バイクのインプレッション記事やバイク乗り同士の会話で出てくるバイク専門用語。よく使われる言葉だけど、イマイチよくわからないんだよね…。「そもそもそれって何がどう凄いの? なんでいいの? そのメリットは!?」なんて今更聞けないし…。そんなキーワードをわかりやすく解説していくこのコーナー。今回は車体のブレーキ系のお話、 『ダブルディスク』だ。
そもそも『ダブルディスク』とは?
ダブルディスクとは読んで字の如く、ディスクブレーキがひとつの車輪に対し2セット装備されていることを示している。シングルディスクのバイクに対して「フロントにブレーキが2セットも付いてるんだぜ!? すげーだろ?」という非常に単純明快な話である。国内メーカーの現行ラインナップでは、125〜250ccのクラスにダブルディスクのバイクは存在せず、ラインナップ自体が少ないということもあるが400ccクラスでもダブルディスクを装備するのはスズキのバーグマン400ABSとCB400SFシリーズぐらい。500cc以上になるとモデルによってはぼちぼち装着されはじめ、1000cc以上のバイクになると装着率はほぼ100%で、ホンダのレブル1100以外のモデルは全てダブルディスクだ(2021.12月現在)。
蛇足になるが、リヤブレーキにダブルディスクを装備するバイクはない…というか必要ないし、付ける意味がない。というのもバイクのブレーキは、進行方向に対して重心位置よりも後ろにあるリヤブレーキよりも、重心の前にあるフロントブレーキの方が物理的によく効く。これはブレーキ作動時に路面へタイヤを押し付ける力 、“荷重” が、フロントの方がよくかかるため。だからフロントブレーキはよく踏ん張り、強い制動力を発揮できる。一方、リヤブレーキは荷重がかかりにくく、強いブレーキをかけてもタイヤが地面に踏ん張れないため、早々とロックしてしまう。つまり、リヤ側にダブルディスクのような強力なブレーキシステムを装備しても、ロックするばかりでバイクを止められないからシングルディスクでOKってことだ。それもフロントブレーキに比べてディスク径が小さく、効きもほどほどで十分というわけなのだ。
ダブルディスクはなにがスゴイの?
『それだけ速い、もしくは重いバイクの証拠』
…ってことだ。物理の法則として同じ速度で移動する物体を停止させる場合、軽い物体よりも重い物体の方が停止させるためにより強いブレーキ力が必要になる。また一方で車体が軽くても性能が高くスピードが出るバイクにはそれだけ“短い距離で制動する”高性能なブレーキが必要だ。“だったらブレーキシステムは1つより2つあった方が強力だよね!”というシンプルな理屈で“ダブルディスク”になっている。確かにディスクブレーキは重たい金属の円板に金属の塊のようなブレーキキャリパーで構成されている為、2コより1コのシングルディスクの方が軽量化やコストダウンという意味では有利なのだが、ダブルディスクを装備するのはその重量増を加味してもブレーキ強化が必要であると判断されたバイクということだ。
逆説的に言えば、ダブルディスクを装備したバイクは、それだけ高い速度が出るハイスペックなマシンか、排気量が大きく重たいバイクかのどちらかってことになる。
またW800のように、大型バイクであってもダブルディスクを採用しないバイクも存在する。これはW800がロードスポーツ性重視のバイクというよりは、レトロなデザインや味わいなど雰囲気を重視したキャラクターであるからだ。同様の理由でレブルシリーズなどのクルーザー系のモデルもシングルディスクであることが多い。
もしあなたが、“大型バイクに乗りたいけど速く走ることに興味はないし、そこまでスポーツ性の高いバイクはいらないなぁ…”と思っているのであれば、ダブルディスクのモデルではなく、シングルディスクのモデルを選んでおけば、“こんなにスポーティで乗りにくいバイクだとは思わなかった!”なんてことも少ないだろう。逆に速度の速いハイスペックなマシンが欲しいなら、同排気量帯で同じようなスタイルのバイクなら、シングルディスクよりもダブルディスクのモデルを選んでおけば概ね間違いないぞ。
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