ダブワンで川の上流を目指す

こんにちは、青木タカオです。前回、寄稿させていただきました「もしかして本当にレースクイーン!? 思わず聞いてしまったハーレー女子の素顔」が、こちらForRでのコラム&エッセイランキングTOPのようで、とても嬉しく思っております。

やはり、こうして反響をいただけることが、ボクにとって何よりの励みです。読んでくださった方に楽しんでいただけたことを実感できるのは、書き手として大きな喜びでもあります。

筆者(青木タカオ)の愛車、カワサキW1SA/1971年式

▲筆者(青木タカオ)の愛車、カワサキW1SA/1971年式。

さて、久しぶりにまたダブワンで出かけました。ここではお馴染み、ボクの愛車のうちの1台、カワサキW1SA(1971年式)です。

ダブワンで走るときは、行く先を決めないまま、あてもなくウロウロするのが好きだと、これまで書いてきました。ところが今回は「渡良瀬遊水地を目指す!」と、出発前から行き先を決めていました。

というのも、大学生の頃に地理学科に在籍し、河川学が特に好きだったボクは、今なお治水にとても興味があります。

かつて水害の多かった東京の下町低地、東京都葛飾区で生まれ育ったというのもあるのでしょう。川に挟まれた環境にいたせいか、子どもの頃から、身近にある江戸川や中川、荒川の上流や下流はどうなっているのか見てみたくて、自転車でひたすら走ってみたり、海まで下って満足したりしてきました。

最近は水害のニュースが絶えません。そんななか、水害リスクが高いとされる東京の下町低地では、さまざまな治水対策が講じられてきました。

荒川と隅田川の分岐点にある岩淵水門をはじめ、数多くの水門や、通称「地下神殿」と呼ばれる世界最大級の地下放水路、首都圏外郭放水路、さらには神田川・環状七号線地下調節池など、さまざまな施設が水害から街を守る役割を担っています。

そして、関東平野のほぼ中央に位置し、治水において大きな役割を果たしているのが、渡良瀬遊水地です。

東京から約60km圏に位置し、栃木、群馬、埼玉、茨城の4県にまたがる日本最大級の遊水地。外周距離は約30km、面積は約3300ヘクタール、洪水調節容量は約17,680万立方メートルにも及びます。

子どもの頃のように、川をまた遡って渡良瀬遊水地へ。そう思い立ち、ワクワクしながらダブワンのキックペダルを踏み下ろしたのでした。

大凧としんちゃんがお出迎え

道の駅 庄和

▲国道4号バイパス沿いにある道の駅 庄和。

東京は2026年8月27日〜10月2日までの37日間(9月の全日程で雨を観測)し、1886年の統計開始以来の最長記録を更新しましたが、この日の空は晴れ渡り、清々しい気分。

子どもの頃からずっと続けてきた、川をさかのぼるプチ冒険。今回もまた江戸川沿いを北上します。

途中、トイレに行きたくなったので、国道4号バイパスにシフトし、道の駅 庄和(埼玉県春日部市上柳)にてストップ。春日部の伝統文化である、大凧のディスプレイが目をひきます。

道の駅 庄和 小凧

▲春日部市庄和町は、大凧で有名なところ。道の駅 庄和に展示されている凧は、縦6メートル×横6メートル、重さ150キログラム。これだけでもかなりの迫力ですが、驚くことに実はこれ「小凧」なんだとか。

春日部といえば、国民的アニメ『クレヨンしんちゃん』の舞台であり、モニュメントやパネルが設置されています。

道の駅 庄和には、何度か立ち寄ったことがあるはずですが、ツバメのコスプレ(着ぐるみ)をした主人公・野原しんのすけのモニュメントを見るのは初めて。ツバメが集まる道の駅ということで設置されたそうで、2025年11月下旬にお目見えしたばかり。なるほど、どうりで見覚えがないわけです。

道の駅 庄和 ツバメの着ぐるみを着たしんちゃん ツバメしんちゃん

▲道の駅 庄和では毎年ツバメが巣をつくり、訪れる人たちに親しまれているそうです。そこで設置されたのが、ツバメを題材にしたしんちゃんのモニュメント。ツバメの着ぐるみを着たしんちゃんが、ちょこんと立っています。

『食彩館』というフードコートもありましたが、平日でまだ朝が早かったので、営業がスタートしていません。

道の駅 庄和の食彩館

▲今回はまだ営業時間前でしたが、次に訪れたときは、ぜひ食事もしてみたい道の駅 庄和の食彩館。

えっ、ここにも!? クマ出没注意

渡良瀬遊水地

▲水鳥や多くの動植物が息づく、豊かな自然環境が広がる渡良瀬遊水地。

再び走り出すと、一気に渡良瀬遊水地へ。3年前(川魚料理が名物の宿場町からダブワンで日本一大きなハート渡良瀬遊水地へ! )は、風情ある旧城下町の街並みに誘われて、茨城県古河市を散策した後、日が暮れる頃に「道の駅 かぞわたらせ」に到着しましたが、最初から渡良瀬遊水地を目的地に定めた今回は、北エントランスと呼ばれるところから入って、もっと奥深く入っていきます。

渡良瀬遊水地

▲渡良瀬遊水地内にはクルマやバイクが走れる道があります。

東京ドーム約700個分の広大な遊水地には、北海道みたいな長い直線もあれば、川沿いにゆったり流せるルートもあって、どこも絶景だらけ。

その模様はツーリングマガジン『アウトライダー』の編集長として全国を取材し、旅してきた菅生雅文さんの記事 「北海道気分が味わえる?」ほどの広大な景色が北関東にあった! 日本最大の遊水地【渡良瀬遊水地】で、詳しく見ることができますので、ぜひそちらもどうぞ。

