さあ待望の春が来た。来週には桜も開花しそうだし、お気に入りの革ジャンを羽織ってバイクで出かけますか! てな気分ですが、その前に。革ジャンのお手入れ、してますか? 長く使える革ジャンも、手入れをサボれば寿命が縮まります。じゃあ、どうすればいいのか。今回は老舗の革ジャン屋さん「ペアスロープ」で、正しいメンテナンス方法を教わってきました。

「ペアスロープ」東京本店へ

 向かった先は東京都大田区の環状7号線沿い、今年で創業40周年を迎える「ペアスロープ」東京本店。メイドインジャパンにこだわり、素材も縫製も徹底的に最高品質をめざしている革ジャン屋さんです。
 筆者も1980年代からお世話になっているお店。革ジャンについて尋ねるならここしかないなと、愛用のペアスロープ製「DML-82」ライディングショートコートを着用してやってきました。

ペアスロープ

 来店するのは8年ぶりぐらいかなあ。お店の横にある二輪専用駐車スペースにバイクを駐め、入り口のドアを開けると代表の三橋弘行さんがいらっしゃいました。で、白髪交じりの筆者の頭を見るなり開口一番「ジジイになったなあ!」。お互い様だっつーの。
 店内にはやたらとクオリティの高い革製品がズラリ。いい匂いです。革ジャン、革パン、グローブ、ブーツ、バッグ、ハンチング、革財布、キーホルダー。革製品の質の高さは、匂いでも分かるものです。

ペアスロープ

しょ、植物性オイル!?

 革製品を長持ちさせるために必要なのが、保革油。もともと革にはオイル成分が含まれていますが、使っているうちに徐々にオイル成分が抜け、革本来の柔軟性がなくなっていきます。それをそのまま放置していると革の繊維までがパッサパサになって劣化。そんな革ジャンじゃ、万が一バイクで転倒した際の防御能力も最悪に。だから年に一度ぐらいは、保革油を塗ってあげないといけません。

「で、スゴーさんはどんなオイルを塗ってるの?」と三橋代表。 
「以前、ミツハシさんに『これ、いいよ』と教えてもらったマスタングペーストですけど」
 マスタングペーストとは、動物性オイルではもっとも浸透力が高いといわれている天然のホースオイル(馬油)から精製された保革油です。すると……。
「それもいいけど、今、ウチはこれ使ってる」

革ジャン

 見せられたのはドイツ製の、コロニルというレザーケアブランドの商品。

右:表革用クリーナー「ライニガー」。汚れや油脂、カビをふきとるためのもの。スプレー式。
中央:1909シュプリームワックススプレー。フッ化炭素樹脂、ビーワックス、ラノリンを加えたブレンドオイルを含む防水スプレー。皮革全般に使えるが、特に鹿革製品にはお薦め。
左:1909シュプリームクリームデラックス。皮革への浸透力の高いシーダーウッドオイル、ラノリンなどの天然オイルを配合した皮革のための最高級栄養クリーム。

「スゴーさんの『DML-82』は牛革だから、一番左の『1909シュプリームクリームデラックス』がおすすめだな」
 なるほど、と思いつつも、シーダーウッドオイルというのが気になりました。シーダーウッド? シダーウッド? これ、植物性オイルってことですか?
「そうなんだよ。スギ属の樹木から抽出した油を主原料とした植物性天然オイルで、クリーム状で塗り延ばしやすさはピカイチ。浸透力が高くて、ベトつかないのも利点なんだ」
 1909シュプリームクリームデラックスのお値段は3300円。容量100mlで革ジャンのメンテなら10回程度は使えるというので、さっそく購入。1年に1回330円分の保革油を塗るだけで革ジャンが長持ちするなら、安いものでしょう。
 いやしかし、革には動物性オイルがいいとばかり思っていましたが、目からウロコです。

まずは革ジャンの汚れを落とす

革ジャン

「オイルを塗る前に、革ジャンについたホコリや汚れを落としてやること。専用クリーナーを使うのが一番いいけど、水で濡らして固く絞ったタオルで拭く、というのでもいいよ」
 ホコリまみれの状態であれば、タオルで拭く前にブラシをかけるのがいいそうだ。特に縫い合わせのステッチ部分や、革と革が重ね合わさって段差がある部分。
 全体を拭き終わったら、タオルから革に移った微量の水分を飛ばすため、30分以上は乾燥させること。なるほど。

保革油はごくわずかに塗る

「保革油を塗る際は、暖かい部屋で。そのほうがオイルの伸びがいいからね。そして保革油をきれいな布につけて、薄く延ばすように、ていねいに塗る。このとき、塗りすぎないように注意すること。革の表面にオイルが残ると、そこにホコリがくっついちゃう。でもこのオイルは浸透性がすごく高いから、塗って1分ぐらい経つと、見た目じゃわからないぐらいに染み込むんだ」

革ジャン

 二の腕の部分に保革油を塗って、1分ほど待ってみる。すると……。

革ジャン 

 おーっ! なんちゅう浸透力の高さ。どこに塗ったのか、判断できないほど。
 でも指で触ってみると、全体的にパサついている袖の一部に、油分を吸ってしっとりと柔らかくなっている箇所があるのがわかる。
 これはすごい。植物性の保革油、恐るべし。

保革油も適材適所ということ

「いやいや、安いミンクオイルも、使う箇所によっては有効なんだ。たとえばファスナー開口部や袖口など、革の表面が擦れて白っぽく削れた部分」

革ジャン

「こういうところは指に少量のミンクオイルをつけて、塗りこんでやればいい」

革ジャン

 なるほどなるほど、無色のミンクオイルを使っているにも関わらず、革の色が少し濃くなってきた。また、革の表面をミンクオイルで保護することで、さらなる「擦れ」にも対処しようってことかあ。

革ジャン

「それと大事なのはハンガー。革ジャンを保管する際のハンガーは、革ジャンが型崩れしないように、肩の部分が大きく厚いものを使うといい。あとは保管場所。風通しの悪いクローゼットではなく、部屋の壁に吊るすなどの工夫が必要だね」
 いやあ、勉強になりました。これで筆者の革ジャンも、まだまだ長く着れそうです。

ペアスロープ

 今回、革ジャンのメンテナンス方法を教えてくれた三橋代表。「ペアスロープ」創業40周年ということで、この3月、記念の春夏カタログも完成しております。

ペアスロープ

 カタログをもらいにお店へ行くのも良し。ペアスロープ製品やメンテナンスなど、膨大な情報量を有しているホームページを見てみるも良し。ホームページでは、今回ご紹介した保革油のネット通販も行なっていますので、興味のある方はぜひ!
※「ペアスロープ」東京本店:東京都大田区上池台4-1-1
営業時間:AM11時~PM7時
定休日:火曜・水曜(祝日は営業)

■ペアスロープ

 

 

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