あらゆる産業メーカーがこぞって宣言する「カーボンニュートラル」。バイクメーカーもその波に対応を迫られていますが、バイクラブフォーラムでロードマップ2030が発表されたこのタイミングで、いったん状況を整理しておきたいと思います。電動への道をひた走るのか、やはり内燃機関は我々のような趣味のライダーに望みをもたらすのか……。
●文: Nom(埜邑博道) ●取材協力: 本田技研工業、ヤマハ発動機、スズキ、カワサキモータースジャパン
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EVに合成燃料。二輪のカーボンニュートラルの進む道を考えてみよう
カーボンニュートラル(以下CN)。
ここのところ、この言葉をさまざまなメディアを通して見聞きしない日はありません。
CNの定義は、地球温暖化に悪影響を与えるCO2など温室効果ガスの排出を削減→将来的にはゼロにすることを目指すということになると思います。
世界各国も、このCNに向けたロードマップを次々に作成していて、日本も2050年までにCNを達成するという目標を宣言しています。
各国の取組は、それぞれの事情に応じてCN達成までの道のりが異なりますが、2021年イギリスのグラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締結国際会議(COP26)では、異常気象などの気候変動による悪影響を最小限に抑えるために、産業革命前からの気温上昇幅1.5℃を目指すことで正式に合意されました。
気温上昇に影響を与える温室効果ガスは、さまざまなものから排出されているのですが、排出元として分かりやすく、日常で誰の目にも触れやすい自動車が槍玉に挙げられていて(そのように感じてしまいます)、すべての自動車メーカーがCNに向けた取組とCN実現へのロードマップを設定しているのはご存知の通り。
その手段として電動化(EV化)が声高に叫ばれているのが現状ですが、ここも各国、エリアによって考え方と方向性は少々異なっていて、ヨーロッパ、北米、中国、インド、そして日本で達成方法や達成年度に差異があるのもご存知の通りだと思います。
自動車ということで、このCNへの取組には当然、バイクも含まれているのですが、2020年の新車販売台数に占めるEV車(BEV<バッテリーEV=完全な電動車>、PHEV<プラグイン・ハイブリッド車>、HEV(ハイブリッド車>、FCV<燃料電池車>)の割合は北米で1.8%、ヨーロッパで5.6%、中国で4.4%、そして日本ではわずかに0.6%で、バイクは世界全体で4.8%程度とされています。
自動車の普及率と比較して、バイクも意外に普及しているじゃないかと思うかもしれませんが、そのほとんどは中国や東南アジアなどで足代わりに使われているコミューターですから、我々ライダーが考えるバイクの電動化とは同列には考えられないと思います。
また、自動車・船舶・飛行機などいわゆる運輸部門における二酸化炭素排出量を見てみると、バイクは全体の0.3%(2019年度)と極めて少ない数字になっています。
2019年の日本におけるCO2の排出量の合計は11億800万トン。そのうち、自動車や船舶等の運輸部門の車両が稼働(運輸量という)する際に排出するCO2は2億600万トン・総排出量の18.6%で、減少傾向にある。自動車などを製造する際にもCO2は排出される(表の産業部門に含まれる)ので、CNを目指すには製造段階での排出ガスの抑制も大幅に行わなければいけないのだ。 |
たった0.3%じゃ、それほど躍起になってCNを目指すことはないじゃないかと思ってしまいますが、時代的にCNを目指さない企業、業界は反社会的存在のように見られてしまう風潮ですから、二輪メーカー各社も温度差はありますがCNに向けた取組を進めているところです。
ただ、乗ること自体が楽しみであり、エンジンが醸し出す乗り味が大きな魅力であるバイクの場合は、CNのために動力源がエンジンからモーターに取って代わるEV化はバイク本来の存在意義が問われることになります。
また、EV化が先行している自動車でも、従来の内燃機関を使用しながらCNを実現する取組も行われていて、トヨタ自動車が昨年の9月に水素を燃料とするエンジン車で「スーパー耐久シリーズ」に参戦したことは多くの方がご存知でしょう。
トヨタ自動車の豊田社長が常々発言されているように、「敵は炭素であり、内燃機関ではない」わけで、内燃機関(エンジン)を使用しながらCNを目指すという取組も行われ始めています。
