11月13日(日)に静岡県・浜松市のスズキ本社で開催された「Vストロームミーティング2022」の模様をお届けしている。
前編では、Vストローム1050DE、Vストローム800E、Vストローム250SXのニューモデル3台のアンベール、「V-Strom 旅するフラッグ」のゴールセレモニーなどをお伝えした。

後編では、ニューモデル3台の設計者トークショーをメインに、ゲストトークショーの模様など盛りだくさんで行ってみよう!

ニューモデル3台のチーフエンジニアが勢ぞろいした設計者トークショー

トークショーの第一弾は、アンベールされたばかりのニューモデル3台の設計者からお話を伺うというもの。登壇したのは、Vストローム1050DEのチーフエンジニア・安井信博(やすい のぶひろ)さん(左から2人目)、Vストローム800Eチーフエンジニアの番匠哲也(ばんじょう てつや)さん(左から3人目)、Vストローム250SXチーフエンジニアの野尻哲治(のじり てつはる)さん(右端)の3名で、MCはバイク雑誌等でお馴染みのノアセレンさん(左端)が担当した。

Vストローム1050DEの開発話

まず、DEは「デュアルエクスプローラー」の略。安井さんはVストローム650のチーフエンジニアでもある。650は日本でもファンが多く、ツーリングバイクとして評価が高いことで知られている。

DEはフロントタイヤを21インチに変更し最低地上高を高めるなどオフロード感を強めているが、安井さんいわく「今回は舗装路の先の、未舗装路の旅まで連れていってほしいということで作り込みました」とのこと。

背景には既存ユーザーへの調査結果があったようで、「みんな、林道とか未舗装路に行って満足するという流れ(トレンド)があるなと感じて、それならせっかくなので(未舗装路を)楽しく走れるようにやってみよう」となったそうだ。

安井さんは「DEはモトクロッサーを開発したテストライダーにも開発に携わっていただいた。アドバイスや指摘は非常に参考になって、Gモード(ある程度スピンを許容するオフロード版トラコン)を採用した」ことを強調した。

また、オフロード走行を考慮し、スタンディング時に路面が見やすいようにスクリーンを短くしたり、ハンドルを手前に位置させてステップを前目に設置するといった細かな作り込みが行われたそうだ。

安井さん「オフロード走行を楽しむライダーが『わかってるな、気が利いているな』と感じてくれたらうれしい」

クイックシフターの搭載も林道・オフロードビギナーには嬉しい装備だろう。

Vストローム800Eの開発話

番匠(ばんじょう)さんはサスペンションのプロフェッショナルで、オフロードにも強いと評判の開発者だ。エンジン、車体など多くのパーツが新作となった800Eだが、並列2気筒エンジンを採用するというところから各部が設計・調整されていったようだ。

番匠さん「今までのVストロームシリーズよりも冒険心をかき立てて、林道など、さらに先まで行けるように仕上げた。フロントに荷重がほしいので、まずエンジンの全長を縮めくて並列2気筒エンジンを採用したが、鼓動感やトラクションのかかり方が少なくなるので、270度クランクを採用した」

エンジンにはクロスバランサー(2軸バランサーの手法)を採用し、軽量化かつエンジンの前後長をコンパクトにするなど、並列2気筒エンジン採用による各部へのこだわりも語られた。

スチールフレームも、ロングツーリングや不整地走行を考えてのしなやかさや剛性感、並列2気筒エンジンの横幅も考慮して、車体を極力スリムにするために採用されたそうだ。

「冒険心をかき立てるために何がベストなのか、何の組み合わせがいいのか」を考慮して開発を進めたとのこと。一方で、シート内の発泡ウレタンフォームの密度を上げるなど、ロングツーリングの快適性にもこだわっている。サスペンションストロークを前後ともに長めの220mmにしたのも「未舗装路でしっかり吸収しきれる。乗り心地よく疲れずに走れる」ことを考慮した結果とのことだ。

「650よりパワーの欲しい方、1050を少しもてあます方の中間を埋めたかった」ということで、Vストロームの選択肢が広がった形だ。

Vストローム250SXの開発話

野尻さんはVストローム250(既存モデル)やジクサー250の開発チーフエンジニアでもある。そうした経験を踏まえつつ、「Vストローム250はかなりオンロード寄りですが、SXはオフロード寄りというのではなく未舗装路も考慮したモデル」とのこと。決してオフ車ではないのだ。

開発を進める上で、テストライダーはダートを含め、様々な場所を走り込んだようだ。ジクサー250の油冷単気筒エンジンを使って「DR(スズキの4ストローク・オフロード車ブランド)を作ってほしい」という声は多いそうだが、野尻さんはそうしたユーザーでも「(推奨はしないけど、並列2気筒のVストローム250に比べれば)林道走行については納得いただけるはず」と太鼓判を押した。

はね石からクランクケースを守るアンダーガードや、ブーツとのグリップ性を高めるギザギザカットのステップなど、未舗装路の走行を考慮した装備も雰囲気を高めている。

Vストロームシリーズは7機種に! 2023年の梅雨明けにむけて順次発売予定

ノアさんが3モデルの発売日を探っていくと「1050DEはそこそこ早め」「800Eはその後それほど時を置かずに」「250SXは来年の梅雨明けに間に合えば」という感じらしい。つまりは、2023年の梅雨明けまでには3モデルとも発売されるようだ。

なお、これによりVストロームシリーズは、1050、1050DE(XTの後継)、800E、650、650XT、250、250SXの7機種展開となる。

積んでいるエンジンがVツインだったりパラツイン(並列2気筒)だったり単気筒だったりとバラバラだが、VストロームのVはVツインのVではなく「Versatile(多目的・万能)」のVなので問題ないのだ!
なお、800E(上写真は海外仕様・用品装着車)は「GSX-R1000」以来のスズキとしては本当に久しぶりの完全新作バイクとのこと。EICMA(ミラノ)ショーでは、800Eとフォーマットを同じくしたオンロードスポーツバイク「GSX-8S」も発表されている。
こちらの仕上がりも上々で、スポーツ性能はかなり高いとのことだ。見た目からして軽くて速そう!

