ホンダは、471ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載した新型スクランブラー「CL500」を5月25日に発売した。ヤングマシン本誌(7/24発売)では丸山浩さんが試乗しているが、同じタイミングで試乗できた編集部員が試乗インプレッションをお届けしたい。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史、ホンダモーターサイクルジャパン ●外部リンク:ホンダ
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エンジンの質量と出力がCL250との違いを生む
レブルの兄弟車だなぁ……。そんな見た目の印象はCL250と変わらないはずなのだが、燃料タンクの鮮やかなブルーとエンジンのミッチリ感が新鮮だ。
エンジンマウント部分を除いてほぼ同じフレームのCL250とCL500は、コンパクトな単気筒エンジンの弟分に対し、並列2気筒エンジンを搭載する兄貴分という違いがある。言ってしまえばこのエンジンの違いが全てなわけだが、これがけっこう興味深い結果を生んでいる。
以前の記事でインプレを掲載したCL250は、自由さと解放感が際立ち、アメリカントラッカー的な“陽”のキャラクターが強調されているように感じた。視点が高く、自由度の高いライディングポジションによって見晴らしがよく、CL500に比べれば軽量な車体は、ベースとなっているレブル250からさらに自由さやリラックスしたフィーリングがあった。
CL250は何にでも使えるスクランブラーであり、それゆえに突出したクセがなく、走りというものにフォーカスして見た場合にはハッキリとしたキャラクターはない。でも、それでいいのだ。なんたって、ライダーの世界を広げてくれる道具として、これぐらい幅広く受け入れてくれるバイクはなかなかないからだ。
エンジンまわりに空いたスペースが多いCL250に対し、CL500はミッチリした感じ。
じゃあCL500はどうなのかというと、エンジンの質量が増して重量物がやや高い所にある感じと、180度クランクのツインエンジンがギュルギュルと吹け上がっていく感じが、少しだけマニアックな世界観を生んでいた。大きなくくりで見ればだいたい一緒で、250も500も自由な乗り物ではあるのだけれど、やっぱり500には500の存在感がある。
まあ、日本の免許制度では中途半端と捉えられがちな500クラスのバイクにわざわざ興味を持つような方なら、ある程度マニアックな素養をお持ちだろうと信じ、少しそっち寄りのインプレをしてみたい。
開放感のあるライディングポジションは変わらない
思いのほか元気な排気サウンドやフラットなシート、ややワイドなハンドルバーなどの印象はほぼ同じ。180度クランクならではの鼓動感はあるが、音量や音質はCL250とさほど変わらない印象だ。またがって左右に振ったときに車重の増加を感じるが、その他はほぼ同じと思っていいだろう。
CL250と共通して気になるのは、シートに着座した状態から自然に足をおろすと、スネまたはふくらはぎにステップが当たる点だ。小柄な方だと余計に気になる可能性もあるので、購入検討の際には跨りチェックを忘れずに。
筆者は参考にしていただきにくいので丸山浩さん(身長168cm)のライディングポジションを掲載。座ったところから自然な位置にステップがあり、ハンドルはやや広め。足を下ろすとふくらはぎにステップが当たりがち。
右手の操作によってエンジンで走らせる気持ちよさ
バイクはエンジンを懐に抱えて走るような乗り物だ。ライダーとエンジンの距離が近いというだけではなく、クルマに比べれば軽く小さな車体ゆえ相対的にエンジンの質量や出力の及ぼす影響が大きい。だから、エンジンの性格とそれを扱うスロットル操作の仕方によって、バイクの曲がり方やタイヤのグリップなども変わる。エンジンがリアタイヤを駆動するチカラが、ちょっとしたバランスを取るような場面からスポーティな走りまで、大きな影響を与えるのだ。
ちょっと小難しい言い方になってしまったが、ようはどんなエンジンを搭載しているかでその個性が大きく左右される乗り物がバイクなんである。
そして、排気量が大きくなればそのぶん、エンジンの影響力はより大きくなる。
