●文/まとめ:ヤングマシン編集部(田中淳磨)
利用者の声を忘れるな
4月1日から施行された改正民法により、「成人年齢は18歳」に引き下げられた。また、「電動キックボードは16歳以上免許不要」という道交法改正案も国会での審議を控えている。そんな状況下であっても忘れてはならないのが、利用者の声だ。本記事は、’21年に埼玉県で開催された「令和3年度高校生の自動二輪車等の交通安全講習」で聞いた参加生徒の声、ならびに埼玉県教育委員会が集めたアンケート結果の声を一部紹介する。16歳という年齢には多くの高校一年生が含まれる。電動キックボード改正案の是非においては、生徒/保護者/教育関係者の声に耳を傾けることも必要なプロセスだろう。
高校生がバイクに乗る理由と用途
アンケートは講習会(臨時会を含めて全7回)の参加生徒全員に実施された。講習内容の感想など全部で8問が用意されたが、今回紹介するのは「バイクに乗ろうと思った理由(Q3)」と「バイク利用時の用途(Q4)」について。今後、電動キックボードなどの電動モビリティが若年層の間でどう扱われていくのか、それを考えるには利用の当事者である彼らのニーズや生活実態の把握が必要となる。
県南部講習会でのひとコマ。「免許いつ取ったっけ~?」と本人たちはいたって自然体。バイクへのポジもネガもない。必要だから乗っている。
まず図1は、「バイクに乗ろうと思った理由(Q3)」の自由記述回答(フリーアンサー)をテキストマイニングしたものだ。この図からは、父親など周囲の身近な人達からの影響(家業への必要性も含む)、バスなど公共交通の不便さと家計への料金負担、バイク移動の早さと便利さ、行動範囲の拡大といったことが見えている。こうした背景が、免許取得/バイク購入/乗車の動機になっているのだ。
(図1)「Q3自動二輪車等を運転しようと思った理由は何ですか。」への回答をテキストマイニングした。丸の大きさは出現数を表し、線の太さは各ワードがつながる回数の多さを表している。バイクに関しては父親など周囲の影響が大きいこと、バスなど高くて不便な既存の交通手段、バイク通学の必要性、行動範囲の拡大などを示した。
続いて図2は、「バイク利用時の用途(Q4)」の結果だ。ツーリングというワードの表示サイズが大きいが、これは県内各地域の回答のすべてに含まれていたからだ。”移動”や”遊び”といった日常会話で頻度の高い一般的なワードを除けば、アルバイトや通勤といったワードが続いた。また、多くの学校でバイク通学が許可されている秩父エリア(計2回開催)では、”通学”というワードがほぼ全員が記述していた。
(図2)「Q4主にどのような用途で自動二輪車等を運転していますか?」の回答をテキストマイニング。出現数の多いワードほど大きく表示される。「バイト/アルバイト/通勤」も目立っていた。
高校生がパーソナルモビリティを必要としている理由を把握しなければ、大人たちは正しい判断ができない。この基本的な実情をもっと掘り下げて議論されるべきだろう。
【Tさん(19歳)C高校2年】「誕生日が12月なので、’22年の1月半ばには免許を取りました。免許を取ったのは通学に必要だからです。家から学校まではバイクで25分くらいかかるけど、自転車と比べてラクで快適です。親は反対はしてませんが『気を付けるように』とは言われてます」
【Hさん(19歳)T高校4年】「昔から仮面ライダーに憧れていました。ピザ配達のアルバイトの通勤にも乗っていきます。バイトではジャイロキャノピーやギアに乗ってます。親も原付に乗っており、免許やバイク購入に反対はなかったです」
【Nさん(18歳)N高校3年】「バイクはお母さんに選んでもらいました。バイクが必要だったのはバイト(飲食関係)に行くため。家から15分くらいです。バイクはラクに移動できるのがいいですね。親にも『免許を取ったほうがいい』と言われていました。クルマの免許も取る予定です」
【Sさん(17歳)C高校2年】「バス通学だったけど、バイクのほうがお金も浮くし自分の時間で動けるので、免許を取りました。親からは『バイク、取りな』という感じで、バイクは父の知り合いのお店で買いました。一般道はまだ怖いけど、爽快で楽しいし、バイトの通勤にも使ってます」
※本記事の内容はオリジナルサイト公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
WEB YOUNG MACHINE - NAIGAI PUBLISHING, Co., Ltd. All rights reserved.