全国各地でクマの目撃や市街地への出没が相次いでいます。秋は冬眠前で活動が活発になる時期だけに特に注意が必要。なんと、ここ渡良瀬遊水地でもクマが目撃されているようです。

クマの出没に注意! 渡良瀬遊水地

▲途中、「クマの出没に注意!」の看板がありました。

見渡せばわかる治水のスケール

渡良瀬遊水地ウォッチングタワー

▲渡良瀬遊水地ウォッチングタワー

全体を見渡せる渡良瀬遊水地ウォッチングタワーへ。高さ15.7メートルの塔を登ると、360度の雄大な景色を見渡せます。

広大なヨシ原が一面に広がり、筑波山、富士山、日光連山、浅間山、赤城山、大平山など、遠くの山々まで見渡せます。

屋上には大型双眼鏡が3方向にあり、100円を入れて見ようとしたら、無料ではありませんか!ありがたいと思いつつ、クマがどこかにいないか、双眼鏡をのぞいてチェックします。

さらに説明ボードもあり、これがなかなか興味深い。時間を忘れて、すべて読んでしまいました。そこには、渡良瀬遊水地がどのようにして現在の姿になったのか、その歴史や治水、生態系について詳しく紹介されていました。

渡良瀬遊水地周辺はもともと、渡良瀬川、巴波川、思川の流末が錯綜する低湿地で、遊水地が完成した後も、周辺地域は大きな洪水被害に見舞われていました。

そこで、遊水地をより効率的に活用するため、1963年(昭和38年)から調節池化事業が行われました。その結果、遊水地の中には3つの洪水調節施設が整備されています。

昭和に入ると、増大する水需要に対処するため、遊水地内に貯水池をつくる計画も策定されました。

その計画予定地には、遊水地の建設によって廃村となった谷中村の跡地がありました。地域の要望もあり、役場跡や雷電神社跡など、当時の面影が現在も残されています。

渡良瀬遊水地にあるハートの形をした池が、渡良瀬貯水池(谷中湖)です。首都圏が水不足になった際には、利根川上流のダム群との連携によって生活用水を補給したり、河川に流れる水量を適切に調整したりする役割を担っています。

また、良質な水を供給するため、自生するヨシを活用した水質改善対策も行われています。

渡良瀬遊水地の面積は約3300ヘクタール。東京都内を走る山手線内の南半分、中央線以南の面積にも匹敵する広さです。

渡良瀬遊水地が大きく水を蓄えた主な事例として、平成27年(2015年)9月の関東・東北豪雨や、令和4年(2022年)9月の台風など、大規模な出水時が挙げられます。平成27年(2015年)9月9日の台風18号による洪水時の水位も示されていました。

湿地は自然がつくる巨大な防災施設

第一調整池には普段から水がありますが、第二調整池、第三調整池は湿原や草原となっていて、一帯は希少な動植物のすみかになっています。

2012年には、ラムサール条約湿地にも登録されました。ラムサール条約の正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。国境を越えて行き来する水鳥のほか、多様な生物の生態系にとって重要な湿地を、国際的に協力して保全していこうという取り組みです。

渡良瀬遊水地は、本州以南最大の湿地に絶滅危惧種183種を含む多くの動植物が生息・生育する、生命の“ゆりかご”でもあります。

ラムサール条約における“湿地”の定義は、「常時あるいは季節的に、水をたっぷりと含む土地、あるいは水に覆われる土地」です。

湿地は、ときに不毛の地とされてきましたが、決してそんなことはありません。温室効果ガスである二酸化炭素を吸収し、炭素を蓄積することで気候を調整するほか、水質の浄化や水量の調整にも役立っています。

さらに、多種多様な生物が生育する環境であり、多くの生き物にとって食料を得る場にもなっています。

湿地は、天然のスポンジのようなもの。地表水や雨水を吸収する機能があります。大雨などで流れ込んだ水を一時的に溜め込み、時間をかけて放出することで、洪水を防ぐ役割も果たしているのです。

そんな湿地ですが、近代化とともに急速に減少していきました。ラムサール条約事務局が発表した報告書によると、1970~2015年の約半世紀で、世界の湿地面積の約35%が消滅したとのこと。日本でも、多くの湿地が工業地帯や宅地などに姿を変えました。

日本では、明治・大正時代には約2110平方キロメートルあった湿地が、現在では約800平方キロメートルにまで減少。失われた湿地の面積は、琵琶湖2つ分にもなるそうです。

こうして見てくると、渡良瀬遊水地が洪水から人々の暮らしを守るだけでなく、貴重な湿地として多くの生き物を育んでいることがよくわかります。また、水辺の美しい景色は、人の心も癒してくれます。

あの頃の好奇心は今も続いている

東武鉄道新古河駅

▲東武鉄道新古河駅

ボクは鉄道、そして駅が好き。帰る前には、東武鉄道の新古河駅にも立ち寄ってみました。なぜなのか、言葉で説明するのは難しいのですが、知らないところへ行くと、なぜか駅を訪れたくなります。

というわけで、今回は大満足の渡良瀬遊水地ツーリングとなりました。ダブワンでただ走って帰ってくるだけでも、ボクにとっては十分に楽しい。でも今回は、広大な遊水地をあちこち走り回り、気になる場所を見つけては足を止めました。

子どもの頃、自転車で川を遡りながら「この川はどこから来ているんだろう?」と考えた、その頃の好奇心が大人になった今も続いています。

乗り物が自転車からオートバイに変わっただけで、やっていることはあの頃と変わっていません。そんなことを思いながら走った、楽しい1日でした。今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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