オフロードバイクなどをトランポに積載する時、バックミラーをいちいち取り外さないとクルマに積めなかったりして、面倒です。なので多くのオフローダーが昔から活用してきたのが、可倒式のバックミラー。いくつかのメーカーから出ていますが、ラフ&ロードが取り扱っているRALLY690ミラーは評判も上々。今回、これをクロスカブのミラーと換装することに。取り付けが少々面倒な印象もありますが、手順を詳しくご説明しますのでご安心を!
腕に干渉しにくい三次元ステー
可倒式ミラーのロングセラーとして多くのオフローダーに愛されてきたRALLY690。「畳める」という機能のほかに、ステーが大きく前方に湾曲しているところも利点なのです。
これは三次元ステー機能と名づけられていますが、スタンディングで走行する際、腕にミラーが干渉しにくい形状になっているのです(画像はCRF250L)。
こんなところもオフローダーから高く評価されているんですね。
RALLY690は、右用と左用があります。また、正ネジと逆ネジも用意されていますので、自分のバイクのミラーのネジ穴に合わせて選んでください。メーカー希望小売価格は税抜きで1本1,900円。
RALLY690の構造
RALLY690は、ミラー1本につきナットみたいなものが4つもあるので、最初は取り付けに戸惑ってしまうかも。けれどもパッケージ裏には取り付け方、取り扱い方がくわしく載っていますので、よく読めば理解できるはず。
上の画像をご覧ください。ミラーステーの先端のピロボールが、丸くなっています。ここが丸いから、ミラーステーの角度が自由自在に曲げられるわけです。
①のユニバーサウルハウジングは、ピロボールを保持して固定させるためのナット。これを左右に回すことで、固定力を調整します。
②のハウジングロックナットは、①のユニバーサウルハウジングの緩みを防ぐためのナット。
③のボディボルト(これだけはナットに見えて、実はボルトなのです)はこのミラーの主軸で、車体とミラーを連結するためのもの。
④のボディロックナットは、車体のミラーのネジ穴に、ミラーの主軸を固定するためのナットです。
17㎜のスパナを2本用意
RALLY690を取り付けるためには、17㎜のスパナが2本必要です。1本は固定用、もう1本は締め付け用に使います。17㎜のスパナが1本しかない、という場合は、17㎜のサイズに対応するモンキーレンチを代用してもいいでしょう。ただし肉厚のものは不向きです。
17㎜のスパナが複数本あったとしても、やっぱり肉厚のものは不向き。同じ17㎜のスパナでも、メーカーや用途によって厚みが違います。
左のスパナは、強い力がかけられるロングタイプのため、やや厚みがあります。
真ん中のスパナは、狭い箇所で使うためのショートタイプ。左のスパナよりは薄い。
一番右のスパナは、多用途に使える標準タイプで、もっとも薄い。
RALLY690のナット類は①のユニバーサルハウジング以外が薄いので、肉厚のスパナは向かないのです。
まずはグリスアップ
RALLY690を車体に取り付ける前に、まずはピロボールをグリスアップします。
③のボディボルトをスパナで固定し、①のユニバーサルハウジングをもう1本のスパナで緩めると、上の画像のように分離できます。
ボディボルト側には、プレッシャースプリングと呼ばれるバネが入っています。このバネでピロボール側をユニバーサルハウジング内に強く押し込み、固定するのですね。強く固定はするけれども、バネだから、限度がある。ミラーステーを動かそうと力を加えれば、てこの原理で力が増幅し、ピロボールが回転する仕組み。
ラジオペンチ(ロングノーズプライヤー)でつまんでいるのは、ピロボールの先端に引っ付いていたユニバーサルプッシュ。ばねの力をピロボールへ、面で伝えるためのもの。グリスでひっついていただけなので、指でも取れます。
ユニバーサルプッシュを外して、ピロボールをグリスアップします。筆者はペーパーウエスにグリススプレーを噴射したもので、ピロボール表面をグリスアップしました。
ベトベトにつけすぎるとホコリや砂が付着して、ピロボールの動きが渋くなるので、グリスを塗るのは少量のみ。
塗り終わったら、ユニバーサルプッシュをくっつけ、元の状態に組みます。分離させていた③のボディボルトと、①のユニバーサルハウジングを、元通りにするのです。
純正ミラーを車体から外す
さあ、いよいよミラーの交換です。
まずは純正ミラーを取り外します。クロスカブ110の場合、ミラーだけを取り外すと、車体側に逆ねじアダプターが残りますから、このアダプターも取り外してしまいます。作業が二度手間にならないよう、ミラーは逆ねじアダプターごと取り外すといいでしょう。そうすれば外す手間は一回で済みます。
RALLY690を車体に取り付ける
RALLY690を、ミラーのネジ穴にねじ入れていきます(ナメないように慎重に!)。
奥までねじ込んだら、上から4番目、④のボディロックナットを仮締めします。
仮締めが済んだら、②のハウジングロックナットを緩め、①のユニバーサルハウジング(画像)を左右に回し、好みの強さに調整します。画像ではスパナが1本ですが、それは分かりやすくするため。こうした作業の際、別のナットやボルトが緩むようなら、もう1本のスパナを使って固定してください(以下同様)。
好みの強さに調整したら、②のハウジングロックナット(画像)を締め込み、①のユニバーサルハウジングをロックさせます。締め込むことで、ピロボールの締め付け強度が変化するのでご注意を。大きく変化しすぎたら、ハウジングロックナットを緩め、ユニバーサルハウジングの調整からやり直しましょう。
ここまで来たら、今度は「切り溝」の位置調整です。
1番下、仮締めしてあった④のボディロックナットを緩め、①のユニバーサルハウジングの切り溝がハンドル中央部を向くよう、③のボディボルトを回して調整します。
調整が終わったら、一番下、④のボディロックナットを締め込んでロックさせます(画像)。
これでミラーステーの固定は終わりです。少々メンドくさいけど、構造を理解すればラクに作業できるはず。要は①と②、③と④がペアとなって連携して作用している、ということでしょう。
これでバックミラーが可倒式になりました。トランポへの積み下ろしもカンタンです。また、立ちゴケしたときなどは衝撃を受け流してくれるため、ミラーが損傷しにくくなります。
RALLY690はフルアジャスト機能付き。ねじを緩めれば、ミラーを好みの位置にアジャストすることができます。
体格の大きいライダーは、ミラー位置を左右に広げると、後方確認がしやすくなるでしょう。
バイク便のライダーだったら、逆にミラーの張り出しを抑えてタイトに狭め、すり抜けしやすくする手も。
今回はなるべく詳しく、少しでも分かりやすく説明したかったので、文章の量がかなり多くなってしまいました。最後まで読んでくださった方、お疲れさまです。ありがとうございました。
バックミラーなんて、そもそも純正の状態で可倒式だったらいいのにね(特にオフロードバイクの場合)。ではまた。