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走る距離と共に“伸び”が発生するチェーン
バイクのチェーンは定期的な点検と調整が欠かせません。走行距離を重ねていくとチェーンのブッシュ部分やローラーが摩耗します。摩耗はごくわずかですが、チェーンのコマ数分を合わせると大きな「伸び」という形で現れてくるのです。
チェーンの遊び(張り)は、車種によって違うので、適正な遊び量はたいてい説明書に記載されています(一部の車種はスイングアームのコーションラベルに記載されている場合も)。セロー250などのオフロード車はリアサスペンションのストローク量が多いので、チェーンの遊び量は多めの傾向があります。
チェーンの遊びは一般的に無負荷の1G状態で確認することが指定されていますが、チェーン調整後は無負荷状態とシートに座った状態での2パターンで遊び量を確認しましょう。
理由は、バイクにまたがることでリアショックが沈み、フロントスプロケットとリアスプロケットの位置が変わってチェーンの張りが変わるから。
車種によっては、どちらも同じ場合があります。エンジン、フレーム、スイングアームの位置関係によって違いがでます。
走行中、常にリアショックは動いており、路面のギャップを乗り越える際など、リアサスペンションが深くストロークします。そんな時にチェーンが張りすぎているとサスペンションの動きを阻害したり、最悪の場合チェーンが破断することも。
シートに座ってチェーンの遊びを確認し、パンパンに張っているなら無負荷状態での遊びが適正でも、多少緩めておいた方が安心です。
一方チェーンの遊びが多いと、チェーンが外れたり、加減速時にチェーンが暴れて、チェーンやスプロケットの摩耗が進むことになります。チェーンが外れエンジンやリアホイールに絡みつくと、リアホイールがロックして転倒するケースもあります。やはりチェーンの遊びは適正量を維持したいものです。
しっかりとした工具と知識が必要なので、心配な方はお店にお願いすることをお勧めします。
ただしチェックは誰でもできますし、バイクの説明書にチェーンの遊び幅が記載されるなどメーカーも推奨していますので、定期的に点検をしましょう
比較的簡単なスネルカム式のチェーン調整
チェーンの遊び量は必ず上下の振れ幅を確認!
チェーンの遊びをチェックする際に、チェーンを指で上に押し上げて遊びをチェックしている人は多いですが、これでは正確な判断はできません。チェーンは上方向だけでなく、下方向にも振れるので、チェーンの中ほどを摘まんで、上下に動かして遊びを判断するようにします。
セロー250のチェーンの遊びは70mm近くあり、規定値を超えているので調整します。
オフ車に多いスネルカム式とは?
リアアクスルと共締めされている偏心プレートがスネルカムです。目盛りが入っているので、リアアクスルを緩めた状態でスネルカムを動かしてチェーンの張りを調整します。目盛りは必ず左右同一にしないと、ホイールアライメントが狂います。
スネルカム式のチェーン調整前は、マジックで目盛りに目印を付けておくと、何山動かしたかが一目瞭然ですし、左右で目盛りを合わせる際にもわかりやすいのでお勧め。
リアアクスルを緩める
リアアクスルを緩める際は、ナット側を緩めます。さらにレンチの柄を押し下げるようにすると、体重を使うことができるので作業をスムーズに進めることができます。
スネルカムを2山動かしてチェーンを張りました。
反対側のスネルカムも2山動かして目盛りを左右で合わせます。
リアアクスルの締め付け時にはスネルカムのガタを無くした状態で
リアアクスルを締め付ける際は、チェーンとスプロケットの間にT字レンチなどを挟んでスネルカムのガタを消した状態(リアアクスルが前に押し付けられた状態)で締め付けます。もちろんナット側を締めます。
チェーンの遊びを改めて確認する
50mmの適正の遊びに合わせることができました。この状態でバイクにまたがってリアサスペンションを沈めてみましたが、チェーンの遊びは保たれていたので作業は終了。張りすぎだったらスネルカムを1山戻して再度確認します。また、遊びの確認はチェーンの数カ所で同じ遊びが均一かどうかを確認します。
チェーンの張っているところと緩いところが混在する様な場合は、チェーンやスプロケットが偏摩耗していることが考えられます。一旦、チェーンの最も張っている部分で遊びが適正になるように調整して、ショップにチェーンとスプロケットの点検を依頼し、必要ならばチェーンとスプロケットを新品に交換しましょう。
チェーンやスプロケットを長持ちさせる秘訣は適正な遊び量の維持と、小まめなクリーンナップ&グリスアップです。また、急発進や過度なエンジンブレーキの常用も寿命を縮める要因となります。
ここまで読んで、自分でチェックするのも、調整するのも不安な方はお店に相談しましょう。アクスルシャフトのナットを緩める作業には大きな工具が必要。最後に締め付ける際にはできればトルクレンチでしっかり締め付けトルクを管理した方がよいので、工具が揃ってない方もお店にお願いするのをお勧めしますよ。
適切なメンテナンスと丁寧な走りで、駆動系の快調を保ちましょう!