前編に続いて「第11回バイクラブフォーラムin静岡・浜松」の模様をお届けします。前編では、静岡県が地域のバイク関連企業を支援している話などでした。続いては「静岡県における二輪車活用事例」ということで、磐田市と浜松市が登壇しました。

SSTR関連イベントで盛り上げに貢献する磐田市

▲SSTR参加者を太平洋側(日の出側)で歓迎した磐田市


磐田市の取組みとして紹介されたのは、近年活況を呈しているSSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)におけるライダー歓迎イベントについてです。

ところで、磐田市と言えばヤマハ発動機のお膝元ですね。サッカーJリーグチームのジュビロ磐田やJAPAN RUGBY LEAGUE ONEに所属している静岡ブルーレヴズもヤマハが関わるスポーツクラブです。

▲磐田市はヤマハ発動機母体のサッカー・ラグビーチームの本拠地


そんな磐田市は2023年5月20日(土)に「SSTR参加ライダー歓迎イベント」として早朝4~6時(!?)に磐田市渚の交流館でバイク約70名、参加人数約120名というイベントを実施しました。日の出側のスタート地点としてフォトスポットを設置したり参加者に記念品をプレゼンとするなど盛り上げにひと役買ったとのこと。SSTRの盛り上がりってすごいですね!

スズキ、ヤマハ、ホンダの創業地である浜松市

▲浜松はバイクメーカー3社の創業地です


磐田市のお隣の浜松市は、バイクメーカー3社の創業の歴史や、毎年秋に開催されている「バイクのふるさと浜松」の施策と取組みなどについて発表しました。ちなみに、市内をツーリングしていても感じますが、浜松市って全国第2位の面積を誇る大きな政令指定都市で、人口も約79万人に達しているそうです。

浜松市は今でもスズキの本社所在地であるほか、ヤマハとホンダの創業の地でもあります。布を織る機械「織機(しょっき)」の技術はやがて自動車や二輪産業に、製材・木工の技術は楽器産業に向かいました。

▲スズキは1936年に英国車を参考にして軽自動車の試作車を完成させました

 

▲ヤマハは1900年(明治33年)に初の国産ピアノを誕生させました

 

▲ホンダは1947年にポンポンを開発販売。これが浜松のオートバイ製造の始まりでした


スズキ、ヤマハ、ホンダの3社が浜松市から世に出たのは「やらまいか精神」によるものなんでしょうね。「やってみよう」「やってやろうじゃないか」というチャレンジ精神が浜松の企業家の合言葉だったようです。

▲「やらまいか精神」が戦後多くのバイクメーカーを浜松に生み出しました

 

▲浜松の産業の変遷を示したチャート図。戦時中は軍需産業の一角を担いました


戦後は多くのバイクメーカーが浜松を拠点に活動していたようです。丸正自動車製造の「ライラック」とか有名ですよね。一時期は業界第3位のメーカーでした。伊藤正社長はアート商会時代の本田宗一郎さんのお弟子さんとしても知られています。

▲昭和35年頃の浜松のバイクメーカー。その数35社に上ります!

今年は10月14・15日に開催! 「バイクのふるさと浜松」

▲バイクのふるさと浜松は毎年秋に開催されるバイクのお祭りです


そういった浜松のバイクの歴史もひっくるめてバイクの魅力を伝え続けているのが「バイクのふるさと浜松」です。2003年から毎年開催されていて、今年は10月14日(土)・15日(日)に浜松オートレース場で開催されます。MotoGPマシンやヒストリックバイクの展示、トライアルショーや仮面ライダーショー、オートレースの走行路を自分のバイクで走るなんてこともできるそうで盛りだくさんの内容です。ぜひ遊びに行ってはいかがでしょうか。

なお、BLFの翌日には、浜松城のある浜松出世パーク内の葵広場において「ミニ・バイクのふるさと浜松」も開催されました。国内各社のバイクが展示されたほか、ブース出展やステージイベントも盛りだくさんでした。

▲ミニ・バイクのふるささと浜松は浜松城で行われました。大河ドラマ館も見えています

 

▲仮面ライダーショーが開催されたこともあってか親子連れも多かったです

 

▲徳川家康の長男のイメージキャラクター「信康さん」もご満悦です

 

▲JR浜松駅の周辺は高架下や商業施設の中など大型バイクでも駐めやすい環境となっています


そのほか、浜松市はバイク駐車問題の改善についても尽力しています。「浜松市自転車等駐車場条例」を一部改正して、自転車置き場に125ccまで駐めれるようにしたり、大型バイクまで駐めれるようにした所もあります。さすがは“バイクのふるさと”ですね!

