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10年前の試乗記と変わらぬ印象にコンセプトの確かさを感じる
今回、最新型の記事を書くにあたって、初代PCXが登場して1年後、2011年当時のブログを読み返してみた。ちょうどディオ110がデビューした時で、2台を乗り比べたものだ。その時に書いたことと同じ印象を10年後の今でも感じたことに、PCXの人気の秘密があるだろう。
「PCXはワイドでアップなハンドルと足が伸ばせるスペースがあるので、ビッグスクーターのポジションに近いです。さらにお尻の部分にストッパーがあるので足を伸ばしてぴったりバイクと一体化します。ハンドルの位置も自然なので、普段走る距離が長い人はPCXを選んだ方がいいでしょう」と書かれており、これこそ初代からパーソナルコンフォートサルーンを標榜するPCXの真価と言える。
コンパクトなサイズでも250のビッグスクーターと同等の快適性が得られること。初代から現在に至るまでPCX人気の理由はここにあるが、最新型ならではの特徴ももちろんある。それがスポーツ性の高さであり、スクーターというよりスポーツバイクのような走りなのだ。
新型PCXはスクーターの形をしたスポーツバイク!?
快適なライディングポジションに加えて初代PCXで画期的だったのは、14インチホイールの採用で、従来12インチが主流だった125スクーターに安定感のある走りをもたらした。ホイールの径が大きくなることで荒れた路面でも挙動が安定するだけでなく、ハンドリングも従来のスクーターからバイク的なものに近づいた。
これに加えてスポーツ性も高まったのが、2018年型の3代目で、フレーム形式がそれまでのアンダーボーンからダブルクレードルタイプに刷新されたのだ。2021年型の4代目はこれをさらに改良しており、よりスポーツ性を強めている感じだ。それが表れているのがタイヤサイズで、前後とも10mm拡大しさらにリアサスはストロークを10mm延長。新型はコーナリングがより楽しい! と感じられるものになっている。
新型PCXは移動の道具として便利で快適なだけではなく、バイクの面白さまでも十分味わえるものになっているのだ。正直ここまでやる? と思うのだが、開発責任者は「PCXのように気軽に乗れるスクーターにバイクらしい味付けをすれば、操る楽しさを知ってもらう機会になります」とその狙いを語ってくれた。
何せ、125だけでも年間1万7000台と日本で一番売れているモデルだけに、これがバイクファンを醸成することになれば、ホンダにとってもプラスになる。加えてPCX150を合わせると国内で2万台以上(ともに二輪車新聞調べ、2020年)、さらに海外を入れると45万台(ホンダ調べ、2019年)に達するので、PCXの走りをよりスポーティにすることは重要な使命になるのだ。
トラクションコントロールも導入! 充実しすぎなくらいの豪華装備
PCXのセールスポイントで欠かせないのが装備の豪華さだ。初代モデルからアイドリングストップ機構を採用し、2014年の2代目はフルLEDヘッドライトをいち早く導入。2018年の3代目ではスマートキーも用意し、最新の2021年の4代目ではトラクションコントロールシステムも装備している。大排気量車並みの技術を次々と取り込んでおり、オーナーの所有欲を満たしているのだ。
また、細部にわたる“おもてなし”も素晴らしく、4代目の技ありポイントは燃料給油時にタンクキャップを置くことができるスペースを蓋の裏に追加したこと。ちょっとした工夫だが、セルフスタンドで給油するときに重宝する装備だ。他にもシートが半開のまま固定できるのにも作り手の良心が感じられる。
フロントポケットにUSBタイプCソケットが追加されたので、走りながらスマホの充電ができるようになり、ナビなどを表示させる際に便利。シート下のスペースは28→30Lに拡大しており、これら地道な改良が全てユーザーの満足感を高めることに結びついている。価格は、本体価格で32万5000円と従来の8000円アップとなるが、新型ではABSが標準装備になっているのでコストパフォーマンスはむしろ向上していると言える。125スクーターで不動の人気をますます盤石なものとするだろう。
2021年型ホンダPCX主要諸元
・全長×全幅×全高:1935×740×1105mm
・ホイールベース:1315mm
・車重132kg
・エンジン:水冷4ストローク単気筒SOHC124cc
・最高出力:12.5PS/8750rpm
・最大トルク:1.2㎏f・m/6500rpm
・燃料タンク容量:8.1L
・変速機:Vマチック無断変速式
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=110/70-14、R=130/70-13
・価格:35万7500円