いま人気のあるバイク、評価されているバイクって何? ひとつの目安になるのが「日本バイクオブザイヤー」を受賞したバイクだ。そこで、2021年12月15日に受賞式が行われた「第4回日本バイクオブザイヤー2021(以降、BOTY)」の模様を前後編にわたってお届けしよう。
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日本バイクオブザイヤーとは? COTYとの違いは…
BOTYの歴史はまだ浅く、今年で4回目を迎えたばかりだ。“オブザイヤー”と聞くと「日本カー・オブ・ザ・イヤー(以降、COTY)」を思い出す人も多いだろう。まずは、COTYとの主な違いについて触れておこう。
COTYは1980年から続く歴史あるクルマの賞典で、主に自動車雑誌・WEBなどのメディア(出版社等)が中心となって運営されており、上限60人の選考委員はその大半を自動車・モータージャーナリストが占めている。つまり、普段から雑誌やWEB記事にインプレッション(試乗)記事を書いているような専門家により、対象車両の選考から配点までが行われているのだ。こうした点から、受賞したモデルの販売増につながるといった実績を上げてきている。「COTYで受賞すればクルマが売れる」という構図だ。
一方のBOTYは一般社団法人日本二輪車文化協会が主催するものだ。略称をAMAC(エーマック)と言い、ツーリング推進委員会、文化推進委員会、事業委員会といった構成で、バイク文化の向上や利用環境改善を目的に活動している組織だ。BOTYでのエントリー車両はメーカー(販売会社やインポーター等)からの自薦となっており、選考はWEBによる一般投票と選考委員(政治家など各界著名人)による投票の合計ポイントによって順位(ポイント)が決まる仕組みとなっている。そういう点では、COTYよりも一般ユーザーの意向を反映しており、市場の動きや人気に沿った賞典と言えるだろう。
【BOTY2021 主なスケジュール】
一般WEB投票:5月1日~8月31日
ノミネート(上位5機種集計):9月1日~
選考委員選考(最優秀1&優秀賞2):10月1日~
授賞式:12月15日(水)12:00~
政治家やタレント、中央省庁からも来賓が駆け付ける
政治家、タレント、文化人(上写真は囃子大倉流大鼓方能楽師でバイク愛好家の大倉正之助 氏)、学者等の有識者、さらには中央省庁といったお堅いところからも来賓が駆け付けるというのもBOTYの特徴だ。バイク好きの著名人や国会議員といった方々が選考委員を務めていることも珍しくない。
「TAKEO KIKUCHI」の創始者で、著名なファッションデザイナーの菊池武夫氏(下写真)も選考委員を務めている。昨年、今年は新型コロナ禍ということでビデオメッセージによる参加となった。
こうした背景には、AMAC会長である吉田純一氏が、AJ(全国オートバイ協同組合連合会)会長時代から築き上げてきたロビー活動等があるだろう。国会議員であれば、いわゆるオートバイ議連に参加している政治家であり、氏の人脈によるところが大きいと思われる。各界の著名人や文化人にもバイク乗りやバイク好きは多く、そうした人がしっかり関わることで、バイク文化への関心や理解を広く一般に深めていくことも狙いだろう。
●衆議院議員 自由民主党オートバイ議員連盟 会長 逢沢一郎 氏
「世界の二輪車文化を日本がリードしてきたという誇りを持って新時代に望んでいきたい。来年の4月から(11月まで)土日・祝日については、ETC搭載車は高速道路の通行料金が普通車の半額になるということが正式に決定した。ツーリングを楽しむ方には大きな朗報であり、一年中これを常態化していくための第一歩となる。
女性ライダーがツーリングや移動手段としてバイクを気持ちよく使える環境の整備、都市部の駐車問題といった身近なテーマにも向き合い、政治の現場で環境整備に取り組みたい。(要約)」
●日本二輪車文化協会(AMAC) 会長 吉田純一 氏
「バイク文化がきちっと日本に根付いてるかというと私は決してそうは思わない。バイクは災害に強く、震災でも大活躍して取り上げられたのも記憶に新しいところだが、文化として根付くことを目指したい。バイクは、乗る人、乗らない人に関わらず認知され、注目されるものであってほしい。
新型コロナ禍ではバイクがブームとなり、新車が足りなく、中古車の値上がりも続いている、自動車教習所もいっぱいで中々卒業できないと言われているが、そうした中でBOTYが開かれるということは望外の幸せ。省エネ、省スペース、低公害、さらには集中力が増して脳や心の健康にも良いとされている、この楽しく素晴らしいバイクが、もっと世の中に認められるように、みんなで考えていきたい。(要約)」
電動部門が新設! ノミネート車両は?