昨年の11月には、岡山国際サーキットでトヨタ、マツダ、スバル、ヤマハ、カワサキの5社がCNを目指して内燃機関を活用した燃料の選択肢を広げることへの挑戦を宣言。ヤマハとカワサキは、バイク用の水素エンジンの共同研究について検討を開始すると発表し、今後はホンダ、スズキも加わって4社で内燃機関を活用したCN実現の可能性を探っていく予定とのことです。
昨年11月に岡山サーキットで二輪・四輪5社が共同で宣言したカーボンニュートラル社会に向けた取組。それぞれ手段、方法は異なるが、内燃機関の可能性を探る方向性は同じ。このとき、ヤマハはトヨタに委託されて2018年に製作したV型8気筒水素エンジンを世界初公開した。 |
将来的に、エンジンを使用するバイクが消滅してしまうという我々ライダーの心配に対して、ひとつの光明が差したように感じた方も多いのではないでしょうか。
また、この岡山サーキットでの宣言に先立って、カワサキが10月に行った技術説明会で水素を燃料とする研究中のエンジンを公開。CNの達成はバッテリー+モーター一辺倒ではない可能性を示唆してくれました。
ロードマップ2030にもCNへの取組が盛り込まれた
そして、2年ぶりにオンラインで開催された経済産業省が主催する「バイクラブフォーラム」では、これからの二輪車業界が目指す「二輪車産業政策ロードマップ2030」が発表され、二輪車のカーボンニュートラル達成に向けた現実的な施策の策定と着実な推進によって、2030年には電動車、合成燃料対応車によるカーボンニュートラル達成への貢献という目標が定められました。
これは、業界全体として初めてCNへの取組を行うという宣言でもあります。
では、具体的にいま二輪の世界ではCNに向けたどんな取組が行われているか。
当然、二輪各社は個々にEVの開発を行っていて、実際に販売を開始しているEVも存在します。多くはスクータータイプですが、ハーレー・ダビッドソンが開発したLiveWire(現在は、電動バイク専門ブランドの名称でもある)のようなスポーツバイクもあります。
また、昨年のEICMAでカワサキが2022年中に少なくとも3機種の電動モデルを市場に送り出すと発表。それがコミューターなのかスポーツバイクなのかは明らかにしていませんが、カワサキの考えるCNにつながる電動化の具体例が年内に見られそうです。
昨年のEICMAで、カワサキモータースの伊藤社長が2022年に最低でも3機種の電動ヴィークルを発表すると発表。モーターサイクル(バイク)とは明言していないが、水素エンジンの発表など、カワサキは非常に積極的にCNに取組んでいるように感じさせる。 |
ただ、クルマに比べて圧倒的に小さなバイクのボディに搭載できるバッテリーは限られていて、バッテリーでモーターを駆動するEVの大きな問題は、満充電での航続距離と充電インフラの普及です。従来のバイクと同様の使い勝手でなければ、大多数のユーザーが進んで選択する乗り物とは言えません。
そこで出てきた動きが、搭載するバッテリーやバッテリー交換システムを統一して、バッテリーの相互利用を可能にする国内での「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社が合意して、電動二輪車の普及に向けて交換式バッテリーの技術的検証を行うと昨年3月に発表しました。
4メーカーが作るEVが同じバッテリーを使用することになれば、大量生産によるコスト削減も図ることができるでしょうし、バッテリー交換ステーションも共同で設置できることになるでしょう。
同様のコンソーシアムの動きが欧州でもあり、ホンダ、ヤマハ、ピアッジオ、KTM間で昨年9月に合意に達しましたから、CNに向けたバイクメーカーの取組は今後加速していきそうです。
とはいえ、この交換式バッテリーの互換利用は主にコミューターをターゲットにしたもので、もっと排気量の大きなバイクに関しては先に書いたカワサキの水素エンジン以外に具体的なモノが見えていないのが現状です。
バイオエタノール燃料の可能性
一方で、CNを実現している燃料がすでにバイクやクルマに使用されているケースもあります。
サトウキビなど植物由来のバイオエタノール燃料は理論上CNの燃料で(編注・バイオ燃料は燃焼すると石油などの化石燃料と同じように二酸化炭素を排出するが、原料となる植物の成長過程において光合成を行うことで二酸化炭素を吸収しているため、燃焼時の二酸化炭素の排出量はプラスマイナスゼロとなると定義されている)、通常のガソリンと混合することでブラジルなどでは多くのバイクに使用されています。
バイオエタノール100%でも走行には支障がないとのことですが、現在は通常のガソリンよりもバイオエタノールのほうが3割ほど燃費が劣るため、ガソリンよりも単価の高いバイオエタノールだけを使用するケースはほとんどないようです。
