2020年のベストセラーを紐解く当コーナー。401cc以上のクラスで販売1位に輝いたカワサキ「Z900RS/CAFE」の魅力とヒストリーを解説したい。

デビュー以来3年連続で1位をゲット

業界紙「二輪車新聞」1月1日号では、独自集計によって前年のバイク販売台数を特集している。これによると、2020年に401cc以上の大型バイクで最も売れたのはZ900RS/CAFEで、4060台。2位のハーレー・スポーツスター1200シリーズ(カスタム、ロードスター、フォーティエイト)の2353台に対し、2倍近い差をつけている。
この人気は今に始まったことではない。Z900RSは2017年12月にデビューし、2018年に4646台、2019年には4147台といずれもトップセールスを記録。2020年で3年連続のベストセラーを記録したが、登場からほぼ台数が落ちていない。人気が衰えしらずなのだ。z900rs イメージ

購入しているメイン層は50代前後

購入者層は、50代前後がメインだが、年齢は幅広そう。
自工会が2021年、カワサキモータースジャパン代表取締役社長の寺西猛氏に行ったインタビューによると、「50代前後のリターンライダーに大ブレイク」しており、「その人たちの子供世代もこのモデルに関心を持って」いるという。
また、2018年の自工会ニュースによると「2台目の愛車として購入するユーザー」のほか、「Z900RSを目当てにやってくる新しいお客様が増えています。昔を懐かしんで『また乗りたい』という方たちの心に響いているようです」(広報担当)とのことだ。

人気の理由は……やっぱりコレでしょう

この人気の理由は、やはり第一に「デザイン」だろう。
丸1眼ヘッドライトに2眼の砲弾メーター、ティアドロップタンク、主張の強いエンジン、サイドカバーetc……。万人が頷いてくれると思うが、往年の900スーパー4(Z1)を思わせるフォルムは、皆がイメージする普遍的な「バイクらしさ」が漂う。過去のZを知る人はもちろん、若者をも惹き付けるのだ。
LEDヘッドライトなどイマ時のスタイルも取り入れながら、「カワサキZ」らしさが満点。よく見ると横幅が広いタンクやホイール、サスなどZ1と似ていない部分も多々あるものの、同じく名車リバイバルのスズキ・カタナが現代風にアレンジされているのに対し、Z900RSは直球と言えるのだ。ちなみにZ900RSのデザイナーはZ1オーナーで、ベース車であるストリートファイターのZ900という素材を、上手くZに調理することに成功していると思う。

z1とz900rs

1970年代のZ1/Z2(写真左が初代Z1)はもちろん、2006年に絶版となったゼファー1100の中古相場が高騰しているように、Zらしいこのフォルムを望むライダーは実に多い。――ノスタルジック、均整の取れた流麗なフォルム、過去の伝説、ワルっぽさetc……。

 

18z900

ベース車はZ900。全く異なるストリートファイターから、Z900RSが生まれたのだからスゴイ!

外観に反し、走りはとても現代的

もう一つの魅力は「走り」にあると思う。
往年のZのような空冷直4、ではなく、Z900RSは水冷エンジンを採用するが、ズオォォォという低中速域のサウンドや振動が実にレトロっぽい。これはカワサキがこだわったポイントの一つで、ベース車のZ900とは異なる専用のエアクリーナーボックスと吸気ファンネルを採用したことで実現。吸気ファンネルは直径や長さ、曲がり具合にまでこだわり、しっかりテイストも造り上げた。
一方でエンジンは軽快に吹け上がり、レスポンスもスムーズ。そして、ハンドリングはニュートラルで扱いやすい。外観のイメージと違って基本的に軽快だけど、安定感も両立しており、ライダーの思い通りのラインを描いてくれる。特にフロント周りはφ41mm倒立フォーク+ラジアルマウントキャリパーの剛性感が高く、最新のリンク式モノショックと相まって、なかなかスポーティだ。
またトラコン、アシスト&スリッパークラッチといった現代的な装備も頼もしい。z900rs走り

<ヒストリー&カラバリ>全19カラーを全て掲載!

では最後に、デビューモデルから現在までの、カラーバリエーションと変更点について解説したい。

2018年型Z900RS
'17年10~11月に開催された東京モーターショーでの初公開を経て、年末に登場。2色展開で、茶×橙、ライン入りの黒が用意された。予約が殺到し、特に初代Z1を彷彿とさせるテッパン人気の“火の玉カラー”=茶×橙は入手困難だった。

18Z900RS

キャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ ●税込価格:132万8400円(本体価格123万円)※当時 ●発売日:2017年12月1日

18Z900RS ブラック

メタリックスパークブラック ●税込価格:129万6000円(本体価格120万円)※当時 ●発売日:同上

主要諸元■全長 2100 全幅865 全高1150 シート高800 軸距1470(各mm) 車重215kg(装備)■水冷4スト並列4気筒948cc 最高出力111ps/8500rpm 最大トルク10.0kg-m/6500rpm 燃料タンク容量17L■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17

2018年型Z900RS CAFE
STDの発売から4ヶ月後に、レトロイメージのビキニカウルを装着したカフェも設定。アップハンドルのSTDに対し、若干絞りのあるローハンドルとシングル風シートを備え、ライポジがややスポーティだ。シート高も20mm高い820mmとなる。なおグレーのみ、ビキニカウルにラインを採用しない。18Z900RS cafe

