ディオ110はこの10年でPCXに負けじと進化を重ねている

ちょうど10年前の2011年、私はヤングマシンの取材で借りたディオ110とPCXを比較試乗していた。その時のインプレの締めは「19万9500円のディオ110と29万9250円のPCX。同じホンダの原2スクーターでもきっちり棲み分けができていることが分かりました」というもの。

現在、ディオ110は24万2000円でPCXは35万7500円。ホンダは、当時から今に至るまで10万円の差をつけてこの2台を販売しており、コンセプトや装備に差をつけている。しかし、10年後の2021年に試乗してみるとディオ110がPCXに接近している部分があり、意外な発見だった。

実はディオ110はPCXと同様、2021年にフルモデルチェンジしたのだが、メディアではあまり取り上げられていない。私も乗ってみて「何か違う!?」と後からプレスリリースを確認したくらいだ。基本的にはキープコンセプトでも外観からエンジン、フレーム、装備に至るまで新しくなっているのだ。

まず、単純に分かる装備面は、アイドリングストップ機構(2015年型から採用)とスマートキー(2021年型から採用)が最新のディオ110には装備されており、PCXとの差が埋まっている。実際これらの変更は、乗り物としての上質さを体感しやすい部分であり効果は大きい。

2021年型でフルモデルチェンジしたばかりのホンダ・ディオ110。新しいエンジンはロングストローク化しフレームも刷新。新たにスマートキーも採用している。

ライダーの身長は170cm、ステップスルータイプのベーシックなライディングポジション。窮屈さはないが、足が伸ばせないので長距離移動は苦手だ。

ライダーの体重65kgで足着き性はかかとまで接地する。シートはスリムな印象。

2011年7月に取材した時の2台。PCXの約1年後にディオ110がデビューした。正直、PCXに対してディオ110は劣る部分が目についたが、冒頭の通り「10万円差」で納得した。

走りもPCXに接近! 10万円差のお得感はさらに高まる?!

そして、10年を経てディオ110に乗った私は、進化した走りにも感心することになった。まず、ディオ110はデビュー当時からの基本装備としてPCXで話題になった大径14インチホイールを装着しており、私は「おおらかでありながら小さく回るのに絶妙な設定。今後のスタンダードになりそうな印象」と書いている。

ディオ110は、10年前から同じホイールサイズを継続しており、14インチのおかげで多少の轍や凸凹があっても車体が落ち着いているのがありがたい。当時馴染みの薄かった14インチは、今ではすっかり定着し、さらに2021年型はフレームを従来のパイプからプレスにして特に縦方向の剛性を高めているのだ。

新型ディオ110は、新型PCXと同様にフレームを強化することでサスの吸収力をより高めて、荷重がかかるコーナーでの安定感につなげている。実際、走りがとても良いというのが一番の印象で、PCXが新型でよりスポーティになったのに近いものを感じる。

走っていて「お、まるでPCXだな」と感じられる瞬間があり、ホンダのスタンダードスクーターにおける進化の方向性が見て取れるほどベクトルは一致。走りにおいても新型ディオ110はPCXに接近していると言えるだろう。

前後ホイールは14インチで、新作の8本スポークを採用。タイヤサイズは前後とも変更なし。

高張力鋼板を使用した新設計フレーム「eSAF」を採用。従来の鋼管フレームから加工精度の高いプレス成型としレーザーで溶接。アンダーボーンタイプながら高剛性&軽量化している。

エンジンの差は埋めがたく…パワーにこだわらなければ買い

これだけ良く出来ていている新型ディオ110だが、惜しいのは非力さが目立つエンジン。PCXに比べて15㏄の排気量差と、水冷、空冷の差もあり、どうしてもダッシュ力と高速域でのパワー不足は否めない。最高出力もPCXの12.5PSに対して8.7PSと明確な差があるのだ。

パワーは交通の流れをリードするにはあと一歩という感じで、車の流れに合わせる方が向いている。それでも必要十分な性能は確保しており、通勤、通学には充分事足りるはず。また、新設計のエンジンは振動が少なく、アイドリングストップも備えていることで渋滞が多いルートでは燃費の良さが期待できるだろう。

他にもディオ110は、足元がステップスルーなので荷物が置けるのもメリット。10年かけて進化し続けてきたことで、とても優秀なスタンダードモデルに成長しているのが分かった。

ディオ110の空冷エンジンは、2015年型でACGスターターを採用してアイドリングストップを採用。新型はボア×ストロークを変更して低中速域の出力とトルクを向上させている。

シート下にはジェットタイプのヘルメットが1個収納可能。

脱落防止タイプではないがコンビニフックも装備。ステップスルーなので足下に荷物を置くこともできる。

ウイング状のリアキャリアには穴が空いておりケースの装着を想定。またフックもあるので、荷物の積載も可能だ。

2021年型から採用されたスマートキー。PCXと同じものだ。

アナログメーター+液晶(距離計、燃料計)のメーターは表示切り替えのないシンプル設計。緑に光るエコインジケーターも付いている。

2021年型ホンダ ディオ110主要諸元

・全長×全幅×全高:1870×685×1100mm
・ホイールベース:1255mm
・シート高:760mm
・車重96kg
・エジン:空冷4ストローク単気筒SOHC109cc
・最高出力:8.7PS/7500rpm
・最大トルク:0.92㎏m/5750rpm
・燃料タンク容量:4.9L
・変速機:Vマチック無断変速式
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=80/90-14、R=90/90-14
・価格:24万2000円~24万5300円

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