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セロー250の不在はCRF250Lが埋める!
ホンダCRF250Lは、2020年にヤマハのセロー250が生産終了したことで、日本メーカー唯一の250ccフルスケールオフロードモデルとなった。これが、2020年末のフルモデルチェンジでABS装着義務化に対応。
2012年にデビューしたCRF250Lは、ホンダでは珍しいオンロードモデルがベースのオフロードモデルで、エンジンは2011年にデビューしたCBR250Rの水冷単気筒を採用。CBRのエンジンはそのネーミングを体現するために、単気筒らしさをなるべく出さないよう高回転までスムーズに回るように開発されたものだった。
一方、オフロードバイクは低速トルクで路面を掴んでグリップさせる必要があるので、初代CRFは高回転型の特性を吸排気などのチューニングで変更。新型CRFはこれをさらに進化させて、専用のカムプロファイルや新設計の6速ミッションなどエンジン本体にも変更を加えてオフロード向きに改良している。
これらの変更により、オンロード8割というコンセプトで開発されていた従来のCRFを「オンロード5割/オフロード5割」(開発者談)という、デュアルパーパスモデルのあるべき姿に近づけている。セローがいなくても入れ替わりでCRFが日本の250ccオフロードを支える存在になっていたのだ。
新しいエンジンは、よりオフロードに向いた出力特性になっている
CRF250Lの2021年モデルに乗っての第一印象は、エンジンの粘り強さがあること。これはオフロードバイクにマッチしたもので、ダートでの走りやすさにつながっている。また、オフロード用に改良が加えられたエンジンのおかげで、新型CRF250Lのフィーリングには優しさも感じられるようになった。
これは、セロー250のようなトコトコとした走りを楽しむフィーリングに似ており、オフロードでは低回転域でトコトコと、そしてオンロードでは4000~5000rpm付近の中間域でゴムひもに引っ張られるような間を置いたタメのある加速が気持ちいい。
もちろん、本来はCBR250R用に開発されたDOHC4バルブエンジンだけあって、高回転域はセロー250以上にパワフル。高速道路での巡航速度は明らかにセロー250よりも速いので、ロングツーリングするにはCRF250Lの方が向いているだろう。さらに言えば、よりロングランに適したCRF250ラリーに対応するためのエンジンパワーでもあるのだ。
そして、新型CRF250Lになって印象が変わったのが排気音で、歯切れのよいシングルエンジンらしいサウンドになっている。CRFというレーサーの血統とそれをイメージ付けるスタイルによくマッチしており、セロー250とは方向性が全く異なっている。
ABSを追加しても4kgの軽量化でオフロード走行に対応
新型CRF250Lの車体はABSを追加した上で4kg軽量化。また、ヘッドライトはLEDで小型になりハンドルのボトムブリッジを鉄からアルミ製として重心から離れた位置を軽量化し、重さを感じさせにくくなっている。フロントの倒立サスペンションは柔らかくてハンドルからの手ごたえはソフトな印象だ。
STDの足着き性はセロー250と同じレベルで、シートの低さがストレスを減らすことを実感。乗り降りしやすいのでバイクを止めることが苦にならない。あちこち出かけたくなるのはSTDだと感じる。そしてフラットダートレベルの走行では、CRF250L〈s〉よりも短いサスストロークが気になるようなことはなかった。
新型CRF250Lの魅力は、従来よりもオフロードの守備範囲を広げたことでセロー250がカバーしていた部分をほぼ網羅していることだろう。さらに、オンロードでの走行性能はセローよりCRF250Lが上なので、高速ロングツーリングなどのより幅広い用途に対応できるのも有利だ。
ただし、セロー250が得意とするマウンテンフィールドでは、セローより7kg重いCRFでは太刀打ちできないと思われる。これこそセロー250がコアな人気を獲得している理由であり、ライバルを寄せ付けない部分。そこを除いた使い方であれば、新型CRF250Lはいい相棒になってくれるはずだ。
ホンダ 2021年型CRF250L/〈s〉主要諸元
・全長×全幅×全高:2210/2230×820×1160/1200mm
・ホイールベース:1440/1455mm
・シート高:830/880mm
・車重:140kg
・エンジン:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ249cc
・最高出力:24PS/9000rpm
・最大トルク:2.3㎏f・m/6500rpm
・燃料タンク容量:7.8L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=80/100-21、R=120/80-18
・価格:59万9500円