ここで分かってくる問題が、ガソリンとガソリンに代わる代替燃料の価格差で、いくらCNな燃料とはいえ高くてはなかなか使用されないわけです。
とはいえ、CNを目指すうえでバイオ燃料はひとつの有効な手段で、燃料代があまり重要視されないレースの世界では、インディカーにすでにバイオエタノール燃料が100%使用されていますし、日本でも四輪のスーパーフォーミュラとスーパーGTが「CNフューエル」のテストを今年からスタートさせ、2023年からレースで実際に使用することを発表しています。
さらに、F1やMotoGPもバイオ燃料の導入を発表していて、F1は今年から、MotoGPは2024年から採用を開始し、どちらのレースも将来的に100%非化石燃料を使用するとしています。
日本ではなじみの薄いバイオ燃料ですが、世界的視野でみるとCNへの有効手段のひとつとして有望視されているのです。また、バイクのエンジンにバイオ燃料を使用する場合でも、大きな変更は必要ないそうですから、ネックである価格をどうやって低減していくか、カギはそこにあるでしょう。
レースの世界ではCNに向けた取組が進んでいて、MotoGPでは2024年までに非化石燃料を40%以上使用することとし、2027年にはそれを100%に引き上げるという。また、Moto2とMoto3も、2027年にはMotoGPと同様に100%持続可能な燃料に変更される。 |
カワサキが発表した水素を燃料とするエンジンの場合も、カギは価格と供給インフラなどをどうやって実用レベルにまで持っていくか。岡山での宣言や、ロードマップ2030にあるように、開発スピードを上げるためには多くのメーカーが参画して共同で開発をしていく必要があるでしょう。
2022年は二輪のカーボンニュートラル元年。各社の動きを注視したい
では、日本の4メーカーはどのようにCNを進めていくか。
筆者は、オンラインで開催された昨年のバイクラブフォーラムの質疑応答で、CNに対してどう具体的に進んでいくのかロードマップを示してほしいと質問したところ、自工会副会長・二輪委員会委員長であるヤマハの日髙社長は「趣味の大型バイクの領域は、お客様の使い勝手を考えると現在のバッテリーのエネルギー密度では非常に難しい。内燃機関と燃料の工夫でできないかと日本の4メーカーが模索し始めた。ただ、まだ会話を始めたばかりで、今後、明確な協調領域、一緒にやっていけることの合意があれば皆様に発表したい」と回答されました。
ニュアンスとしては、まだ一緒にやれるかどうかの検討を始めたばかりで、決まっていることは何もない、ということ。そこで、今度は、編集部から国内4メーカーに質問状をお送りしました。
各メーカーからの回答は下記のとおりで、各メーカーが独自での取組を進めているようですが、交換式バッテリーのコンソーシアムのような動きはまだまだこれからの様子です。
共通した回答は、内燃機関を継続したいという意思で、そこに向けた具体的な動きに大いに期待したいところです。
価格や航続距離などといった問題をはらみながらも、すでに多くの電動化モデルが販売されている四輪に比べると、大きく出遅れている二輪(とくに趣味領域)。
現実的には、2022年が「CN元年」という位置づけになるのではないでしょうか。
国内4メーカーのカーボンニュートラル(以下CN)への取組について各社に聞いてみた
①CNへの御社の取組みをご説明ください
ホンダ:2025年にビジネス向けATバイクの70%を電動化。2030年でFUN(編注・趣味領域)/COM(編注・コミューター)問わず15~20%を電動化して、残りのICE(編注・内燃機関車)の燃費を飛躍的に良くして、2030年時点では1.5℃ラインには乗らないものの2035年から2040年にはそのラインに乗せて行き、2050年にはCNを達成したい。なお、CNに向けては、協調領域と競争領域のそれぞれ各社で取組んでいく。水素エンジンの研究については、協調領域ではあるものの、これから内容を含め検討していく段階である。
ヤマハ:主に製品群(モーターサイクル、船外機、産業用ロボットなど)からの排出を合計した削減目標として、2010年比で2030年に▲24%、35年に▲38%、50年に▲90%。
