Kabutoのフルフェイスに新たな最高峰モデルが登場。その名も「F-17」はレーシングスピードに対応した空力性能とベンチレーション、安全性能が自慢だ。さっそくサーキットと公道でインプレしてみた。
全てを刷新し、空気抵抗を徹底的に削減
レース対応の旗艦フルフェイスであるRT-33が全方位的に進化し、「F-17」として生まれ変わった。従来のRT-33は、3万8500円(税抜 単色)と抑えた価格ながら、空力性能に優れたモデルとして人気だったが、今回のF-17はどうモデルチェンジしているか気になるところだ。
まず簡単にF-17のポイントを解説しよう。
帽体は新設計の多層ファイバー構造で、FEM(有限要素法)構造解析によって各部の強度を最適化。軽さと安全性の両立に成功している。付属品はピンロックシートとチンカーテン、ガラスコーティング剤。ガラスコーティング剤は珍しい付属品で、汚れにくさに貢献してくれるはずだ。
軽快且つ静粛性の高さで、被り心地は快適
手にとってみると重さを感じるものの、被ってみるとかなり軽い。自前のSHOEI Z-8ほどではないが、アライやSHOEIの最高峰フルフェイスより軽快で、大胆に頭を振る動きもラク。残念ながらテスト品は筆者のサイズと異なるため、ホールド感には言及できないものの、全面的に内装を見直し、サポートライダーの多くが「従来品よりも被り心地が良くなった」と回答したという。
走り始めると、同社製シューマのように低速から風を感じるタイプではないが、自然に換気され、ムレにくい。加えて、静粛性が素晴らしい。付属のチンカーテンを装備すれば巻き込み風もなく、静けさがアップ。ロングツーリングでも疲れにくいはずだ。
肝心のエアロダイナミクスはトップクラス!
F-17を試したサーキットは、本サイトでもおなじみの那須モータースポーツランド。最も長いストレートで最高速は160km/h程度だったが、ブレや浮き上がりはほぼ感じなく、非常に安定している。不快な風切り音や巻き込み風もなく、ヘルメットの内側は平穏そのものだった。また、伏せた際の視界も良好だ。
加えて、高速コーナーでバンクが続くシチュエーションで、顔をグイッとコーナー出口に向けて斜め方向からの走行風を受けてもしっかり安定している。
筆者は数あるフルフェイスをテストしてきたが、この空力性能はトップクラスと言っていいだろう。
この長所は、一般道や高速道路でも十分活かされる。走行中、死角の安全確認で首を横に向けても押し戻される感覚が少ない。F-17のように帽体が前後方向に長く、後頭部にスタビライザーが装着されたモデルは、横方向からの風に弱いものだが、こんな状況でもエアロダイナミクスが考慮されているのだから感心する。
内装はアゴひもカバーを含めて脱着可能。サラッとした感触のクールマックス生地を採用し、スポーツ走行で汗をかいても乾きやすいのがうれしい。頬パッドなどにDEOFACTORの制菌加工を施し、眼鏡スリットも備える。
走っていて、ストレスを感じないためライディングに集中できる。サーキット向けとして、これほど最高の性能はないだろう。また、空力性能と静粛性が優秀な上に、インカム用スペースまで備えるので、高速ツーリングにもオススメだ。
アライ、SHOEIより安価ながら性能に大満足
Kabuto自慢のエアロダイナミクスをはじめ、ベンチレーション、静粛性もしっかり進化していたF-17。RT-33から8500円アップし、税込で5万円を突破したものの、その価値は十分ある。
サーキットユースに必要な性能をキッチリ備えつつ、ライバルのレース向け製品と比べて安価なのもポイントだ(アライ・RX-7X=5万6000円、SHOEI・X-フォーティーン=6万円 税抜 全て単色)。F-17はライバルのようにスネル規格を取得しないが、その分重量が軽い印象で、空力性能が高レベル。オススメできる一品だ。