2021年10月3日(日)、静岡県伊豆市のテーマパーク「修善寺虹の郷」で「虹の郷 電動バイク・ミーティング」が開催された。このミーティングには、25社55台もの電動モビリティが参加し、かつてないほどの規模で、EV実証実験、試乗会、ツーリングなどが行われた。

地域の課外活動クラブ「原動機研究部」が主催

このミーティングは、地域の課外活動クラブである「原動機研究部」(以降、原研)が主催している。原研に所属するのは10~20代の社会人や現役高校生ら22人。修善寺虹の郷の広大な園内で、来園者が快適に園内散策を楽しめるように電動モビリティを選定して導入すべく、原研が率先して協力し、開催にこぎつけたものだ。

現役高校生の西形知夏さん(上写真・左から2人目)は県立沼津工業高校都市環境工学科の3年生。修善寺・虹の郷に電動モビリティが導入されることについて「温暖化や地球環境のことを考えられて良いことだと思います。学校で環境工学について勉強しているので、今回のイベントを開催できて良かったと思います」と語ってくれた。

当日は、伊豆市の菊地豊市長をはじめ市議会議員や静岡県議会議員も来場。彼らは地域住民や観光客の移動に関する課題について検証すべく、自らが電動モビリティに乗車し各種イベントにも積極的に参加していた。左から伊豆市の菊地豊市長、伊豆市議会の三田忠男議員、小川多美子議員、黒須淳美議員、波多野靖明議員、静岡県議会議員の伊丹雅治議員(三島市選出)

アップダウンの激しい園内を舞台にEV実証実験

さて、イベントのほうは、開会式の後、園内の散策路を利用してのEV実証実験から始まった。虹の郷は修善寺温泉街から達磨山へと向かう県道18号線沿いに位置する。敷地面積はなんと50万平方メートルと東京ディズニーランドとほぼ同じ広さ。しかも、山稜に作られた園内には激しいアップダウンが多く、坂道が苦手な電動モビリティにはかなり厳しい条件となっている。
実証実験に参加したのは、ホンダ「PCXエレクトリック」やゴッチア「GEV600」などいわゆるバイク然としたものをはじめ、グラフィット「GFR-02」などのモーターと足こぎペダルの両方を備えた電動モペッド、折り畳み可能な電動キックボード、さらには、そのどれにも当てはまらないフューチャー「GOGO!」のような3輪タイプまでが同時に園内の散策路を走行した。
園内の地形は、大きな谷を2つの向かい合った尾根で囲んでいるすり鉢状のもので、尾根と谷を結ぶ散策路はもちろんのこと、尾根から尾根に移動する時にもアップダウンがある。坂を上ることは電動モビリティにとって大変なことなので、オーバーヒートによるシステム停止などが心配されたが、全てのモビリティがスタート地点に帰ってくることができた。これには関係者一同、ほっとしたようだ。
午後からは、一般の来場者に向けた試乗会を開催すると共に、達磨山レストハウスを目指したEVツーリングも実施した。試乗会場には、家族連れやカップルが訪れ、電動キックボードなど様々なモビリティの試乗を楽しんでいた。その模様は<後編>にまとめておくので、ぜひ読んでみてほしい。

国内初!? 公道ワインディングでのEVツーリング

さて、EVツーリングの模様を見てみよう。虹の郷自体も山の中腹にあるのだが、達磨山高原レストハウスへはここからさらに県道18号を上っていくことになる。ツーリングライダーも多く訪れるような、けっこうなワインディングロードだ。このツーリングには、2~3輪の電動モビリティが参加した。乗り心地や運動性などのほか、車両各部の耐久テストも兼ねているので、脱落することも想定して引き上げ用の軽トラックも随伴している。

「延々と続く坂道を上れるのか?」「バッテリーはどれくらい持つのか?」といった心配ごとを抱えつつも各車、隊列を組みながらEVツーリングが始まった。

達磨山レストハウスまでは6.5km。ガソリン車なら10分少々で上る距離だが、電動モビリティにとってはけっこう大変なツーリングだ。カタログスペックでの航続距離は、乗り手の体重や道路状況などにより、たいてい6割ほどしか発揮されない。復路は下り坂とは言え、往復13kmを走り切るためには、平たん路を30km近くは走れる能力がないと安心できないのだ。

結果は、1台がシステムに不調を抱えてしまったが、他の参加車両は元気に走り切ることができた。僕はこれまで、ヤングマシン誌等の連載(※)で様々なEVバイクに乗ってきたが、これには少し面をくらった。県道18号線のワインディングを考えれば、正直もっと多くの車両がリタイヤするだろうと思っていたからだ。

※ヤングマシン誌でのEVバイク連載「近藤スパ太郎の 電動バイクに乗っタロウ!

折り返し地点の達磨山高原レストハウスでは、菊地市長自らが富士山が世界遺産となった経緯や周辺の地形の成り立ちなどを説明。バスガイドさんも真っ青の流暢な説明に参加者の喝さいを浴びていた。
今後は、園内でのさらなる耐久テストを経て、導入車種が選定されるという。伊豆市では、虹の郷での運用結果などを踏まえて、主管している他の施設への導入も考えている。ライダーウェルカムな伊豆市が、モビリティ活用の先駆者となってくれれば嬉しい限りだ。

後編はこちら

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