ヴィンテージライムグリーン ●税込価格:135万円(本体価格125万円)※当時 ●発売日:2018年3月1日

18z900rs cafe グレー

パールストームグレー ●価格・発売日:同上

主要諸元■全長 2100 全幅845 全高1190 シート高820 軸距1470(各mm) 車重217kg(装備)■水冷4スト並列4気筒948cc 最高出力111ps/8500rpm 最大トルク10.0kg-m/6500rpm 燃料タンク容量17L■タイヤF=120/70ZR17 R=180/55ZR17

2019年型Z900RS
あまりの人気ゆえか、初代デビューから8ヶ月後に早くも発売。'18年型からの変更はなく、そのまま'19年型として販売されることになった。価格も同一。19z900rs オレンジキャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジ(継続) ●税込価格:132万8400円(本体価格123万円)※当時 ●発売日:2018年7月1日

19Z900RSブラック

メタリックスパークブラック(継続) ●価格・発売日:同上

 

2019年型Z900RS CAFE
青とグレーの新色が登場し、ライムは継続。2→3色にカラバリが増えた。

19z900rsブルー

ストームクラウドブルー(新色) ●税込価格:135万円(本体価格125万円)※当時 ●発売日:2018年8月1日

19z900rs cafeグレー

メタリックグラファイトグレー(新色) ●価格・発売日:同上

2019Z900RS CAFE

ヴィンテージライムグリーン(継続) ●価格:同上 発売日:2018年10月15日

 


2020年型Z900RS

車体色を総入れ替えし、緑と黒が登場。'73年の初代Z1は火の玉カラーだったが、翌'74年型ではキャンディトーングリーン(通称タイガーカラー)を採用した。これと同様に、Z900RSも次の車体色をタイガーカラーイメージとしている。実にニクい演出だ(正式な色名も'74 Z1/Z2と同じ)。
また、ブラックは、従来のラインを取り除いた単色。'70年代風のワルっぽい雰囲気満点だ。2色とも本体価格は3万円増となった。20z900rsグリーン

キャンディトーングリーン(新色) ●税込価格:132万8400円(本体価格123万円)※当時 ●発売日:2019年8月1日20z900rs ブラック

メタリックディアブロブラック(新色) ●価格・発売日:同上

2020年型Z900RS CAFE
CAFEも全て新色に。ライムは、黒をあしらい、金の子持ちラインも施した。さらにシックなブルーも登場している。本体価格は1万円アップ。20Z900RS CAFE グリーン

ヴィンテージライムグリーン×エボニー(新色) ●税込価格:136万800円(本体価格:126万円)※当時 ●発売日:2019年8月1日20Z900RS CAFE グレー

ファントムブルー(新色) ●価格・発売日:同上

2021年型Z900RS
公式なアナウンスはないが、ラジエターを大型化。ラジエターコアガードをカスタムする場合、対応品を選びたい。車体色は、単色ブラックに代わり、シルバーのラインが入った黒が登場。'05モデルのゼファーシリーズに展開された黒×銀と同様の配色で、実にクールだ。タイガーカラーの緑は継続となる。本体価格は変わらないが、消費税が10%になり、税込価格が上昇した。21Z900RS ブラック

エボニー(新色) ●税込価格:135万3000円(本体価格123万円)※当時 ●発売日:2020年11月1日

21z900rs グリーン

キャンディトーングリーン(継続) ●価格・発売日:同上

 


2021年型Z900RS CAFE

'21年モデルから車体カラーが新色の1カラー設定に。黒地に非常に手の込んだブラウンのグラデーションが描かれ、カスタムマシンの趣が漂う。

21Z900RS CAFE

エボニー(新色) ●税込価格:138万6000円(本体価格126万円)※当時 ●発売日:2020年12月1日

 

2022年型Z900RS
車体色を総入れ替えし、新色のキャンディトーンブルー、メタリックディアブロブラックを投入した。ブルーは、またしてもZ1オマージュで、'75年型Z1Bで採用されたキャンディトーンスカイブルー風。通称「玉虫ブルー」と呼ばれる色だ。ブラックも同様のストライプで、'04ゼファーシリーズを思わせる。価格は3万円アップした。

2021Z900RS

キャンディトーンブルー(新規) ●税込価格:138万6000円(本体価格:126万円)※当時 ●発売日:2021年9月1日

2021Z\900RS黒

メタリックディアブロブラック(新規) ●価格・発売日:同上


さらに'22年型では、足まわりを強化した「SE」仕様がデビューする。Z900RS初の上級グレードで、リヤにオーリンズのS46を装着し、合わせてフロントのセッティングを変更。アウターチューブやホイールもゴールドに統一している。フロントは、ブレンボ製M4.32ラジアルマウントモノブロックキャリパーとφ300mmブレンボ製ディスクを奢り、ステンメッシュホースも与えた。
主要諸元は、シート高がSTD比で+10mmの810mm、最低地上高も+10mmの140mm。本体価格はSTDから20万円増となる。
車体色は、欧州仕様の初代Z1を思わせるイエローボール風のメタリックディアブロブラックを採用した。
国内仕様は'21年11月12日発売予定だったが、新型コロナの感染拡大による部品調達の遅れなどの理由で発売が延期。'22年春頃の発売を予定している。

Z900RS SE

Z900RS SE(新グレード)メタリックディアブロブラック(新規) ●税込価格:160万6000円(本体価格:146万円)※当時 ●発売日:2022年春頃

 

2022年型Z900RS CAFE
'22モデルも1色設定。シンプルな銀ラインがシブいメタリックディアブロブラックを新たに採用した。Z900RSシリーズ初のツートンシートも目玉だ。STDと同様、価格は+3万円となった。

2022CAFE

メタリックディアブロブラック(新規) ●税込価格:141万9000円(本体価格:129万円)※当時 ●発売日:2021年9月1日

 

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