同じバイクに長く乗っていると、いつの間にか特別な存在になってきます。
一緒にいろいろな場所へ行った。雨の中を走った。旅先で故障した。嬉しかったことも、困ったことも、そのバイクと一緒に経験してきた。
だから「愛車」と呼ぶし、「相棒」と呼ぶこともある。それは、とても素敵なことだと思います。
でも、ときどき思うのです。
バイクはモノであり、道具です。
なんだか夢のない話に聞こえるかもしれません。でも私は、このくらいの距離感でバイクと付き合うのも悪くないと思っています。
人生を彩ってくれる「相棒」なのは間違いない
バイクに乗っていなかったら、行かなかった場所があります。出会わなかった人もいます。
朝早く起きて山へ向かったり、思いつきで知らない道へ入ったり、何百kmも走って「いやあ、今日は走ったなあ」と満足したり。
バイクは単なる移動手段ではありません。
少なくとも、バイクが好きな人にとっては、日常を少し面白くしてくれる存在です。長く所有していれば、それぞれのバイクに思い出や愛着が生まれるのも当然でしょう。
だから「相棒」という言葉も、私は好きです。
ただ、相棒だからといって、人間と同じではありません。
大切な相棒だから……ではなく、道具だからメンテナンスする
バイクは機械です。
乗らなくてもタイヤの空気は減ります。オイルやブレーキフルードなどの油脂類も、永遠にそのままでいいわけではありません。バッテリーも弱りますし、部品は使えば摩耗します。
「俺の相棒はタフだから大丈夫!」
……とは、残念ながらいきません。
だから点検する。必要な消耗品を交換する。不具合があれば修理する。
もちろん、「大好きなバイクだから大切にする」でもいいのです。
でも私は、もう少し現実的に、
安全に使うための道具だから、きちんとメンテナンスする。
くらいに考えてもいいと思っています。
愛情だけでは、バイクは勝手に直らないし、タイヤの溝も増えませんからね。

愛着は持つ。でも、ちょっとだけ冷静に
自分のバイクに愛着を持つことは、とてもいいことです。
洗車をしてピカピカになったバイクを眺めて、「やっぱり格好いいな」と思う。昔撮った写真を見て、「このときは楽しかったな」と思い出す。
私にも、もちろんそういう感覚はあります。
でも、あまりに感情移入しすぎると、ときどきバイクが「人」のようになってしまいます。
「こいつなら分かってくれる」
「こいつなら無理をしても応えてくれる」
そこまでいくと「ちょ、待てよ」と。
バイクを大切に思う気持ちは持ちながら、ときどき「これは機械なんだ」と思い出す。そのくらいの距離感が、ちょうどいいのではないでしょうか。
「俺のバイク最高!」は、それでいい
自分のバイクが世界で一番格好いい。
大いに結構です。
というか、自分のお金で買って、自分で乗っているバイクなのだから、それくらい気に入っていたほうが幸せです。
「やっぱり俺のバイク最高だなあ」
そう思いながら眺める。
最高じゃないですか。
ただ、その『最高』で、ほかの人のバイクまで採点しなくてもいいと思います。
「俺のバイクのほうが速い」
「そっちより高い」
「その排気量じゃ物足りないでしょ?」
……なんて話になってくると、せっかくの「俺のバイク最高」が、他人との順位付けになってしまいます。
自分のバイクが最高。そして、隣にいる人にとっては、その人のバイクが最高。
それでいいと思うのです。

その道具を運転しているのは、自分です
そして、ここは忘れたくありません。
どれだけ高性能なバイクでも、どれだけ思い入れのあるバイクでも、それを道路で走らせているのは乗り手です。
アクセルを操作するのも、ブレーキをかけるのも、どこへ向かうかを決めるのも自分。
最近のバイクにはABSやトラクションコントロールをはじめ、ライダーを助けてくれる装備もたくさんあります。それでも、バイクに乗ると決めて、操作しているのは自分です。
だから、メンテナンスをする。無理をしない。調子がおかしいと思ったら確認する。そして、自分の技量や体調も含めて判断する。
バイクを「相棒」と呼ぶのは自由です。けれども、安全に走れるかどうかを判断するのは、自分自身です。
まあ、あんまり難しく考えなくてもいいんですけどね
ここまで書いてきてなんですが、
「バイクとは何か」
「人と機械の関係とは」
「愛車への感情移入とは」
……なんて考え始めると、だんだん哲学者みたいになってきます。
そこまで難しく考えなくてもいいのでしょう。
バイクはモノです。道具です。
でも、その道具に乗ることで、とんでもなく楽しい時間を過ごせる。だったら、きちんと手入れをする。安全に使う。そして、自分のバイクを存分に好きでいる。
「俺のバイク、やっぱり最高!」
そう思いながら走るのは、きっと幸せなことなのです。
自分もバイクも正しくメンテナンスをして「長く」乗り続けましょう!
(おしまい)

