三ない運動から交通安全教育に転換!

2019年4月から三ない運動をやめて、乗せて教える交通安全教育に転換した埼玉県。県内を6つの地区に分けて、各地区で年に1度、講習会を開催してきた。

主催するのは埼玉県教育委員会で、一般社団法人埼玉県指定自動車教習所協会が共催となり、後援として埼玉県警察本部、一般財団法人埼玉県交通安全協会、埼玉県二輪車普及安全協会、埼玉県高等学校安全教育研究会、埼玉県交通安全対策協議会が名を連ねている。
今年も6月から9月にかけて「令和4年度 高校生の自動二輪車等交通安全講習」が各地域で開催されており、7月25日(月)、羽生モータースクールで開催された県東部地域の講習会を取材してきたのでレポートしたい。

昨年度の事故実態に合わせて内容を変更

と、その前に、今年度の講習会における変更点を明記しておく。

【令和4年度講習の変更点】
①参加人数の偏りを防ぐため、学校ごとに受講地区を設定
②昨年度、バイク乗車中の交通事故は3年生が多かったので、3年生の免許取得者数が多い秩父地区で3年生だけを対象に早めに開催
③夜間の交通事故が多かったため、県警による座学講義では夜間の事故防止対策について追加
④実技講習では右直事故について特に重点的に取り扱う
⑤参加生徒アンケートの設問、選択肢を細かく増やした
⑥普通傷害保険に加入可能になった(加入料200円 ※講習会場内での事故への補償)

このように、今年度は県内高校生の免許取得、バイク乗車、交通事故実態に則したカリキュラムが組まれている。

交通安全講習の目的と内容

講習会の目的は、バイクの運転免許を持っている、バイクを運転している県内高校生に対して交通安全意識を啓発し、交通社会の一員となる自覚や資質の向上を図って必要な知識や技能を習得させることにある。実技講習に関しては、以下の内容で行われる。

【実技講習の内容】
①日常点検(ブタと燃料など)
②乗車姿勢(スクーター・モーターサイクルの両タイプ)
③安全装具(ヘルメットのあごひも・胸部プロテクター・エアバッグベスト)
④ブレーキング(目標制動)
⑤コーナリング(定速旋回)
⑥バランス(遅乗り)
⑦パイロンスラローム
⑧パイロン千鳥
⑨Uターン
⑩交差点の危険(対抗右折車、横断歩行者、トラック、すり抜け)
⑪見通しの悪い交差点(左右確認)

「習得」とは言え、1回講習を受けただけで運転技能が劇的に向上するわけではないので、教える側も、本講習会では「安全な環境下で体験させる」というスタンスで実技講習を行っている。
公道でいきなり危険なシーンに出くわすと事故の可能性が高まるが、教習所内のコースで疑似体験しておけば、公道走行時の予測運転も可能ということだ。

自身の運転技量と危険を体感する

例えば、一定速度で旋回するコーナリング(上写真)、右回りのUターン、パイロン位置へのブレーキング(目標制動)といった実技は、自分自身の運転技量を知るためのものだ。
目標制動では、ブレーキを二度がけしたり途中で調整することは禁止されている。指定速度からの一度限りのブレーキ操作で「どれくらいの距離で止まるのかを知る」ことが目的だ。教習所でやる「短い距離で止まろう」という急制動とは違う。
また、右直事故を想定して作られた交差点では、トラックの左横を走る・止まることの危険、横断歩行者や対向右折車などの交差点に潜む危険を体験できるようになっている。
出会い頭の事故が多い、見通しの悪い交差点も体験してもらう。住宅街などではよくあるシーンだ。

交通事故に遭遇した時の対処法も

本講習会では、交通事故に遭遇した場合の対処法である救急救命法も教えている。心肺蘇生法とAEDの使い方、体験がメインだ。教習所で普通二輪免許を取得した生徒なら経験していることだが、原付免許の生徒の中には実践経験がない生徒もいるので貴重な機会となっている。

座学講義ではKYTも実施

座学講義では、事故・違反の現況、交通社会人としての自覚・責任、交通事故時の対応要領、夜間走行の危険性、大型車の内輪差等の危険性などが教えられる。
昨年度からKYT(危険予測トレーニング)のプログラム(ホンダ制作)を取り入れており、公道走行中の様々な場面に潜む危険を認識するための講義が行われている。

今年度の課題は生徒の参加率?

埼玉県は、保護者同意のうえ学校への届け出制として三ない運動をやめ、交通安全教育に転換した。本講習も各校(定時制含む公立高校)から全生徒に連絡が行っており、基本的には受講しなければなならないものだ。

しかし実際には参加率が70%を下回ることも多い。コロナ禍ということもあるが、県や開催場所となる教習所側も感染対策は万全と言ってよいレベルだ。

また、どうしても都合のつかない場合は、他地区講習会への参加も可能だし、日本二普協が開催するグッドライダーミーティングなど県内で開催されている4つのライディングスクールへの参加でも良いとされているが、あまり参加者はおらず、何も受講せずに終わる生徒が相当数いるようだ。こうした生徒にどう対応し何を届けられるのか、今後の改善点になりそうだ。

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