栃木県那須塩原市にある2輪専用のサーキット、那須モータースポーツランド(以下、那須MSL)。このサーキットでスポーツ走行を楽しむためには、那須MSLで講習(座学・車検・実技走行)を受講して「オンロードライセンス」を取得する必要がある。そのうえで後日、サーキット走行の予約申し込みを入れ、那須MSLへ再び出かけるという流れだったのだが、今年2025年からはもっと手軽で安価にサーキット走行を楽しめるプログラムが登場した。それが「那須MSLスキルアップ走行会」だ。
那須MSLスキルアップ走行会とは!?
筆者(私・菅生)は他のForR執筆者と一緒に、この「那須MSLスキルアップ走行会」のプレ開催に参加してきたので、その内容をご報告したい。
「那須MSLスキルアップ走行会」とは、那須MSLの「オンロードライセンス取得」と「スポーツ走行(15分×4本)」をパッケージにした走行会で、ライセンスを取得したその日にそのまま続けてサーキットランが楽しめるというもの。しかもレッドバロン会員・一般ライダーともに、通常料金の30%オフでライセンス取得・スポーツ走行が可能。
参加できる車両は〈125cc以上の公道走行可能な車両〉で、料金はレッドバロン会員 で1万円(一般ライダーは22,000円)。1万円でオンロードライセンスが取得でき、しかもスポーツ走行がその日のうちに4本(1本15分)もできるのだから、安いというものだ。
サーキット走行は楽しくて安全
スポーツ走行なら、峠のワインディングでも楽しめる? そうかも知れないが、楽しさの奥深さと安全性については、サーキットははるかに格上だ。
一般道と違い、サーキットには対向車も歩行者もいない。だから事故の心配は大きく減る。しかも車線の幅いっぱいに走行ラインを取ることができるので、よりスポーティな走りが楽しめる。万が一、転倒したとしても、サーキットにはスタッフも仲間もいるのだから、すぐに対応してもらえるというメリットもある。
那須MSLは全長1.2km。ほぼ直角の第1コーナーを抜けると281mのバックストレート、第2コーナーから先の第3・第4コーナーはS字カーブで、その後はヘアピンカーブや高速コーナー、逆バンクまであったりして、実に楽しい。
そして、こんな本格的なサーキットを、「那須MSLスキルアップ走行会」のビギナークラス参加者であれば、革ツナギじゃなくても走行可能というのだから、気軽じゃないですか。
ビギナークラスより上のクラス(後述)ならば〈革ツナギ・レーシングブーツ・レーシンググローブ〉は必須だけれど、ビギナークラスは〈背中/肘/膝にパットやプロテクターの入ったジャケット・パンツくるぶしが隠れる高さと踵があるシューズ・指のあるグローブ〉でもOK。
なのでぜひ気軽に、サーキットでなければ味わえないライディング・フィールを感じ取っていただければと思う。今年度は第1回の開催が6月7日、第2回が8月30日に予定されている。
タイムスケジュールその①
「那須MSLスキルアップ走行会」は、6時45分から受付と車検が始まる。
受付を済ませたら、車検の準備だ。
受付で渡されたクラス別のゼッケンを車両のフロント部に貼り、ヘッドライトやウインカー、テールランプなどに養生テープを貼る。バックミラーは取り外さなくてもいいが、筆者は外した。バックミラーを取り外すと前方が広範囲に確認でき、スポーツライディングがよりしやすくなるためだ。
準備が終われば、いよいよ車検。スキルアップ走行会に参加できる状態かどうか、ネジの締め付けチェック、音量測定、オイル漏れ確認など、係員の方に車両を検査してもらう。
装備品のレンタルも
那須MSLでは、装備品(ヘルメット・革ツナギ・レーシンググローブ・レーシングブーツ・プロテクター)のレンタルも行なっている。
ビギナークラス参加であれば、前述の軽装備でもOKだが、その上のノービス、セミミドル、ミドル、セミファースト、ファーストの各クラス参加者は、フルフェイスヘルメットであることはもちろん、革ツナギ・レーシングブーツ・レーシンググローブは必須。持っていないという方は、レンタルを利用しよう。料金は実に良心的で、革ツナギ(インナースーツ付き)を1日レンタルしても千円(レッドバロン会員の場合。一般のお客様は1,400円)。革ツナギ・レーシングブーツ・レーシンググローブの3点セットで1日1,500円(レッドバロン会員の場合。一般のお客様は2,500円)。
あまりに安いので筆者も3点セットをレンタルし、パドックに持ち込んだ。革ツナギを手にパドック入りするなんて心ときめくものがあるが、次は大切なブリーフィング。気持ちを引き締めなければ!
タイムスケジュールその②
8時から8時30分まではファースト・セミファースト・ミドルクラス参加者のブリーフィング。8時30分から9時まではセミミドル・ノービス・ビギナー参加者のブリーフィング。
コースの説明や、各種フラッグの意味や振られた場合に取るべき行動などを習う。サーキットライセンスを取得するための大切な講習だ。
そして今回のインストラクターを紹介してもらう。全員が、全日本選手権や鈴鹿8耐に出場のレーシングライダーや、ライディングスクールの運営に携わる経験豊富なインストラクター。こうしたライディングのプロに、走りのアドバイスを受けられるところも「那須MSLスキルアップ走行会」の魅力。
タイムスケジュールその③
ブリーフィングが終われば、いよいよサーキット走行。9時から16時まで、ファーストからビギナーまでの6クラスが1本15分ずつ、各クラス4本のサーキット走行を行なう。
コースインの際は、どのクラスで参加してもインストラクターが先導してくれるから、これがありがたいのなんの。
プロがどういうライン取りで走行するのか、どこでブレーキングし、どこでスロットルを開けるのか、各コーナーで学ぶことができる。
法定速度に縛られないサーキットだと、ふだん乗っている愛車がいつもと違う表情を見せてくれる、というところも楽しい。
クルマも歩行者もいない、バイク専用のサーキット。愛車の持つポテンシャルを最大限に引き出すことができる環境がここにあるわけだ。
1本15分の走行タイムが終われば、次の順番が回ってくるまでは休憩したり、他のクラスの参加者の走りを見学したり、自由。
時間が許せば、インストラクターに走りのアドバイスを受けることも可能だ。
ForRの各執筆者も根っからのバイク好きだから、みんな熱心に話を聞いていた。
筆者もバイク歴は40年以上と長いほうで、こうなると長年のクセみたいなものが知らぬ間に身についてしまったりもするもの。
この日は走行中のライディングフォームから、ブレーキングへ移行する際の身体の使い方など、いろいろとおさらいさせていただいた。
免許を取得したばかりの初心者でも、サーキットでの走行経験が豊富で走りに自信がある方でも、そして筆者のようなシニアのライダーでも、誰でも気軽に参加できる「那須MSLスキルアップ走行会」。サーキット走行を楽しむと同時にライディングのスキルアップにもつながる、いい機会となった。ここで学んだことは、いつもの公道にも活かせるはずだ。