オイル交換といえば、DIYメンテナンスの中でもビギナー向けでかんたんな作業内容であるとよく言われます。

確かに「オイルを抜いて規定量入れるだけ」と、文字にしてしまえば非常にシンプルではあります。

しかし、オイルは「エンジンの血液」と呼ばれているように失敗すればエンジン内部の潤滑不良を招き故障に直結します。

自分でオイル交換(&フィルター交換)を行うなら最低限、正しい知識と以下に挙げるような道具や工具が必要となります。

  1. 車種専用のサービスマニュアル
  2. トルクレンチ
  3. 車載工具以上の精度を持った工具
  4. フィルターレンチ
  5. エンジンオイル
  6. オイルフィルター
  7. ドレンワッシャー
  8. 廃油処理剤
  9. パーツクリーナー
  10. ウェス
  11. 作業に適した服装、手袋
  12. 作業場所

上記以外にも車種によっては様々なものが必要となってきます。すべてを用意するにはかなり出費を覚悟しなければならず、DIYオイル交換へのハードルになるかも知れません。

(ここまで読んで、躊躇する方や不安を持つ方にはお店での交換を強くおすすめします)

知識として知っておきたいオイル交換手順

自分でオイルを交換しないなら、オイル交換の手順を知る必要が無いかというと、そうとも言えません。正しい知識を持っておくことでエンジンの構造やオイルの重要さを認識できる良い機会になるはずです。

ここでは、オイル交換作業手順と共に特に注意しなければならないポイントを解説していきます。

単純作業の中でも経験や知識が必要となる箇所を知ることで、オイル交換をプロに依頼することへの大切さが分かっていただけるかもしれません。

2007年式ヤマハVMAX1200のオイル交換実践

今回オイル交換を行うのは2007年式VMAX1200です。少し古いバイクですが、今のバイクも手順はあまり変わりません。

エンジンオイルを抜く前にオイルレベルを確認します。

オイルレベルはクランクケースに設けられているサイトグラス(覗き窓)で確認する機種か、フィラーキャップ部のレベルゲージで確認する機種の2通りに大別できます。

写真の状態は適正レベルにありますが、オイルが減少していれば漏れやオイルが燃焼室に入って燃えていることが考えられます。

オイル漏れはエンジン外観を確認します。機種によってオイルが漏れやすい箇所があったりするので、多くの機種を扱うショップであればそういった情報を持っていることも多いです。

エンジンオイルが燃焼室内に入って燃えてしまう原因となるのは、ピストンリングとシリンダーの隙間から混入する「オイル上がり」、バルブステムシールから伝って落ちる「オイル下がり」に大別できます。

ドレンボルトを緩める前に、暖気運転をしオイルを温めておくこと、更にオイルの注ぎ口であるフィラーキャップを緩めておきます。オイルが抜けやすくなります。

メガネレンチやボックスレンチを使用してドレンボルトを緩めます。

暖気後の熱いオイルが飛び出してきますので火傷に注意。抜け出たオイルはエンジンコンディションを判断する材料となります。

オイルに鉄粉やガソリンが混入していないか? 異常な汚れが無いか? 粘度は適切か? 白く乳化していないか?

こういった異常は、日々たくさんの抜いたオイルを見ているメカニックならすぐに気付くことができます。一方、自分のバイクのオイルだけしか知らなければ、他に比較できる判断基準が無いので、異常に気づきにくいかも知れません。

抜いたオイルを白いウェスに浸すと汚れ具合がわかります。

廃油の処理は燃えるゴミとして処分できる廃油処理ボックスが便利

自分でオイル交換するなら廃油は燃えるゴミとして出すことができる廃油処理材を使うのがお薦めです(自治体によって処分方法が違いますので注意)。ショップに依頼すれば、廃油処理の心配はもちろんありません。

カートリッジ式オイルフィルター交換には専用レンチが必要

オイルフィルターは専用フィルターレンチを使用して緩めます。マフラーのエキゾーストパイプの間に位置していることも多いので火傷に注意します。

いったん緩んだら手で取り外します。

オイルが抜けきったらドレンワッシャーを必ず新品に交換して、ドレンボルトを締め付けます。

ドレンボルトの締め付けは要注意!

ドレンボルトはまず、締まるところまで手で締めてから工具を使います。

車のオイルパンは鉄ですが、バイクのオイルパンはアルミ製となります。つまり、締付けトルクが強すぎるとネジ山が壊れやすいので充分に注意が必要です。

逆に締め付けが緩いと走行中にドレンボルトが外れてしまったり、オイル滲みの原因となりますので、ビギナーこそトルクレンチを使うことを推奨します。

プロメカニックは締め付け加減が手に染み付いていますし、トルクレンチでしっかり数値管理するのが一般的です。トルクは車種ごとに違います。サービスマニュアルに記載されていますので必ず確認してください。

カートリッジ式オイルフィルターは締めすぎ注意!