スズキ: CNへの取組みは弊社としても優先課題としてとらえ取組んでいく所存です。現行ガソリン車の開発との比率等詳細についてのコメントは控えさせていただきますが、すでにCNに向けての自工会から発表されておりますCNへの取組みにあるように、電動化一択ということではなく、水素、合成燃料、バイオ燃料などあらゆる技術的ソリューションについてその組合せも含めての可能性を追求していきます。水素エンジンについては、当社含め二輪4社にて基本的に合意(本年11月14日岡山での二輪のラウンドテーブル記者会見の内容通り)しており、これから4社が共同で技術的な面を掘り下げ、具体化させていく予定です。
カワサキ:カワサキはカーボンニュートラルへの取組みとして、2035年までに 先進国向け主要機種の電動化(BEV/EV)を行う予定であり、2025年までに10機種以上の導入、そのうち3機種の電動モーターサイクルを2022年に発表予定しております。これら電動モーターサイクルにおいても走り、操る楽しさへのこだわりは不変であり最先端技術の開発を加速し、電動ならではの価値を創造していきます。加えて、11月に岡山国際サーキットで宣言させていただいた通り、二輪車への搭載を視野に入れた水素エンジンの共同研究を国内二輪メーカーにおいて検討を開始。これにより内燃機関を活用したカーボンニュートラル実現への可能性を探っていきます。また、具体的な比率は差控えさせていただきますが2025年までに年平均16機種の新機種(BEV/EV含む)を導入する予定でありガソリン車も継続して開発・導入を進めていく予定です。
②交換式バッテリーのコンソーシアムとCNの関係性は
ホンダ:交換式バッテリーのコンソーシアムの設立目的は、“より環境にやさしく利便性の高いモビリティとして電動二輪車の普及を業界全体で検討しており、電動二輪車を普及させるための課題に対しさまざまな取組みを行っていくこと”であり、これらの活動を通じてCNに貢献できると考えています。
ヤマハ:基本的には交換式バッテリーコンソーシアムを創設した目的は、日本における電動二輪車の交換式バッテリーの標準化ですので、カーボンニュートラルへの貢献に向けて今後、二輪車メーカー間で取組が必要になった場合には、検討していくことになると思います。
スズキ:国内4社のCNへの貢献は、交換式バッテリーのコンソーシアムに限らず、水素への取組もすでに発表されている通り、広い範囲での活動も当然視野に入れております。CNへの道は電動化のみではないので、弊社としてもあらゆる解決策を技術的に模索するなかで、国内4社で協調すべきところは協調していく必要があると考えます。例えば、CNの実現のためには、車両の走行時の排出ガスだけではなく、車両を生産する際の排出ガス、さらには車両を構成する部品の生産工程での排出ガス、ひいてはこれらの生産に必要なエネルギーの調達方法や、車両の廃棄、リサイクルなど、車両を取巻く一連のサイクル全体でCNへの貢献を考える必要があります。いわゆるライフサイクルアセスメント(LCA)ですが、これについては各国の計算基準もバラバラな状態ですので、このような物差しの統一化も含めて、4社が協調していくことが重要であると考えます。
カワサキ:電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアムを創設した目的は、電動二輪車の交換式バッテリーの標準化です。カーボンニュートラルへの貢献に向けて、二輪車メーカーの新たな協調領域での取組みが必要になった場合には、その時点でどのような体制が良いかも検討していくことになります。
③欧州でのバッテリーコンソーシアムについて
ホンダ:欧州のコンソーシアムでは、以下の活動を想定し設立に合意しています。・本電池システム※ の共通仕様書の策定(交換式電池パック形状、コネクタ形状、通信プロトコル等) ・普及に向け本電池システムの設置・共通利用方法の検討 ・共通仕様の普及
※交換式バッテリー及び充電設備を総称し「本電池システム」という
ヤマハ:欧州における電動二輪車の交換式バッテリーの標準化ですので、CNへの貢献に向けて今後、二輪車メーカー間で取組みが必要になった場合には、検討していくことになると思います。
スズキ:加入を検討しています。
カワサキ:まずは自工会活動、国内のバッテリーコンソーシアム活動に集中し、将来的には加盟も検討していきます。
④日本、欧州でのバッテリーコンソーシアムの今後について国内4メーカーで協調して進めていく方向性は
ホンダ:誠に申し訳ございませんが個社での回答は控えさせていただきます。
ヤマハ:国内メーカーのコンソーシアムについては、バッテリーの標準化が進みましたので、協調領域では業界全体で取組み、競争領域については各社で進めています。欧州については、まずは欧州のコンソーシアムでバッテリーの標準化を進めているところです。
