2022年のモデルチェンジでエンジンと足回りが完全に新しくなった

1958年に発売された初代スーパーカブC100の血統を受け継ぐ現行スーパーカブは、現在50と110という二本立てのラインナップになっている。2022年モデルとして、スーパーカブ110がモデルチェンジし、オールニューのエンジン、フロントにディスクブレーキとABS、前後キャストホイール、前後チューブレスタイヤを獲得した。

本家スーパーカブの64年の歴史で、初めてディスクブレーキなどの現代的な足まわりに変更された歴史的転換点になるのだが、外観はそのままなのでぱっと見ではその変化に気付きにくい。カラーバリエーションも1色が終了になった以外は全て継続色なので、従来のスポークからキャストに変化したホイールを目印にすると分かりやすいだろう。

エンジンは、シリンダーが前方に突き出た横型エンジンを踏襲。空冷OHC2バルブの基本設計をそのままに、ボア×ストロークを50.0mm×55.6mm→47.0mm×63.1mmにロングストローク化して圧縮比&トルクアップを果たしている。さらに、排ガス規制に対応しつつ最高出力は8PS/7500rpmをキープしている。

今回、スーパーカブ110のみが大きな変更を受けたのは、令和2年排出ガス規制とブレーキ規制に対応するため。これは原付二種(51cc~)以上の規制で、原付一種(~50cc)は今すぐに対応する必要がないことから、スーパーカブ50が同じ変更を受けるかどうかは不明だ。

2022年型スーパーカブ110。ホンダの誇る世界一の販売数を誇る大衆車。今回のモデルチェンジで価格は28万500円から30万2500円と2万2000円アップしたが、内容を考慮すると割安と言えそうだ。

身長170cmのライディングポジション。全長やホイールベースに変更はなく、跨った印象は従来のカブと全く変わらず。前後17インチホイールの車格で乗車姿勢に窮屈さは感じない。

体重65kgの足着き性は両足ともかかとまでべったり接地する。タイヤの変更からかシート高は従来の735mm→738mmに3mm上昇したが体感できるほどの変化はなかった。

乗って分かる違い! エンジンフィーリングが滑らかで上質に

モデルチェンジの内容から、新型スーパーカブ110では足まわりの変化が際立つのではと事前に予想していた。しかし、いざ乗ってみると真っ先にエンジンフィーリングの違いに驚くことになった。まず、エンジン始動時と発進時の排気音がとても静かに感じられ、スルスル~と滑らかに加速していくのだ。

朝の通勤時など、目一杯加速する時もエンジンの振動が抑えられており、「上質になったなぁ」と感じられたが、カブらしいメカノイズも健在なのですぐに慣れてしまった。エンジンのパンチは従来型の方が強く感じられる一方、新型はエンジンフィーリングが心地よく、ツーリングにマッチしそうな雰囲気がある。

これはギア比の違いによるものかと思い調べてみると、1~4速の各ギアでカバーする速度域はほぼ同じ。最高出力および最大トルク発生回転数も新旧変わらずなので、ロングストローク化による変化と言えるもの。また、低フリクション技術も導入されているので、その恩恵も大きいだろう。

もちろん、新型スーパーカブ110は通勤通学バトルで十分な性能を発揮することも確認できた。体感ではディオ110と同等以上の性能で、ギアチェンジが苦でなければ十分に選択肢に入るだろう。125クラスのスクーターには敵わないが、WMTCモード67km/Lの好燃費を考慮すれば納得できる範囲だ。ちなみに、4速ピーク回転時での速度は計算上88.9km/hで、新型の方が1.3km/h速い設定だ。

エンジンはタイのスーパーカブ110で新開発されたものを日本仕様にも展開。カブらしくキックペダルを継続しゴムカバーを新採用。このエンジンはダックス125などにも使われており、今後のカスタムパーツ開発にも期待できる。

ディスクブレーキはやっぱりいい! 新作メーターもありがたい

そして、今回のハイライトと言える足まわりはどうか? しっかり体感できたのは、フロントブレーキの制動力とコントロール性が大幅に進化したこと。思ったように止まれるし、握った分だけ効く。ディスクブレーキ車に乗っている身からすると普通のフィーリングに。むしろこれまでドラムブレーキだったことに驚きがあり、従来型に希少価値を感じる。

予想外だったのは、この足まわりでスポーティになったかというとカブのままだったこと。ほぼ同じ足まわりを採用するスーパーカブC125は、スポーツバイクのような走りを見せたのに対し、まるでバネだけのようなサスペンションの110はいい意味で走りがチープ。人気のB級グルメの味をあえて残したかのようだ。

そして、利便性は大きく向上。新型スーパーカブ110のメーターには、ギアポジションなどを表示できる液晶窓が用意され、ニュートラル=Nと1~4速を表示してくれる。これだけの変更でギアチェンジで大きな安心感が得られる。さらにありがたいのが時計の表示で、いずれも特別な装備ではないがカブにとっては大きな進歩になる。

最後に、もしもの時に安全性が増していることもお伝えしたい。実際にテストをするのは難しいが、新型スーパーカブ110はフロントにABSを採用している。ディスクブレーキ化で制動力が向上していることも含めて事故や転倒回避の確率は大幅に向上したはずだ。また、チューブレスタイヤによりパンク時の対応も楽になり、ツーリングでの心配事が解消されるだろう。

これだけのメリットが得られてわずか2万2000円アップに抑えられているところに、ホンダの心意気を感じる。

1ポットキャリパーのフロントディスクブレーキを採用。ディスク中央にあるのはABS用の回転センサーだ。

前後ホイールは17インチのキャストホイールで、Y字スポークのデザインやリム幅、タイヤ銘柄はスーパーカブC125と同じ。

リアブレーキはドラムのままで、ABSも非装備。試乗しても性能に不足は感じられなかった。

タイヤには「TUBELESS」の刻印が確認できる。パンク修理キットを積載すれば、もしもの時に対処しやすい。

前方が絞り込まれた三角形のシングルシートを装備。座り心地はフカフカ。タンデムステップはあるが、後席は標準装備されていない。

シートを手前に起こすと燃料タンクにアクセスできる。キャップはキー付きなので安心。容量は4.1Lで従来型より200cc減となる。

リアキャリアは形状をそのままに黒塗装に変更された。荷掛けフックが四隅にある。

丸目1灯のLEDヘッドライトは従来型から踏襲。カブらしくて評判がいいスタイルだ。

テールまわりも従来型を踏襲。2020年型では法規制に対応し、反射鏡が別体になりテールランプの形状が変更された。

シンプルなハンドルまわり。右ウインカーの付け根に油圧式ディスクブレーキ用マスタシリンダーのオイルタンクが設置されている。

メーターには液晶窓が新たに用意され、燃料計やギヤポジション、時計、オド&トリップメーター、平均燃費を表示する。

2022年型スーパーカブ110主要諸元

・全長×全幅×全高:1860×705×1040mm
・ホイールベース:1205mm
・シート高:738mm
・車重:101kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 109cc
・最高出力:8.0PS/7500rpm
・最大トルク:0.9kgf-m/5500rpm
・燃料タンク容量:4.1L
・変速機:4段リターン(停止時はロータリー式)
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=70/90-17、R=80/90-17
・価格:30万2500円

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