オイルフィルターは新、旧を並べてサイズや取り付け径が合っているかどうか良く確認しておきます。

取り付け前にフィルターにあらかじめオイルを入れておくのを指定する機種もありますし、そのまま取り付ける指定となっている機種もあるので、マニュアルで確認しておきましょう。国産バイクであればほとんどの場合、そのまま装着します。

フィルターのOリングには薄くシリコングリスや新しいエンジンオイルを塗布しておきます。Oリングの滑りが悪いと、締め付け時に破断してオイル漏れの原因となります。

カートリッジ式オイルフィルターは締めすぎると、次のオイル交換時に外すのに苦労することになります。「手で締まるとこまで締めればOK」と指定されている機種もありますが、締め付けトルクが数値で指定されている場合は、それに従うようにしましょう。

ドレンボルト、オイルフィルターを適正トルクで締め付けたら、オイル汚れをパーツクリーナーで洗浄しておきます。ここで綺麗にしておかないと、エンジン始動後にオイル漏れがあった場合、見落としてしまうことになるからです。

オイル量は多くても、少なくてもNG!

続いてオイルを注入しますが、オイルは入れすぎても少なすぎてもいけません。入れすぎた場合、適量だけ抜き取るのは大変なので入れすぎには特に注意します。

オイルをこぼすと掃除が厄介なのでオイルの注入時にはじょうごを使うのがおすすめです。

自作ペットボトルじょうごを使用しました。

オイルは使い切れないので余りは処分することに

エンジンオイルは好きなものを使うことができますが、粘度やグレードが車種に合っていないといけません。また、四輪用エンジンオイルはバイクに使用するとクラッチの滑りを招くことがあるので使うことはできません。

今回はヤマハ純正のオイルを使用しました。

オイル量は車種によって大きく異なりますが、ほとんどの場合余りが発生します。開封したオイルは酸化が始まるので、数ヶ月以内に使わないのであれば処分しなければなりません。ショップでは使う分だけ量り売りでオイルを購入できることもあり、その点では非常に経済的なのです。

車種によってオイルレベルの見方は違いますが、多くの場合、車体を直立させた状態で判断します。センタースタンドを装備する車種はセンタースタンドの状態でオイルレベルを判断します。

オイルレベルが規定範囲に収まったら、エンジンを始動します。

オイル交換後はオイル警告灯に注目!

オイル交換後のエンジン始動時はメーターの警告灯に注目します。もし、オイル警告灯が消灯しなければ、オイル経路にエアが噛んでオイルが回っていないことが考えられます。※Vmax1200の警告灯は油圧警告灯ではなく、油量の警告灯なのでオイルさえ入っていれば消灯しますので、油圧不良の判断はできません。

ほとんどの機種のオイル警告灯はメーター周辺に配置されています。

また、エンジン始動後にサイトグラスからオイルレベルが無くなれば、オイルパンのオイルが各部に循環していると判断できます。

エンジンがかかっているにも関わらず、オイルが回っていない状態が続くとエンジンが壊れてしまいます。

オイル交換後のトラブルで怖いのはこのオイルラインのエア噛みです。ほとんどの場合、自然にエアが抜けてオイルが回り、油圧が回復して警告灯は消灯しますが、警告灯が消えない場合はすぐにエンジンを停止してオイル経路のエア抜きを行わなければなりません。

こういった場合、プロメカニックはその場で対処可能ですが、サービスマニュアルの詳細記述やメンテの知識が無いとサンメカでは対処は難しいかもしれません。

アイドリング後に再度オイルレベルを確認

しばらくアイドリングさせた後でエンジンを停止し、エンジン各部に回ったオイルがオイルパンに戻ってくるのを待ちます。

オイルエレメントを交換した場合、エンジンオイルがエレメントに回った分だけオイルレベルが低下します。その分を補充してオイルレベルを適正に合わせた後、フィラーキャップを確実に締めます。

最後にエンジン下回りを確認し、オイル漏れや滲みが無いかを確認します。

最近の機種やスクーターはオイル交換サイクルをメーター内の警告灯の点灯で知らせます。その場合は、オイル交換のタイミングでリセット操作を行わなければなりません。

シンプルな作業の中にも経験や知識が必要になってくるオイル交換

このように、簡単だと言われることも多いオイル交換作業の中にも、経験や技術が必要な部分が少なからず存在します。確かに愛車のメンテナンスを自分で行えば愛着も深まるので、良いことではあるのですが、失敗すればかなり深刻な故障となることもあります。

ここで紹介した、オイル交換手順の中での注意点を知れば、よりプロメカニックに作業を依頼する「意味」と「大切さ」が理解できるのではないでしょうか。

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