CL500は、スロットル操作でエンジンをコントロールしていく実感がCL250よりも強い。単純に排気量が倍近くあるのでトルクが大きいというのがまずひとつ。加減速の自由度が増し、街中でも交通の流れをリードしたい際などに瞬発力がある。
そしてもうひとつ、思ったよりも重要かもしれないのがエンジン重量だ。前述のようにCL250よりも高い所にエンジンの重心があるようで、スロットルを戻してエンジンブレーキを発生させるだけでスッとフロントに荷重が載る。
CL250ではこのへんがやや曖昧であり、交差点やカーブでスロットル開閉をしてもハッキリとした反応はあまりないのだが、CL500は座る位置や身体のアクションをそれほど工夫しなくても、スロットル操作ひとつでバイクに思ったような挙動をさせやすい。
バイクをある程度コントロール下に置いておきたいタイプのライダーにとっては、CL500のほうが一体感が得やすいかもしれない。とはいえ、CL250でも不安になるようなことは全然ないのだが。
フロント19インチホイールによるゆったりとしたステア感が心地好いのはCL250と同様だが、低くやや後ろめにある着座位置に座ったままでも、スロットルを戻すだけでフロントホイールの向きがクリアに伝わってくるし、スロットルを開ければリアタイヤがググッと路面を蹴るのが感じられる。こうしたコントロール感は、信号待ち前後の微速前進や交差点の右左折、ワインディングロードのスポーティな走りに至るまで変わらない。
また、ゆっくりトコトコ走りも受け入れるものの、やはりCL250よりは得意とする速度域はやや高めになる。ひたすら気楽で気遣いのいらないCL250に対し、CL500は排気量なりというか、なにも考えずにスロットルをワイドオープンはしないほうがいいだろう。
ちなみに、高速道路で試乗した感じだと、6速・100km/hでは振動が少なく巡航がしやすかった。ギュルギュルとした低回転域から次第に収束してスムーズな回転感覚になり、高回転域になると躍動感が出てくるものの、振動が強まるという感じはあまりなかった。
オプションのフラットシートがベストバランスだったCL250に対し、ノーマルのままでも心地よい
CL250は、エンジンのトルクと重量が小さいゆえにスロットル操作でフロント荷重を生みにくく、コーナリングで車体が懐の中に収まりにくいような印象があったが、純正アクセサリーのフラットシートに交換することでバランスのいい着座位置を得ることができた。ゆえにシート高+30mmの差を受け入れてフラットシートに交換するのがおすすめと思われたわけだ。
CL500の場合は、前述のようにスロットル操作でコントロールしやすいぶん、ノーマルシートでも全くといっていいほど気にならなかった。
自由度と汎用性の高いベーシックなスクランブラー、という立ち位置はCL250もCL500も同様だが、少しだけマニアックな側面をプラスし、大型二輪免許も必要なCL500は、ベテランが普段の足として購入するのもアリだろう。乗り味や姿カタチはCL250と似通っていても、その立ち位置はけっこう異なるといえそうだ。
HONDA CL500[2023 model]
HONDA CL500[2023 model]
通称名 CL250
車名・型式 ホンダ・8BL-PC68
全長×全幅×全高 2175×830×1135mm
軸距 1485mm
最低地上高 155mm
シート高 790mm
キャスター/トレール 27°00′/108mm
装備重量 192kg
エンジン型式 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ
総排気量 471cc
内径×行程 67.0×66.8mm
圧縮比 10.7:1
最高出力 46ps/8500rpm
最大トルク 4.4kgf・m/6250rpm
始動方式 セルフ式
変速機 常時噛合式6段リターン
燃料タンク容量 12L
WMTCモード燃費 27.9km/L(クラス3-2、1名乗車時)
タイヤサイズ前 110/80R19
タイヤサイズ後 150/70R17
ブレーキ前 油圧式ディスク(ABS)
ブレーキ後 油圧式ディスク(ABS)
乗車定員 2名
価格 86万3500円
発売日 2023年5月25日
CL500のディテール
HONDA CL500[2023 model]
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