バイカーズ議員連盟の総会が開催された

318日、衆議院第1議員会館で開催されたバイカーズ議員連盟総会の模様を紹介する。バイカーズ議連とは、バイクに乗っている、乗っていた、バイク免許を持っている国会議員(秘書でも参加可)からなる議員連盟(議連)で、20213月に設立されて現在まで活動が継続されている。

▲冒頭、会長の大岡敏孝衆議院議員から挨拶が行われた。「仲間をしっかり増やして超党派でいろんな声を聞いて政策に反映させたい」

 

国会議員が参加! オートバイ議員連盟とは?

バイクに関連する議員連盟は国会内に複数あって、与党では自民党オートバイ議員連盟と公明党オートバイ議員懇話会、野党では日本維新の会オートバイ議員連盟がある。また、過去には民主党や民進党にも同様の議連があった。

新基準原付に関する要望もこうした場で二輪業界から政治家に対して行われ、各省庁が持ち帰って検討・調整し改正・新設に至っている(自民党オートバイ議員連盟・2023年)

 

議員連盟とは、国会で討議すべき内容を持った何らかの目的のために結成する会のことで、国内の産業や市場、国民の生活に関わる政策に関して数多くあり、そうした場で勉強会なども行われ、各省庁との意見交換も行われている。バイカーズ議連もそうなのだが、党内議連だけでなく党の垣根を取っ払って超党派で結成されているものも多い。

▲国民に対して公平であるべき国会議員が二輪業界・市場の改善や規制緩和に対して尽力してくれるのも、自動車産業の中で二輪車が重要なポジションを占めるから(公明党オートバイ議員懇話会・2023年)

 

議連の数がどれくらいあるのか、細かく存在しているのかは、政治の中枢である国会で、その業界・市場がどれくらいの力を持っているのか、重視されているのかの判断材料でもある。

話題の中心は新基準原付の運用について

▲モーターサイクルショーで公開されたホンダの新基準原付「スーパーカブ110・Liteコンセプト」。排ガス規制は11月からだが、現行の原付一種モデルは10月まで生産させるようだ

 

さて、今回の総会は、参加議員が担当省庁の担当者から説明を受け(ヒアリング)、その後に議員が質問をするという流れで進んだ。議論の中心は41日から施行された“新基準原付”についてであり、そのほか同じく41日から始まる2025ツーリングプラン(※2025二輪車定率割引45日から)と高速料金問題、駐車問題、さらにはリターンライダー向けの運転講習も議題となった。

なお、前編では新基準原付に関する議論について紹介する。

最高出力を4kW以下に抑えて運用“新基準原付”

ガソリン原付一種の触媒装置(キャタライザー)では排ガス規制をクリアできないため、二輪業界・市場における代替モビリティとして、総排気量125cc以下バイクの最高出力をガソリン原付一種と同等の4kW以下に抑えて、原付一種のルールを用いて運用されるのが新基準原付だ。

新基準原付運用における関係省庁としては、新基準原付の新設(区分変更)に関わる警察庁(道路交通法担当)、国土交通省(道路運送車両法担当)、経済産業省(とりまとめ担当)などがある。

警察庁からの説明「有識者会議や実験を実施」

警察庁は、所管する道路交通法の施行規則改正を行い、41日から施行することを説明した。エンジンの排気量自体が大きくなっても出力を抑えて現在のガソリン原付一種と挙動が変わらないものについては原付免許で運転できないかという観点で検討を行い、有識者による議論やモニターによる比較試乗実験などを通して「そんなに挙動が変わらない」ということを確認しての制度改正となった。今後の課題は新基準原付に関する広報活動とのこと。

▲警察庁 交通局運転免許課課長の井澤和生さん

 

国土交通省 物流・自動車局からの説明「改正点は3つ」

続いて、道路運送車両法を所管し車両の保安基準を定めている国土交通省が説明を行った。こちらも施行規則の改正となっており、公布・施行は昨年の11月13日に行われ、改正内容は次の3点だった。

