三ない運動から交通安全教育に転換した埼玉県

三ない運動を撤廃し交通安全教育へと転換した埼玉県は、2019年4月から保護者同意のもと学校への届け出制とすることで、バイクの免許取得、乗車ができるようになった。

▲普通自動二輪免許を取得して250~400ccクラスのバイクに乗る生徒もいる。ただし、バイク通学は原付一種のみ

 

その代わり、年に1回、埼玉県教育委員会が主催する「高校生の自動二輪車等の交通安全講習」を受講することになっている。

▲講習会場となるのは各地域の自動車教習所だ

 

▲以前は年季の入ったバイクが多かったが、近年は新型車も増えてきたと感じる

 

前編では、6月18日に開催された秩父地域第1回目(3年生限定)の様子を交えながら紹介しよう。秩父地域では通学や生活の足としてバイクに乗っている生徒が多く、違反や事故の状況を鑑みて、3年生だけ早い時期に講習会が行われているのだ。

5年目でも改善が加えられた交通安全講習会

▲教習所内の外周を慣熟走行してから、各カリキュラムを体験する


この講習会も今年で5年目を迎えている。年度末には有識者らによるモニタリング委員会も開催され、現場の指導員らの改善要望などを反映し、運営の仕組みや講習内容などを改善、進化させているのだ。

今年度の主な改善・変更点は以下となっている。

①講習会の実施回数を7回から8回に増加(県内6地域で8回開催)
②会場への移動中の事故を防ぐため原則、午前中開催とする
③遠方からの参加の場合など、車両なしでも参加可とする
④座学を充足し免許取得予定等の生徒も積極的に参加させる
⑤講義で改正道交法(特定原付)について扱う

▲実技講習の前に、ヘルメットのあご紐締結やプロテクターの重要性を伝える


埼玉県内でも昔から例外的にバイク通学が許可されてきた秩父地区だが、受講生徒が多いため、午前だけでなく午後にも講習会を開催することがあった。しかし、今年からは原則午前中のみの開催となり、そのぶん2回から3回に増やして開催されることになった。

▲乗車姿勢や運行前点検「ブタと燃料」についても教わる


また、講習会場(各地域の自動車教習所)から数十キロも離れているなど遠方からの参加の場合は座学のみでも受講可能となっている。ケガをしている、バイクが故障しているといった場合でも同様だ。

さらに、講習の範囲を拡充することで、これから免許を取りたいといった生徒にも、気軽に座学に参加してもらうように促している。

▲危険予測トレーニング(KYT)も行われ、走行中の危険について学び、予測する力を身に付ける

 

▲二輪車事故で特に多い右直事故や出会い頭事故を疑似体験できる

 

▲枠の中にどれだけ長くとどまっていられるかを競う遅乗りで低速バランスを学ぶ

 

▲救急救命講習では、心臓マッサージを体験。AEDの使い方についても教えてもらう

道交法改正に対応し、座学に「特定原付」が盛り込まれた

▲埼玉県警交通総務課による二輪車安全運転講習(座学)


タイムリーなところでは、7月1日に施行された改正道交法における「特定原付(特定小型原動機付自転車)」についての講義が座学に取り入れられた。

座学「二輪車安全運転講習」を担当している埼玉県警からは、キックボードタイプの特定原付について、一般原付(一般原動機付自転車~これまでの原付一種と同じ区分)などに該当するキックボードと間違えないように、その特徴や走れる道路と走れない道路などについてかなり細かい説明がなされた。

▲特定原付に乗る際の注意点が示された


また、特定原付でも自賠責保険の加入が必要なこと、交通違反をすれば交通反則通告制度や放置違反金制度の対象となること、危険行為を繰り返せば講習受講が命じられることについても説明し、ちゃんと理解してから乗ることの必要性を説いていた。

なお、特定原付には、シートにまたがって乗るモーターサイクルタイプも登場予定であり、本講習や自転車講習において運転実技講習が取り入れられる可能性もあるので注視すべきだろう。

▲“あひる隊長”は高校生にも人気があるようだ(笑)


後編では、何らかの理由によりバイクに乗ってこられなかった生徒が受けている座学講習について紹介する。事故に遭わないことを目標とするなら、座学にできることはとても多いのだ。

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