「旅するフラッグ」で盛り上がったゲストトークショー

続いてのゲストトークショーでは、MCのノアセレンさん、冒険家の賀曽利隆さん(左から3人目)、フリーライターの谷田貝洋暁さん(左から4人目)、さらに途中からはレーシングライダーの津田拓也さん(右端)も加わって「V-Strom 旅するフラッグ」についてのトークショーが行われた。

オンライン開催となった昨年、この会場から賀曽利さんを先頭に旅を始めたフラッグは全国各地を巡り、本日ここに戻ってきた(セレモニーの様子は前編を参照)。トークショーは昨年の様子の振り返りから始まった。

賀曽利さん「本当に不安だらけだったんですよ。豊川稲荷に行きますとだけお伝えしたんですよ」

コロナ禍ということもあり、難しいことも多かったようだが、無事にフラッグはマラソンのたすきのように多くのオーナーに受け渡されていき、この会場にも25名ほどの参加者が集まっていた。

フラッグの受け渡しはツイッターで連絡を取り合うといったことが多かったようだが、当の賀曽利さんは「ツイッターはやめたんですよー(笑)。以前はやってたんですけどねー。スマホもやめました!」で会場は大爆笑。まぁ、実に賀曽利さんらしい(笑)
フラッグの受け渡しはスムーズにいかないこともあったようで、会場に来ていた参加者からは「旅先でVストロームのオーナーを見つけて渡そうとしたら、フラッグのことを全く知らない人で…」ということもあったそう。

また、雑誌やWEBでお馴染みだが、賀曽利さんは普段からVストローム250を愛車に日本全国を駆け回っていて、いまは何と19万km! パンク1つしないということで、Vストロームの堅牢性をアピールしていた。

途中からトークショーに加わった津田さんもVストローム250オーナーということで会場からは大きな拍手が。「街乗りでは楽しいバイクに乗りたいなと思って、発売直後に初期型を買いました。デザインも気に入ってます」とのことだが、6年間で770kmという走行距離で、登壇者からは「めっちゃキレイ!」といじられる結果に(笑)

第2回となる「V-Strom 旅するフラッグ2023」がスタート!

その後は、第2回となる「旅するフラッグ」のスタートイベントが行われた。まずはこの場で第1走者を決めるということで、会場にいる立候補者の中からじゃんけんが行なわれ、第1走者となる2人のオーナーが選ばれた。なぜ2人いるのかというと、次回はなんとフラッグが2本になったのだ。
静岡県で東と西に分け、2方面へのスタートとし、北海道や沖縄も含めた全国各地への旅を目指す。ツイッターの利用も参加条件となっており、Vストロームオーナー達が連絡を取り合いながら、フラッグを受け渡していくことになる。来年のミーティングでも無事にゴールを迎えることを期待しよう!

その後は、じゃんけん大会、2回目となる集合写真、スズキ二輪の濱本社長による閉会の挨拶を経てイベントは無事終了。KATANAミーティング同様に、スズキの鈴木俊宏社長らスタッフが雨の中でも来場者を見送っていた。

予報通り、イベントの途中から雨模様となってしまったが、和気あいあいと活気のあるオーナーズミーティングとなった。

有志オーナーズミーティングのメンバーも来場!

今年の夏に「神奈川Vストミーティング」を開催した3人も来場し、参加者らと親交を温めていた。左から、ともしゃさん(@MOSHA_DL250)、SUZUKI_GTさん(@SUZ_GT)、ゆきち(@yukitikun1)さん。
山梨県の花の都公園の駐車場を借りて開催し、144台!のVストローム(排気量問わず)が集まったそうだ。同会のミーティングとしては5回目だが、3人が幹事として開催したのは初めてとのこと。みんな、ツイッターで知りあって徐々につながっていったそうだ。自分も参加したい、興味があるという方は3人のツイッターアカウントまで。

会場で見つけたレッドバロンユーザー!

●西野さん(石川県金沢市・55歳)/Vストローム1050XT(ヘリテージスペシャル):去年の3月にレッドバロン金沢で購入し、もう17,000km以上も走っている西野さん。能登一周や東北一周、SSTRへの参加と、ツーリングの話を聞いていたら走行距離にも納得だ。石川県在住なので、SSTRは前日に太平洋側に行って、そこから戻ってくるというルートだそうだ。

「とにかく楽なんですよ。一日中、500~600km乗ってても体がおかしくならないです」

西野さんはもともとオフ車乗りで、1万kmあたりで交換したブリヂストンのアドベンチャー用タイヤ「BATTLAX  ADVENTURE TRAIL AT41」のグリップ性能の良さに満足されていた。愛車のお気に入りのポイントは斜め前から見たフォルムやデザインとのこと。

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