レッドバロンがメディア向けに開催した試乗会に、コンディション良好な数々の絶版車が登場! メカの解説と当時の思い出を交えつつ、現代目線からのインプレをお届けしよう。第3弾はホンダのCB750! スタンダードモデルとして'90~'00年代に支持された1台は、実に魅力的だった。
取材協力:ヤングマシン

教習車に始まり、何度も乗ったスタンダードナナハンに改めて対面

'90年代後半、教習所で大型二輪教習が始まり、教習車としてお世話になったホンダ CB750(RC42)。デビューしたのは'92年。ゼファーに始まるネイキッドブームが吹き荒れていた当時、空冷直4とCBらしいフォルムをまとって登場した。

以降、'07年まで15年にわたって基本的な仕様を変えることなくロングセラーを続けた。個人的には、教習車として乗った後も何度か試乗する機会があり(ツインリンクもてぎのフルコースを走ったことも)、そのたびに「乗りやすいバイクだなぁ」という印象はあった。久々に乗ってみて、どう感じるのか興味津々で試乗してみたのだ。

↑試乗車は'05年型。走行距離は7万1500kmながら、コンディションは上々だった。'04年型から、'01以降省略されていたリザーバータンク付きリアショックが復活し、マルチリフレクターヘッドライトを導入。CB750FCなどを彷彿とさせるツートンの明るいカラーも'04からの採用だ。

↑1983年にデビューしたCBX750Fを源流とする空冷直列4気筒のRC17E型エンジン。空冷ならではの冷却フィンを備え、エンジンオイルの冷却効果を高めるオイルクーラーを標準装備する。'04年型からキャブレターにスロットルポジションセンサーを採用。

↑オーソドックスな砲弾型2眼アナログメーター。メッキリム仕上げのメーターケースと距離計などを示す液晶パネルは'04モデルからの採用だ。

↑6本スポークの17インチのアルミキャストホイールを履く。キャリパーはニッシン製で、試乗車はブレーキホースが変更されている。

↑放熱効果に優れたリザーバータンク付きのツインショックに、スチール製の角断面スイングアームの組み合わせ。メッキタイプのメガホンマフラーは左右2本出しだ。

CB400SFを思わせる抜群の扱いやすさ、思わずコーナーを攻めたくなる

747cc4スト空冷4気筒DOHC4バルブエンジンは、ナイトホーク750がベース。最高出力は75ps/8500rpm、最大トルクは6.5kg-m/7500rpmを発生する。フレームはスチールダブルクレードルで車重は235kg。シート高は795mm。

このようにスペックだけ並べてみても、取り立てて非凡なものはないのだが……ひとたび走り出せば「よく出来たバイクだ!」と思わず感心してしまった。

まず、またがってみると意外と車体が太く、ボリュームを感じる。ただし車格はそこまで大型ではなく、足着き性も良好。ライディングポジションも自然だ。

↑腕を伸ばした所にグリップがあり、アップライトなライポジ。ステップ位置は少しだけ後方にあり、クルージングもスポーティな走りもこなせる。シートのクッションが分厚く、座り心地も良好。

↑車体にボリュームがあり、股下が広がる。足を降ろすと真下にステップがあるが、身長177cm&体重61kgのライダーだと両足のカカトまでベッタリ接地する。

 

まずスロットルのレスポンスがいい。いかにもキャブレターらしく、乗り手の意思に素直に反応してくれる。インジェクションとは一味違い、ゆっくり開けた時はジュワーッと、大きく開けた時はギュンッと、早すぎず遅すぎず、感性に寄り添ってくれる。

出力特性は基本的にフラットでストレスなく回転が上昇。6000rpm程度からさらに伸び上がり、これ以上の領域はしっかり刺激的だ。最高出力75psなので、高速域での圧倒的なパワーはないものの、公道はこれで十分と思わせてくれる。

そしてコーナリングが楽しい。サスはストロークが長めかつソフトで、コーナー手前のブレーキングでしっかりフロントが沈み、荷重を前輪に残したままバンクさせると、驚くほど曲がる。ブレーキもコントロールしやすい特性だ。

↑素直なエンジン特性、しなやかなフレーム、よく動くサス、適切に効くブレーキが相まって、コーナリングが楽しい!


コーナリング中の車体も安定しており、前述のエンジン特性と相まって、不安なく倒しこめる。気が付けばバンク角が深くなり、大胆に攻めてしまうほどの安心感だ。重心が低いせいか、235kgという車重を感じさせないほど切り返しも得意。この自由自在感は「CB400SFの大型版」といった雰囲気だ。

ただ「空冷4発」という単語から連想される味わいはやや希薄。振動や鼓動感があまりないためだが、排気音が低音で心地いい。

↑このアングルだと車体の太さがわかるが、車格や車重を感じさせない従順さだ。

乗り手の技量もステージも問わない、現代でこそ光る1台

CB400SFのようにクセがなく、ワクワク感まであるので、ただ乗っているだけでも楽しくなる。今の時代に乗っても、この完成度は素晴らしい。それどころか、ライダーのスキルを問わず、気軽な近所の買物をはじめ、ツーリング、ワインディングまで楽しめる……こんなビッグバイクは現代でそうそうないと思う。

しかも乗り味とライポジが疲れにくい。50代の自分にとって、ちょうどいいビッグバイクだ。加えて「ナナハン」という響きもノスタルジックでいい(笑)。

同じCBシリーズには既に生産終了したCB1300SFがあるが、1300は非常にトルクフルで、車重も感じさせる。CB750はもっとちょうどよく、バランスに優れているように思う。

あるホンダの関係者がCB750を評して「ホンダの良心」と語っていたが、まさに的を射た表現。ちなみに'05年当時は76万6500円! と驚異的な価格だけど、今は中古車人気が上がっている。それでも所有したい欲にかられるほど魅力的な1台だ。

CB750 主要諸元

・全長×全幅×全高:2155×780×1100mm
・ホイールベース:1495mm
・シート高:795mm
・車両重量:235kg
・エンジン:4ストローク空冷直列4気筒DOHC4バルブ747cc
・最高出力:75ps/8500rpm
・最大トルク:6.5kgm/7500rpm
・変速機:5段リターン
・燃料タンク容量:20L
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=150/70ZR17
※諸元は'04年型

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