「二輪車産業政策ロードマップ2030」の取組状況

▲日本自動車工業会二輪車委員会は二輪車産業政策ロードマップ2030への取組み説明を行いました


さて、バイクラブフォーラム(以降BLF)は、世界に通用する素晴らしいバイク文化の創造を目指し、バイク産業の振興、市場の発展を図ることなどを目的としているのですが、「二輪車産業政策ロードマップ2030」というロードマップを作っていて、4つの大きな政策課題とその課題を改善するための11の施策が明記されています。

<4つの大きな政策課題と11の施策>

1. 事故ゼロの推進
①安全運転啓発・教育 ②安全装備の普及拡大
2. カーボンニュートラル達成への貢献
③カーボンニュートラル達成推進
3. 購入・利用環境の整備と社会・他モビリティーとの共生
④役割・優位性環境整備 ⑤社会基盤の整備 ⑥社会との共生 ⑦利用拡大 ⑧販売店の信頼性向上 ⑨安心な中古車市場
4. 快適・楽しさの訴求
⑩若者、潜在ユーザーへの情報発信 ⑪地方公共団体と連携した取組・仕組み作り

 

▲二輪市場の動向と取組みについてはBLF開催実行委員会が説明しました


毎回BLFでは、そのロードマップの進捗状況や施策での具体的な取組みなんかを紹介しています。いまやバイクはグローバル市場がメインですから、様々な要因に影響を受けやすく、課題や施策も臨機応変に都度刷新しながら進められています。

▲世界全体では約4,800万台で、中でもインドは1,433万台と断トツの販売台数です


国内市場で言えば、ご存知の方も多いと思いますが、コロナ禍においては特別給付金の影響、密にならない移動手段・趣味としての再認識もあって、バイクの免許を取る人もバイクを買う人も増えました。

▲近年、免許取得者数は増えていますが、中でも女性は各年代を通して増えました


SNSなどを活用した個人からの情報発信がムーブメントを起こし、いろんな趣味嗜好の人たちとの相乗効果もあって「第12世代バイクブーム」なんてものも起こっています。昔のようにバイクというモノを中心としたブームではなく、様々なライフスタイルや趣味にバイクを結びつけて楽しむ人たちが増えているんですね。

▲第12世代バイクブームを牽引している要素・取組みを分析

いま最も必要とされているのは安全運転啓発・教育!

▲日本二輪車普及安全協会はグッドライダーミーティングへのビギナー・若年層の参加を推進しています


さて、第12世代バイクブームの中で、せっかくバイクに乗り始めてくれた10~20代、数十年ぶりに再び乗り始めた40~50代のライダーに、これからもバイクに長く乗り続けてもらうためにも、いま最も必要とされているのは安全運転の啓発なんです。

▲日本二輪車普及安全協会はバイクライフのあらゆる場面でライダーをサポートしています


二輪車死亡事故でのヘルメットの離脱率なんて、25年もの間ずっと30%前後で推移しています。BLFメンバーである日本自動車工業会があご紐締結の重要性を伝える動画を作ったり、日本二輪車普及安全協会がさまざまな啓発PR品を作ったりと力を入れています。

▲ヘルメットの離脱率は25年間も変わっていません。あご紐締結義務化の動きもありますよ…


カーボンニュートラルも大事なんですけど、世界に誇れるバイク文化としていくためには、まずもってバイクを安全な乗り物であるという認識に変えていく必要があります。だからこそ、若年層からの交通安全教育に力を入れる必要があるんです。

▲日本自動車工業会二輪車委員会が制作した安全運転啓発動画「梅本まどかと宮城光のセーフティライディング!」はぜひ見てほしい動画です


そうでないと、電動キックボードみたいな新しい乗り物も受け入れられないんですよね。バイクで事故が起きれば「バイクは危ない」、電動キックボードで事故が起きれば「電動キックボードは危ない」、では、クルマで事故が起きたら? ということです。いま「クルマは危ない」って言う人は少ないですよね。様々な安全装備も進化していますし。

最終回となる後編では、まさしくこのバイクの安全運転教育に関するプログラムについて紹介します。お楽しみに!(続く)


 

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