スズキ:国内4社のCNへ向けての協調領域は、コミューター(通勤通学用)としての使用が中心の原付1種、2種相当の電動機種について使用されることが想定される、交換式バッテリーの共通使用があります。4社共通とすることで量の拡大が期待でき、ユーザー側のベネフィット(部品共通化にともなうコスト低減による車両価格の適正化、インフラ整備の充実など)も大きいと考えます。それから、(岡山での二輪ラウンドテーブル記者会見でも説明がありましたが)水素エンジンについて、例えば燃料タンクであるとか、吸・排気系の部品などの共用化は可能性としてありますが、技術的なすり合わせはまだこれからの段階ですので、詳細については未定となっています。
カワサキ: 国内における電動二輪車用交換式バッテリーは、コンソーシアムにて標準化を進めております。また、欧州においても今後加盟を検討していきます。
⑤将来の内燃機関継続の可能性は
ホンダ:二輪車を電動化するためには、まだまだハードルが高いため、すぐにすべてが電動化されるものではない。Hondaとしては、今後もエンジンの性能向上を急ぐとともに、燃費性能を大幅に高めたエンジンをこれからも投入していく。これからも引続きCNに向けた取組を継続していくが、2030年の断面においては、主要国による規制の修正や合成燃料の普及などによって内燃機関は残ることも想定している。
ヤマハ:現段階で内燃機関の開発を止める予定はありませんので、引続き期待を持っていただきたいと思います。
スズキ:先述の通り、小型のコミューター二輪については電動化対応の可能性が比較的高いと考えられますが、趣味性の高い大型の二輪については電動化の技術的ハードルも高い(バッテリーの積載スペース、航続距離などの制限)。さらには、大型の二輪車のレシプロエンジンは各社の技術の結晶であり、造形、振動や排気音も含めて魅力であります。よって、既存の内燃機関の延長である水素エンジンや既存の内燃機関に合成燃料、バイオ燃料の使用を組合わせたCNへの取組があります。自工会全体の主張として、CNが目標であって、電動化が目標ではないと言っています。電動化に加え、考えられうるあらゆる技術的解決策を検討していくことが使命と認識しています。これも自工会の主張ですが、CNを達成するためにSustainable(持続可能性の追求)であるだけでは不十分で、Practical(実用的=お客様が購入できる価格、実用性の追求)でなければ意味がありません。趣味として楽しむバイクを、楽しめない仕様と価格で作ってしまっては買っていただけません。プラクティカルという点での補足ですが、二輪車は現在日本国内に1000万台以上の保有台数があり社会への貢献度も一定量あります。日本における1年間のCO2排出総量(2019年値(注1))は11億800万トンですが、この内二輪車を含む運輸部門の排出量は2番目の大きさの2億600万トン(18.6%)。この内二輪車の排出量は72万トンで運輸部門の中での構成比は0.3%(全排出量での構成比は0.06%)です。CO2の絶対排出量や占有スペースの少なさからも、二輪車のパーソナルモビリティとしての有用性や可能性は現在において大変大きいですし、また将来においても、十分通じるものと考えます。またコロナ禍の昨今、ソーシャルディスタンスを確保できる通勤通学の手段としての利用はもとより、閉じこもり気味な日常からの解放、趣味として楽しまれる方が増えている点で、精神衛生面でも社会にとって有益な乗り物となっております。
※(注1)温室効果ガスインベントリオフィス「日本の温室効果ガス排出量データ(1990-2019年度確報値」より国交省環境政策課作成)
以上のことから、二輪の将来性は大きいですし、電動化だけでなく内燃機関も含めての技術的解決策が必ずあると考えております。
カワサキ:すでにお伝えさせていただいております通り、カワサキとしては電動化したモーターサイクルへの走る悦びの追求はもちろんのこと、HEV、水素、eフューエルやバイオ燃料など内燃機関を含め多角的にカーボンニュートラルへの対応を検討しております。特に水素においては、2010年から次世代エネルギーとして着目し、社会生活に必要なサプライチェーン全体(「つくる」「はこぶ」「つかう」)にわたる技術開発を進めてきました。今後、2018年に世界で初めて成功した市街地での水素100%を燃料とするガスタービン発電技術で培った水素燃焼技術をベースに、航空機用、船舶用、二輪車用といった陸・海・空のモビリティ向け水素燃料エンジンの開発を進めています。
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