今では全国各地どこに出かけても、国道沿いで目につく大型飲食店といえば、有名なチェーン店のファミレスやラーメン店。それもいいんですけど、せっかく自宅から遠く離れた場所に来たんですから、いつもの知ってる味とは違う、「はじめまして」な食事を楽しみたいとも思うのです。なので昔からやってたっぽい個人経営のドライブインなんかを発見すると、心ときめいたりするのです。

昔懐かしドライブイン

レッドバロン須賀川

▲「レッドバロン須賀川」福島県須賀川市森宿字ヒジリ田54-24/水曜休(祝日の場合は営業)

 先日、『R★B』マガジンの取材をするため、福島県須賀川市にある「レッドバロン須賀川」を訪ねました。免許取りたての若い女性ライダーが、CB400SFのファイナルエディションに乗っていると聞き、それはちょっとおもしろそうだからお話をうかがおうということで。
 記事は2023年9月に発行される『R★B』Vol.48に載せますので、詳細はそちらで読んでいただくとして、今回は取材時に見つけた、ドライブインの話をいたします。

 ドライブインの場所は国道4号線沿い、「レッドバロン須賀川」の斜め向かい。筆者の視界に入ってきたのはこんな光景。

ドライブイン

 昭和の時代から営まれてきたであろう、風情あるドライブイン。バイクはもちろん大型トラックも余裕で駐められる、広々した駐車場。そして立て看板にデカデカと記されている「特製もつラーメン」の文字。
 この光景に気持ちが引き寄せられないライダーって、いるんでしょうか?

 

ドライブインかなざわ

▲取材が終わったのでカメラマンと入店。バンディット1250Fはバイク便みたいになっていますが、巨大なBOX内には撮影機材がぎっしり詰まっているのです

 前から気になってはいたのです。過去4年のあいだに、「レッドバロン須賀川」には取材で3回は訪ねていまして、ここを通るたびに「いい雰囲気だなあ、入ってみたいなあ」とハートを鷲づかみにされていたのです。
 しかも、いつも駐車場にはバイクが複数台、駐められていました。やっぱりライダーは好きなんでしょう、こういう店が。
 だって、ファミレスより断然、入りやすいですからね。

ドライブインかなざわ

▲店の入り口には「お食事処かなざわ」、外の灰皿の横には「コーヒーとお食事かなざわ」とありますが、正式な店名は「ドライブインかなざわ」です

 例えば、若い家族連れやカップルが談笑している、ファミレスの洒落た店内。
 ごついライディングジャケットをまとって、ヘルメット片手に入っていくのは、どうも場違いのような……。そう感じたりしたことはありません?
 けれどもドライブインは違います。もっと気軽に入ることができる。店内にいるのは配送の運転手やタクシードライバー、お腹を空かせたガテン系など、路上や野外で汗する人たち。ライダーからしてみれば親近感がわくのです。
 お店の人も、道ゆくライダーにはとてもフレンドリー。気温の高いお昼過ぎ、汗を拭きふきヘルメット片手に入店すれば、気さくな女将さんが「暑かったでしょう、この席がいいわよ。エアコンから一番近いから」なんて言いながら奥のテーブルに案内してくれたりします。
 まあ何事も例外はあるにせよ、ドライブインに対する筆者の印象や経験としては、そんなところです。

いざ、店内へ

ドライブインかなざわ

 実際、この日もそうでした。須賀川のこの日の最高気温は31度もあり、筆者もカメラマンも汗だらけ。すると「ドライブインかなざわ」の女将さんは、店に入ってきた僕らにこうおっしゃった。
「暑かったでしょう、この席がいいわよ。エアコンから……」
 奥にあった4人掛けのテーブルに案内される、汗まみれのライダーふたり。椅子の背もたれにメッシュジャケットを引っかけ、ひと息ついて店内を見渡せば、いかにも庶民的な空気感。これぞドライブイン。

ドライブインかなざわ

 振りむいた壁にはサイン色紙。こういう店に、まいうー石ちゃんの色紙がないのは珍しい。その他、目についたのはジブリ作品?

ドライブインかなざわ

 テーブルの横の棚にはジブリ映画『紅の豚』関連のグッズも飾られていました。これもお店の個性、チェーン店にはない味わい。

ドライブインかなざわ

 とりあえずメニューなんか手にしてみるものの、すでに気持ちは駐車場に入った時点で固まっています。コップの水を一気飲みして席を立ち、冷水器におかわりをもらいに行くついでに女将さんに注文。
「もつラーメンふたつ」「はいよー、ニンニクは?」「アリでお願いします!」
 暑い日に、エアコンの冷風を浴びながら、もつラーメン。最高じゃないですか。一味唐辛子もガンガン振っちゃうぜ。

特製もつラーメン、一心不乱

 待つことしばし。厨房から運ばれてきたのは、これ。

もつラーメン

 煎りゴマがびっしりと振られたスープの中央に、炒められたキャベツ、もやし、玉ねぎ、もつ。赤い糸唐辛子が食欲をそそります。
「よく混ぜて食べてくださいねー」と店員さん。
「はーい」と素直に返事をしつつも、そんな気はこれっぽっちもない筆者。
 まずは混ぜる前のスープを堪能。ああ、混ぜる前だから味噌とはいえスッキリ。これは混ぜたらどう変化するのか。

もつラーメン

 スープを口に含みながら咀嚼すれば、ゴマがプチっと弾けて香ばしい。
 では、麺はどうか。箸で探ると、思いのほか重い(シャレではなくて)。

もつラーメン

 けっこうな太麺で、ちぢれ具合も相当なもの。噛めばモッチリしていて、歯応え充分。
 ここまで確認してようやくラーメンを混ぜ混ぜ。箸とレンゲで撹拌すれば、立ち昇るニンニクのパンチある香り! スープのコクも急上昇です。来た来たーっ、これよこれ、「もつラーメン」に期待していたのは。これ頼んでよかったー!

もつラーメン

 スープ、麺、炒め野菜、もつ。一心不乱。嗅ぐ、飲む、すする、むさぼり食う。無我夢中。ラーメンどんぶりとまっすぐに向き合い、ただひたすら。
 なんだけど、ときどき漬物。

もつラーメン

 ラーメンなのに、漬物が付いてくる。こういうお店、大好きです。熱くてコクのあるラーメンスープと、冷たくて清涼感のある漬物は、お互いを引き立てあって、うまさ倍増。ライスも頼んじゃおうか? という気にさせます。

 プハァ、完食。これはリピート確実。
 会計時、女将さんに「うまかったです。この店、ライダーのお客さん多いですよね」と声をかけると、「そうなのよ。だったら店内に飾っちゃおうかなあって思ってるのがあるの。この写真、見て」
 ライダーの客が多いから、飾りたいもの? いったい何でしょう。
 いたずらっ子みたいな笑顔を見せながら、棚からアルバムを取り出した女将さん。手渡された写真には、2台の古いバイクが写っていました。
 それは室内保管された状態の、ダブワンと陸王。
「兄が大事に保管していたのよ、このバイクはね……」
 プライバシーにかかわるので、ここで詳しくは述べませんが、そんなやりとりをしてから店を出ました。

 その店ならではの、個性的なメニュー。そしてマニュアル化されたファミレスでは味わえない、人と人とのふれあい。
 ドライブインや大衆食堂って、いいですよね。
 これもツーリングの楽しみです。

 

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