憧れを現実化してまいりましょう!

 

 

Ninja ZX-14Rという万能旗艦【その2】は今しばらくお待ちください m(_ _)m

 

VMAXという孤高の“魔神”【その10】はコチラ!

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