タレント議員としても有名な、あの三原じゅん子参議院議員が「自民党政務調査会 二輪車問題対策プロジェクトチーム(略称、PT)の新たな座長(2代目)に就任した。1月24日にはバイク業界やメディアを集めての座談会「二輪業界の明日を考える座談会」が開催されたので、その模様をなるべく詳細に、複数回に渡ってお届けしたい。

三原氏は事情通! 神輿やお飾りでは決してない!

※2018年2月「与党オートバイ議連勉強会」より


三原氏のプロフィールは公式サイトのほうにおまかせするが、ことバイク業界との関わりについてはとても長く深い。三原氏は10年以上前から自民党オートバイ議員連盟に所属し事務局長を務めてきた。バイク業界との勉強会や懇親会、中央省庁の担当者も勢ぞろいするPTの場にも出席し、ユーザーや業界が抱える課題についても精通している。決して人気取りのための神輿やお飾りといった軽い存在ではないのだ。

※2018年2月「与党オートバイ議連勉強会」より


今回の党内人事がバイク業界にとってどういう意味を持つのかについて、現段階で具体的にすることは難しいが、少なくとも「元タレントが持つ情報発信力」と「議連やPTの活動において培われた見識」が合わされば、まさに鬼に金棒となるだろう。バイクユーザーが抱える問題や悩みをノンユーザー(バイクに乗らない人、関心のない人)に知ってもらえる機会も増えるはずだ。そうした業界の内外への影響力も考えれば、全くもって期待しかない。

なお、座談会は、オートバイ政治連盟の吉田純一会長、全国オートバイ協同組合連合会(略称、AJ)の大村直幸会長を加えて3名で行なわれた。

吉田氏はAJ(当時は全国オートバイ組合連合会という任意団体)を設立したのち中央省庁や業界団体への要望やロビー活動を行ない、大型二輪免許の教習解禁(1996年)や高速道路2人乗りの解禁(2005年)、バイク用ETCの運用整備(2005年~)など数々の規制緩和を実現してきた人だ。
二代目AJ会長の大村氏は吉田体制のもとで副会長を務めていた人で、会長就任後もツーリングプラン(定額割引)の実施や、この4月から始まる定率割引ツーリングプランの実施、AT小型限定免許の取得簡便化などの実現に尽力し、バイクの利用環境問題について精力的に動かれている。

三原氏「大変なときに座長を引き受けた」

まず、座談会の冒頭で、三原氏からPT座長就任にあたっての挨拶があった。要約せずに、ほぼ発言内容の通りにお伝えする。

三原:この度、逢沢先生(初代PT座長の逢沢一郎衆議院議員 ※下写真)のあとPTの座長を務めることとなりました。私がオートバイ議員連盟に所属させて頂いたのは10年以上前になります。先ほど吉田会長からお話がありましたように、松浪健太先生(※現大阪府議)から「オートバイならあなたも関心があるのではないか、ぜひ入会したら」ということで事務局長を仰せつかりました。
私自身、四輪の方ではありますが、プロのモータースポーツドライバーを長年務めさせて頂き、そののち、鈴鹿8耐で数年間監督をやった経歴があります。そして松浪先生以外で私よりオートバイに詳しい人はいないんじゃないかという自負を持って、愛着を持ってオートバイ議連に入会いたしました。そして、これまでオートバイ議連の中で、様々な二輪車の問題を知りました。
当時から駐輪場や高速道路の料金問題などがありましたが、今まさに、転換期にきていると思っています。カーボンニュートラルがうたわれている現状で、世界の潮流や我が国のオートバイ業界がどう変わっていくのか。その中で大変難しい問題もあるかと思います。諸外国と日本ではあらゆる違いがあります。皆さんご承知の通り、原付に対する考え方もそうですし、免許制度もそうです。この先、技術やユーザーの求めるものを考えていかなければなりません。

いずれにしても、これは大変なときに座長を引き受けたと思っております。そして転換と同時に、今まで残された課題にもしっかりと取り組んでいかなければならない。また、新たな課題もこれから生まれてくると思います。これからユーザーの皆さまにいつまでもオートバイを愛してもらえるように、そして、乗りたいと思って頂けるような環境を政治の力で整えてまいりますので、何卒よろしくお願いいたします。」

最も優先すべきは、駐車問題の解決!

挨拶もそこそこに座談会はさっそく議論へと移った。真っ先に取り上げられた課題は、バイクの利用環境において最も重要かつ難題となっている駐車問題だ。

大村:125cc以下のオートバイは、過去に1,000万台以上の保有がありました。今は50%、500万台くらいまで落ちてきています。これらのオートバイは、乗り物として非常に国民に近く、人々の生活を今も支えています。しかし、現状では、それ以外の乗り物もそうですが、50年以上前に作られたルールから更新がなく今にいたります。生活の足として使っている方の駐輪場というのは必要だと思っています。AJとしては、これらの問題に対応するための「猶予がない」と思っています。その辺について先生はどのようにお考えでしょうか。
三原:駐輪場問題というのは、私が議連に入ったときから言われ続けてきました。今おっしゃったように、オートバイは昔に作られた規定のままでユーザーの持ち方が変わってきていたり、あるいは電動オートバイやキックボードなど色々な物が出てきています。そうした中で、行政側には二輪の存在をもう少し理解して頂けねばなりません。

また、法律に関しても、都合のいいときだけ厳しい規制をかけるなど、柔軟ではないと感じます。ユーザーは二輪に乗りたいという思いがある一方、どこに駐めていいか分からず、そして、駐車違反になる…。こうしたことを繰り返してきたのだろうと思っています。

これから先もオートバイを駐める場所というのは当然必要になってくるので、国土交通省等がこれらの問題についてどのように考えていくのか、私たちの希望をしっかりと打ち出していく必要があると思っています。特に、都心を含めて一都三県くらいはですね、ちゃんと規制を統一しないとユーザーも迷ってしまうような状況だと思います。駐輪場に関してはしっかりやっていかなければならないと思っております。大村:当時、(駐車場法改正と放置駐車車両確認事務の民間委託が)2006年から始まって、約10年間で100万件の駐車違反切符が切られました。その当時のオートバイ保有台数が120万台と言われているので、検挙されていないほうがおかしいほどの数字です。

確かに当時を振り返ると、オートバイを使わない人にとっては邪魔な存在であったと思います。ただしそれは、暗黙の了解で許されていました。生活実態があったのです。それを検挙した。これは100万台あった保有台数を激減させた最大の理由です。

だけど、人が生きている間は移動する手段が必要です。そのために、新しい乗り物(電動モビリティ等)の実証実験については行われていますが、(既存の)オートバイについてはやってもらえません。そのため、先生のお力添えを頂きながら、縦割りではなく横の話の中に加えて頂いて、環境を改善していきたいなと思っております。

バイクの法規は縦割り弊害、横串を刺した協議体を!

大村氏が要望した「縦割りと横の話」について補足したい。バイクに関する法規の課題には、道交法(警察庁)と道路運送車両法(国交省)での区分違いなど、縦割り行政の弊害によるものが多い。これらがユーザーの利便性をいちじるしく阻害してきたのだ。

こうした課題を根本的に見直すべく、原付一種や原付二種といったコミューターに関わる法規等の現状や利用者の生活実態(ニーズ)、そこにある課題をしっかり把握するための省庁横断も含めた連絡協議会の必要性を要望しているのだ。つまり、「横串」をさした議論・検討の場がなければ根本的な解決は難しいということだ。

(中編・カーボンニュートラル問題 に続く)

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