各賞の部門は、原付部門、軽二輪部門、小型二輪部門、外国車部門と分けられており、今年からは電動部門も加わった。投票期間を経て各部門ごとに5機種が絞られ、ノミネート車両となったのは以下の25台だ。
【ノミネート車両】各部門5機種・全25台
□原付部門:ホンダ グロム、ホンダ PCX、ヤマハ TRICITY125/ABS、スズキ GSX-R125 ABS、スズキ GSX-S125 ABS
□軽二輪部門:ホンダ CRF250L、ヤマハ SEROW250 FINAL EDITION、スズキ ジクサーSF250、スズキ V-Strom250 ABS、カワサキ Ninja ZX-25R
□小型二輪部門:ホンダ GB350、ホンダ Rebel 1100、ヤマハ SR400 Final Edition Limited、スズキ Hayabusa、カワサキ Ninja ZX-10R
□外国車部門:ビモータ TESI H2、ドゥカティ モンスター、ドゥカティ スーパースポーツ、KTM 890 DUKE、ハーレーダビッドソン Pan America 1250 Special
□電動部門:ホンダ PCX e:HEV、ホンダ ジャイロ e:、ヤマハ E-Vino、ツバメ・イータイム BIZMO II-S、ハスクバーナモーターサイクルズ EE 5
なお、これまでの「日本バイクオブザイヤー」受賞モデルは以下となっている。
●第1回 日本バイクオブザイヤー2018 カワサキ Z900RS
●第2回 日本バイクオブザイヤー2019 ホンダ SuperCub C125
●第3回 日本バイクオブザイヤー2020 ホンダ CT125(ハンターカブ)
さあ、今年の受賞モデルは?
もったいぶらずに、全部門を通して今年最も得票数の多かった大賞から紹介していこう!
大賞は、甦ったニーハン4気筒「カワサキ Ninja ZX-25R」
栄えある大賞は、カワサキが放った令和のニーハン4気筒「カワサキ Ninja ZX-25R」が受賞した。12,507ポイントと全ての部門の中で最も多くの得票を獲得したことになる。
●カワサキモータース株式会社 技術本部第一設計部第一課基幹職
山本哲路 氏(Ninja ZX-25R 開発リーダー)※写真右
「現代の4気筒250ccモデルとしてカワサキらしいFun to Ride、Ease of Riding、これらを追求して開発しました。昨年は販売直後に関わらず部門賞をいただき、期待値の高さを感じていました。今年はたくさんの方々に体感いただき、その期待に応えることができたのではないかと思います。その結果として大賞をいただくことができ、開発者として嬉しく思っております。今後もワクワクするようなモデルを開発したいと思います。(要約)」
●カワサキモータース株式会社 技術本部第一実験部第一課基幹職
有馬一樹 氏(Ninja ZX-25R テストリーダー)
「開発にあたっては、高回転まで気持ちよく吹けきり最高速を発揮するエンジン、ワールドスーパーバイクの設計思想を取り入れた車体、大型モデルにも引けをとらない電子制御、これらを高い次元でバランスさせた上で、250ccクラスに求められるとっつきやすさ、フレンドリーさも大事にして開発したモデルです。多くのライダーに共感、支持をいただき嬉しいですし開発者冥利につきます。(要約)」
前編では、BOTYについて、そして最も栄誉ある賞である大賞受賞モデルについて紹介した。後編では、各部門ごとの受賞モデルについて紹介する。
(後編に続く)