新型アクシスZはコンビブレーキを採用し排ガス規制に対応

2021年9月末が期限だったブレーキ規制と2022年10月末が期限の令和2年排出ガス規制、1年あまりの期間で原付二種以上のバイクは大きな二つの規制対応に迫られていた。これを機に生産終了するモデルや逆に新規で登場するモデルもあり、新たな勢力図に変わりそうな気配だ。

ここでは、2022年3月に両規制に対応して発売された新型アクシスZの試乗記と、規制後の原二スクーターの勢力図も考察してみたい。51~125ccの原付二種は、排気量を拡大してパワーを補填する余地が少なく、さらに価格転嫁も難しいクラス。これをいかにクリアするかが重要になるのだ。

そして、なぜアクシスZにこだわるかというと、ヤマハのベストセラーモデルだからだ。二輪車新聞の推定によるとアクシスZは2020年の6700台から2021年は8800台へと販売を伸ばした。この数は2021年に小型二輪でトップを獲得したSR400以上で、間違いなくヤマハの国内ベストセラーモデルなのだ。

これが、2021年秋のブレーキ規制に対応するため出荷を停止。2022年3月にコンビブレーキを採用するとともに排ガス規制に対応して販売を再開した。セールス動向は2022年上半期で2800台(二輪車新聞推計値)と前年比58%に落としているが、3ヵ月の空白を考慮すれば堅調だ。

2022年型アクシスZは、コンビブレーキとスマートモータージェネレーター採用のエンジン搭載して3月に発売。価格は27万1700円で2万4200円アップした。

身長170cmのライディングポジションは、少し小ぶりな印象。車体寸法は2022年型でも全く変わっていない。

体重65kgで足着き性はほぼべた足に。2022年型でもリード125より10mmシートが高いのは変らない。

2万2000円アップで新型リード125との価格差が接近

以前アクシスZを取り上げた時は、シート下のスペースが同じくらい大容量(約37L)のホンダ リード125を比較対象とした。ライバルのリード125も2022年3月にブレーキ規制と排ガス規制に対応してモデルチェンジしたが、両車とも値上げを最低限に抑えるためにABSは採用せずコンビブレーキとした。

両車で明暗が分かれたのがエンジンで、元々PCX系の水冷エンジンで差をつけていたリード125は、4バルブヘッドを採用して更なる性能アップを図っている。それでいて8000円しか値上がりしなかったため、かつては約7万円だった価格差が約5万円まで接近。従来はクラス違いな印象だったが、微妙に接近してしまった。

この影響からか、新型アクシスZと同じく3月に発売された新型リード125のセールス動向は、2022年上半期で3900台(二輪車新聞推計値)と前年比130%と好調。走りにおいても、4バルブで高回転が元気な新型リード125に対して、新型アクシスZはスタートダッシュも最高速も差を付けられている。

新型アクシスZは最高出力を0.1PS向上させており、速度が乗ると従来型と同じような速さに感じるが加速力は少し抑えられている印象。だが、すぐに慣れてしまうレベルなので大きな違いではない。また、スマートモータージェネレーター採用のエンジンは、始動の際の「キュルキュル」音がなく、品質が向上している。

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新型アクシスZのエンジンは従来型の改良版となる空冷単気筒SOHC2バルブ124cc。最高出力発生回転数が500rpm高められており、その分加速力に影響していると思われる。

ホンダの新型リード125は、現行PCX(125)と同じ水冷単気筒4バルブエンジンを採用し、パワーで差をつけてきた。価格は32万4500円と一歩抜きんでているが、LEDヘッドライトなど装備に高級感がある。

新型アクシスZには兄弟車のジョグ125という選択肢も登場

新型アクシスZの強みだった価格面のアドバンテージが弱まったことをヤマハも意識してか、ジョグ125が11月に発売される。エンジンは新型アクシスZと同じで、ホイールベースが70mm短い分シート下スペースは制限されるものの車重は5kg軽量だ。何より価格が25万5200円と、日本メーカーの125ccスクーターで最安値を実現している。

アクシスZとジョグ125はともに台湾で販売されている兄弟車で、ヤマハとしては選択肢を増やすことで細かくニーズを捉えていく戦略と考えられる。アクシスZの特徴であるシート下のヘルメット2個分の容量が必要なければ、エンジン性能が同じジョグ125も選べるのだ。

今後は、新型アクシスZとジョグ125が一体となって原二市場にポジションを築いていくことになるが、スズキが2022年10月に新型アドレス125と新型アヴェニス125をそれぞれ27万3900円/28万4900円で発売したことで、勢力争いが激しくなりそうな気配だ。

スズキは、インドで生産されたモデルを世界戦略として先進国で販売するように原二スクーターのラインナップを再構築したところ。エンジンはアクシスZと同じ空冷単気筒だが最高出力はスズキの方が0.4PS(8.7PS/6750rpm)上回っている。それでいて価格は接近しているので、スズキの動向も目が離せない状況だ。

ヤマハのジョグ125はアクシスZと同じエンジンの兄弟車。シート下容量は21.3LでアクシスZよりも16L以上少ないが価格は25万5200円で1万6500円安価だ。フロントはドラムブレーキになる。

スズキの新型アドレス125は10月18日発売。8.7PSのエンジンやフロント12インチホイールなど、ヤマハの2台よりも少し格上だがインド製の強みで価格は27万3900円と横並びにしてきている。

スズキの新型アヴェニス125は10月21日発売。クラシカルな外観のアドレスに対してスポーティさを強調したスタイルとしている。LEDヘッドライトなどを装備するが、価格は28万4900円に留めている。

新型アクシスZのフロントにはディスクブレーキを継続採用。左レバーを握った際にフロントとリアが作動するようになっている。

アクシスZの特徴である37.5Lのシート下スペースは新型でも変わらず。小ぶりなヘルメットなら2個収容できる他、B4サイズのビジネスバッグも入れることができる。

新型アクシスZは、メーターまわりの装備なども変更なし。給油口が前方にあり給油が楽ちん。コンビニフックやシャッター付きキーシリンダーを備えるが電源はない。

2022年型アクシスZ主要諸元

・全長×全幅×全高:1790×685×1145mm
・ホイールベース:1275mm
・シート高:770mm
・車重:100kg
・エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ 124cc
・最高出力:8.3PS/7000rpm
・最大トルク:1.00kgf-m/5000rpm
・燃料タンク容量:5.5L
・変速機:Vベルト式無段変速/オートマチック
・ブレーキ:F=ディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=100/90-10、R=100/90-10
・価格:27万1700円

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