ネオスポーツカフェをキーワードに、’18年に登場したホンダ新世代CBシリーズのフラッグシップ「CB1000R」。マイナーチェンジが施された’21モデルは、より流麗なイメージに進化するとともに、市販のインカムとスマホを連携させて各種操作を行うボイスコントロール機能も追加。これで価格据え置きは驚きだ。

●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:冨樫秀明 ●外部リンク:ホンダ

マスの集中を感じる挙動。エンジンは音まで刺激的

CB900ホーネットの後継として’08年にデビューし、欧州を中心に人気を博した初代CB1000R。’18年のフルモデルチェンジの際にあらためてコンセプトが見直され、公道を最大限に楽しめるスポーツバイクとして再構築。日本を含め、グローバル展開を図られたのが新生CB1000Rだ。

そんな新世代CBシリーズのフラッグシップが、早くもマイナーチェンジを実施した。ミニマムな要素で構成されたスタイリングは、燃料タンク以外の外装パーツをほぼ一新。初代CBR1000RRに端を発する998cc水冷直4は、欧州仕様はユーロ5に適合するために手が加えられたものの、日本仕様はFIのリセッティングのみで最高出力145psを維持する。車体については前後ホイールとシートレールのデザインが一新されたが、それ以外は基本的に先代と共通だ。こう書くとスタイリング以外あまり変わっていないと思われそうだが、大きなトピックはスマホとインカムを連携させたボイスコントロール機能の追加だろう。

【’21 HONDA CB1000R】■全長2120 全幅790 全高1090 軸距1455 シート高830(各mm) 車重213kg(装備) ■水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 998cc145ps/10500rpm 10.6kgm/8250rpm 変速機6段 燃料タンク容量16L ■タイヤサイズF=120/70ZR17 R=190/55ZR17 ●色:黒 赤 銀 ●価格:167万900円

凝縮感のある台形プロポーションをキープしつつ、ヘッドライト/ラジエターシュラウド/エアクリーナーカバー/シートレール/リヤフェンダーなどのデザインを一新。便利なHSVCSを追加しながらも価格は据え置きとなっている。

まずはエンジンから。ライディングモードはスポーツ/スタンダード/レイン/ユーザーの3+1種類で、モードごとにエンジン出力/トラクションコントロール/エンジンブレーキの値が連動して切り替わるのは先代と変わらない。エンジンを始動するとまず驚くのは排気音のボリュームで、閑静な住宅街では気が引けるほど大きめだ。ここでまず好みが分かれるかもしれない。発進加速はどのモードでも力強く、レインですらスロットルを大きく開けるとフロントの接地感が薄れるほど。サウンドも含めて豪快かつ刺激的でありながら、体に伝わる微振動は非常に少なく、かつクラッチレバーの操作が軽い、クイックシフターの作動が滑らかなど、ユーザーフレンドリーな部分も。ただ、どうしても気になったのが、スロットル全閉状態から開け始めたときのドン突きに近い症状だ。力強さを感じさせるための演出かもしれないが、レインモードですら少なからず出てしまうので、コーナー立ち上がりで深いバンク角から開けるのを躊躇することが何度かあった。

ハンドリングは、倒し込みや切り返しで213kgという重さが伝わってくるものの、スロットルのオンオフやブレーキング時のピッチングにあまり慣性が働かない様子は、マスの集中を感じさせるものだ。路面が荒れているワインディングでは車体が跳ねるような動きを見せるものの、フレームのしなやかさがそれをカバー。そして、フロントブレーキをしっかりと残して進入できるようなコーナーでは、目の覚めるような旋回力を発揮する。付け加えると、このCB1000Rをより楽しめるように”サスペンションセッティングガイド”なる資料も公開されており、走る場所に応じてサスセッティングに挑戦してみてはいかがだろう。

最後に注目のボイスコントロール機能・HSVCSについて。これは市販のインカムとスマホを連携し、メーターにナビなどのさまざな機能を表示したり、音声やハンドルスイッチで操作する機能だ。現状、アプリはアンドロイド専用で、実際に使ってみると便利なことこの上ない。このCB1000Rを選ぶライダーは荷物を最小限に抑えたいはずで、そういう意味では実に親和性の高い機能と言えるだろう。

【ライディングポジション】モノバックボーンフレームの採用により、直4でありながらニーグリップエリアはスリム。シート高は830mmと高めだが、足着き性は良好だ。[身長175cm/体重64kg]

【最高出力145psを継続】初代CBR1000RR(SC57)に端を発する998cc水冷並列4気筒。日本仕様はFIのリセッティングのみが実施され、最高出力や最大トルクは不変だが、公称燃費はわずかにアップしている。側面の切削加工部は腐食防止のため定期的に清掃し、ワックスを塗布するよう推奨される。

【スリムさの秘密はフレームにあり】高張力鋼によるモノバックボーンフレームは先代から継続。アルミダイキャスト製のシートレールはよりスリムなデザインに。片持ち式スイングアームやピボットプレートなどは従来モデルから変更なし。

【スーパースポーツ顔負けの豪華な足まわり】写真上が新型で、下が旧型。前後ホイールは多スポークの新デザインに。ショーワ製φ43mmSFF-BP倒立フォークはフルアジャスタブル。リアサスペンションはリンクレスで、分離加圧式のショックはプリロードと伸び側減衰力が調整可能。サスペンション設定ガイドも用意。

【LEDヘッドライト】写真上が新型で、下が旧型。マスの集中化を狙ってフォーク間に埋め込むように配置されたヘッドライトは、ティアドロップシェイプのライトガイドを配したスラント形状に。光源にはLEDを継続する。

【ラジエターシュラウド】写真上が新型で、下が旧型。ライダーの膝まわりにフレッシュエアを導くように設計されたアルミ薄板プレス成型のラジエターシュラウドは、よりコンパクトなデザインに。ヘアライン仕上げは継続される。

【スマホとの連携強化。音声で操作が可能に】表示エリアを最大化した新デザインの5インチTFT液晶メーターに。注目はスマホとの連携を強化したHSVCS(ホンダスマートフォンボイスコントロールシステム)で、ブルートゥース接続したインカムによって音声操作が可能に。アプリはアンドロイド専用。

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