① 二輪の原動機付自転車のうち「総排気量が0.05Lを超え0.125L以下であり、かつ、最高出力が4.0kW以下のもの」を第一種原動機付自転車に新たに追加する

② ①の新たな第一種原動機付自転車については、型式認定において、その原動機に総排気量に加え最高出力も表示させる

③ ①の新たな第一種原動機付自転車の原動機付自転車用原動機については、型式認定において、その原動機に総排気量に加え最高出力も表示させる

①は最も重要な車両区分の定義であり、②と③はその実効性を高めるためのものとなっている。

▲国土交通省 物流・自動車局車両基準・国際課安全基準室長の猶野 喬さん

新基準原付の駐車場対応について

さらに、新基準原付の駐車場対応について国土交通省都市局から説明があった。地方公共団体が設置する自転車等駐車場の利用対象車両は、条例においてその大半(政令市・特別区だと84.6%)が道路交通法に基づく規定で運用されているが、現在、原付一種を受け入れている自転車等駐車場は道路交通法・道路運送車両法の改正に伴って、新基準原付も駐車可能になるということだ。

とは言え、125ccの車格は50ccよりもわずかながらも大きいので、物理的に駐車枠に収まらない、はみ出てしまうということもありえる。よって都市局は、昨年1113日の道路交通法規則交付と同時に、地方公共団体に対して以下の内容を技術的助言として通知した

①原付一種を受け入れている自転車等駐車場で新基準原付も受け入れられるように規約と運用を確認

②自転車等駐車場と自動車駐車場への柔軟な受け入れ(過去の通知内容の徹底)

③車両区分・規格の見直しや車両を受け入れるための改良

国交省としては、地方公共団体に対して新基準原付を受け入れられるよう柔軟な対応を求めており、一部では駐車枠の車線を引き直す取り組みを始めたところもあることを伝えた。

▲国土交通省 都市局課長の青柳 太さん

 

参加議員からは様々な質問が飛んだ

なお、参加議員からは新基準原付にとどまらず、原付に関わる様々な質問や意見が飛んだ。議連の議員も二輪車の専門家というわけではないので、いちライダーとして、利用者として、免許保有者として忌憚のない意見が寄せられていた。※答は担当者からの回答

質:二段階右折の恐怖には耐えられない。これは実際にやってみないとわからない。事故状況・データも今後提出いただきたい
答:原付一種はもともとパワーを抑えた手軽な乗り物であり、新基準原付は原付一種と同じルール(30km/h制限・二段階右折・二人乗り不可等)なので免許は原付と同じとなっている。データについては確認して今後説明させて頂きたい(警察庁)

質:新基準原付にはパワーリミッターはつくのか?
答:パワーリミッターで4kW以上出ないこと、不正改造防止対策をしておくことが条件になっており、そこをいじれない基準などを作っている(国交省)

質:特定原付の電動キックボードにはヘルメットを義務化したほうがよいのでは?
答:安全のために装着したほうがよいことは事実だと思う。特定原付業界と連携して基本的には装着を推奨している(警察庁)

質:学科(プラス講習3時間)だけで取得できる原付免許のあり方を見直すべきでは?
答:学科試験合格後に一定の講習は受けてもらっている。通常の二輪車よりは簡易に取れる免許の枠を残してほしいという声があるというのは聞いている(警察庁)

▲実家は茨城で教習所を営んでいるという中村勇太(はやと)衆議院議員は、本業も教習所の教官。「意外と事故が多いのが原付。小さなタイヤもマンホールなどでの転倒の要因になっている」と指摘した

 

想定外ではあったが、新基準原付の施行により、あらためて原付一種の二段階右折の危険性について焦点が当たった議論となった。後編では、高速料金と車種区分分離の問題、駐車場問題、リターンライダーの事故増問題に関する議論について紹介する。

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