BMWの4輪スポーツ最高峰モデルに与えられる「M」の称号を冠したスペシャルマシンが2輪としては初登場した。スーパーバイク世界選手権への参戦も担うことになった「M1000RR」の実力を、ホンダCBR1000RR-RとBMW S1000RRを相手に全開テスト。まずは走行前に3車のディテールを徹底比較する。

●まとめ:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:BMWモトラッド

スタイリング:チタンマフラーやビレットパーツ満載

【BMW M1000RR】基本スタイルはベースとなるS1000RRを踏襲するが、フレームやスイングアームはサーキット向けの改良を受けており、ホイールベースも延長。テスト車はMコンペティションパッケージ装着車で、カーボン製の前後フェンダー/サイドフェアリングアッパー/タンクカバー/チェーンカバー/アルミ鍛造左右レバー/エンジンプロテクターなどが装備されている。

【HONDA CBR1000RR-R】レーシーなフォルムで、軸距1455mmはMとSの中間となる設定。ボックス型ウイングレットはカウルに内蔵されるようなデザインだ。テスト車はオーリンズ製電子制御サス装備となるSP。

【BMW S1000RR】アクラポヴィッチ製マフラーはMと同形状だが、チタン製のMに対してこちらはステンレス製で約3.6kg重い。車両は鍛造ホイールや電子制御が強化されるレースパッケージ装着車だ。

【M1000RR】スペシャルマシンの証であるボックス型ウイングレットが際立つフロントビュー。灯火類はすべてSと同じLEDタイプを使用する。マフラーは内側に追い込まれてスリムな横幅を実現。

ライディングポジション:足着きの厳しさは1番

【M1000RR】サスペンションの沈み込みも少なく、全体的に車高が上がっている感じで、足着きはちょうど親指の付け根くらい。前傾姿勢はスーパースポーツなり。ハンドルは絞られているがタレ角はあまりないので、比較的ツーリングでも乗りやすい。クラッチは容量が増えているのかレバーはSよりずいぶん重たい。[身長168cm/体重58kg]

【CBR1000RR-R】シートに横幅を感じるが、足着きは両足腹までとSと同等レベル。跨って起こすときは意外と軽い。ただハンドルが遠い/低い/タレ角が強めと、渋滞の中で走るにはかなり辛い。ステップも高い位置にある。スーパーバイクレーサーそのまんまの雰囲気を持ってきた印象だ。

【S1000RR】ハンドル位置も含めて上半身の感触はMと一緒だが、車高は低く両足はつま先の腹まで地面に着く。ステップ位置もMより若干低めで前にあり、バー本体も長くレーシー度ではMに負ける。クラッチの軽さは3台の中でもっとも軽く、公道走行の上では助けられた。

エンジン:いずれも直4だ

【M1000RR:212ps】専用ヘッド/ピストン/ファンネル/チタンコンロッドなどで最高出力発生回転数で1000rpm、レブリミットは500rpm引き上げられている。

【CBR1000RR-R:218ps】完全新設計でクラス最強馬力を奪取したCBR。こちらもチタンコンロッドを採用するなど作りはレーシー。ボア×ストローク寸法はRC213Vと同じ値。

【S1000RR:207ps】Mにも継承されたBMW独自の可変バルブタイミング機構・シフトカムを持つ。そのバルブはチタン製と、Mに負けずレーシー。後軸馬力でもカタログ値に迫る。

【M1000RR[上]/CBR1000RR-R[中]/S1000RR[下]】サイレンサーは3台ともアクラポヴィッチとの共同開発。MとSは同形状だがMはチタン製で、マフラー単体で約3.6kg軽い。サウンドはどれも高回転で迫力あるものを奏でるスーパースポーツらしい雰囲気だ。

サスペンション&ホイール:M1000RRは足まわりもレーシー

【M1000RR】M専用にチューニングされたマルゾッキ製フルアジャスタブルサスペンションを採用。減衰力調整は機械式だが、サーキット向けセッティングが秀逸なデキだ。

【CBR1000RR-R】RR‐RのSPにはオーリンズ製の電子制御サスペンションを装備。リアルタイムで減衰力を自動調整し、走行中でも状況の変化に対応できるようになっている。

【S1000RR】Sもマルゾッキ製サスペンションだが、レースパッケージには電子制御サスペンションのDDC(ダイナミックダンピングコントロール)を装備。わずか10msで減衰力を調整する。

【M1000RR】Mの優れた運動性に大きく貢献しているのがカーボンホイール。バネ下および回転質量の低減効果は計りしれない。また、専用の青いモノブロックキャリパーを装着。その正体はハイスペックのニッシン製だ。

【CBR1000RR-R】CBRは鋳造製。サーキットと公道用それぞれのタイヤ装着時での車体姿勢変化を抑えるためリア200/55ZR17を採用。

【S1000RR】今回はレースパッケージに含まれる鍛造ホイールを装着。カーボンホイールのMパッケージも用意されている。

その他装備

ウイング:MとRR-Rには翼がある!

【M1000RR】先端にウイングチップを装備したボックス形状の「Mウイングレット」はカーボン製。300km/hでは公称で前後合計16.3kgのダウンフォースを発生する。

【CBR1000RR-R】より小さな翼面積で最大の効果を発揮するべくカウルサイドに縦3枚の翼を内蔵する形としたボックス型ウイングレットを採用。

メーター:M&SはどデカサイズTFT

【M1000RR】MとSのメーターは、基本的に共通となる6.5インチのフルカラーTFTで、デカさ感はピカイチ。良く見ると高回転化に合わせMはタコメーターの上限が上昇している。また、MはOBDと連動したGPSデータロガー機能もオプションで作動。

【CBR1000RR-R】RR‐Rは5インチTFT。タコメーターをアナログ風にするレイアウト切替はMやSでも可能だ。

クイックシフター:いずれも双方向を採用

【M1000RR[上]/RR-R[中]/S1000RR[下]】いずれも双方向のクイックシフターを採用。オートブリッピングのレーシーさではRR-Rが一番だ。Mは鍛造ステップ+カーボンヒールガードがレーシーで、バーもSより短めとなっている。3台ともリンクロッド位置の組み換えで簡単に逆シフトに変更可能だ。

主要諸元比較

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